第六話:VSメタル‐ワシの息子じゃ
マ:「返してよ~!返してよ~!住民票返してよ~!」
ネ:「返して欲しくば何かをよこせ」
マ:「金塊とメリケンしかないけど…」
ネ:「メリケン!!マジかよそれで許す!!」
マ:「じゃあメリケンで殴るから避けないでね」
ネ:「よっしゃあああ!!ばっちこいいぃゃや!!」
マ:「バーン」
ネ:「げふぅ!…まだまだああ!!」
マ:「バーン」
ネ:「おふぅ!いいよいいよ!!」
マ:「バーン」
以下繰り返し。
嫌です 嫌です 嫌なんです 嫌だ嫌だいやだイヤダ
僕はそんなもの知りたくない
僕はそんなもの理解したくない
文字を刻むだけで火を起こしたり
魔法陣を描くだけで好きな所にワープしたり
呪詛を唱えるだけで人を殺したりしたくない
木の棒と木の板を使って火を起こせばより達成感が得られるとゆうのに
己の両足で歩けば道中の風景がより美しく感じるとゆうのに
計画を立て手にした刃物で刺殺すればより開放感と罪悪感があるとゆうのに
そんな楽な方法は僕にはいらない
僕は努力がしたい
だから僕は──
「だから俺様はめちゃくちゃ楽しく、はちゃめちゃ愉快に悪巧みするのさ」
───────────-
『っとゆうわけで、ワシが困っている事はこれで理解したかのぉ?』
「………どちら様ですか?」
日曜日の朝六時ジャスト、アタシこと高上 舞〔タカガミ マイ〕はパジャマ姿のまま家でダラダラと休日を過ごしていたそんな時、無駄にいい声してる知らない爺さんから電話が来た。ってか、かなり早口で言われて聞き取れなかったよ…。
知らない爺さんは電話越しに『あ、そうじゃった』と、自己紹介をしてなかった事に気づいて、
『ほら、ワシじゃよワシ』
「ワシワシ詐欺ですか?」
『そんな詐欺存在せんわぃ…。まあいつか現れるやもしれんがのぉ。あれじゃ、マイちゃんのバイト先の一番偉い人じゃよ』
「……え? それってつまり?」
『うむ。ワシが神様の中の神様、大神様〔オオカミサマ〕じゃ』
電話越しに神様光臨したー!!!?
「え!? あ、いや、すみません!! ワシワシ詐欺とか言ってすみません!! 声がドラゴ〇ボールのセ〇に似てるとか思っちゃってすみませんんっ!!!」
『……まあそれは置いとくとして、ワシの話聞いてたかのぉ?』
置いとかれちゃったよ。絶対怒らせちゃったよどうしよヤバいよ…。
「は、はい…。人捜しでございますですよね?」
『日本語がおかしいぞぃ? それよりも、何としても見つけだして欲しいのじゃ』
「はあ……」
う~ん、本格的な人捜しなんてしたことないなー。アタシなんかに出来るかな? …とりあえず、その人の情報が必要だよね?
「あの、その人の特徴はどんなですか?」
『ワシの息子』
「さらっと凄いこと言った!!」
大神様の息子!? いやいやいやいやっ! …え!? 息子さんが行方不明!? 迷子!? 大神様って息子さんいたの??
混乱するアタシをそのままに、神様は話を進める。
『もしや家出したのやもしれんのじゃ。神様代行の仕事が忙しいと思うが、よろしく頼むぞぃ』
「ちょ、待ってください! あの、他に特徴は?」
明らかに情報が少な過ぎる。せめて名前とか服装とか髪型とか…。
『うむむ、そうじゃなぁ。ワシに似て超カッコイイぞぃ! そしてホントに可愛いやつなんじゃ! 今すぐにでも抱きしめたいくらい!』
「………………」
大神様は親バカだった。
『探し出せたらバイト代はずむからのぅ。んじゃ、頼むぞぃ舞ちゃんや!』
ブツッ……ツー、ツー、ツー、
「…もしもし? もしもし?! き…切られた…」
結局なにも聞けなかった。
…あの爺さん本当に神様なのか? 窓から人が出て来てドッキリ大~成~功~! とか言われそう。しかし、
「…バイト代…アップ!」
この前本屋で電〇文庫を大人買いしたからお金が無くなってたし、アタシにとって願ってもない話だ。…でもなー、いたずら電話の可能性も有り得るしなぁー。
「どしたの舞? 誰から電話?」
「何でもないからすっこんでて兄貴」
「コノヤロー」
…まあ暇だったし、アイツに聞いてみるか。大体の事は知ってるし、見かけてるかもしれないし。
と。ゆうわけで、アタシはとりあえず着替えてから出かける事にした。
黒猫の妖怪、裏の事情に詳しい妖怪、ネコマタの所へと。
───────────-
「カッ、カカッカ、、カッカカカッカカ、カッカ」
ズルズルと…ズルズルと…。その足を引きずるように。
「あぁ、あああぁ、早く試したい。試してみたいよ」
ガリガリと…ガリガリと…。その爪で壁を引っ掻きながら。
「この『力』、この身体が本物なら、俺は無敵。無敵無敵。カッ、カカカカカッ。わ、笑いが止まらないよ」
複雑に入り組むこの街の路地裏の更に奥、『世界の歪み』の影響を受けた『能力者』、沼崎 泥都〔ヌマサキ デイト〕は歩いていた。
白いシャツに灰色のズボン、短い茶髪に鋭い目を持つ彼の左半身、足先から首筋にかけて肌は変化していた。
鈍い光を放つ鋼。泥都の能力、『剛限鉄硬〔メタルマン〕。皮膚を鎧のような鋼鉄に変える能力。
だが、その能力が問題なのではなく、沼崎 泥都の人格が何よりの問題だった。
「ノコギリでも切れない、電動ドリルでも穴が空かない、火もそれほど熱く感じないし壁を殴っても大丈夫…」
泥都は左手の指先をコンクリートの雑居ビルの壁に当てて、ガリガリとえぐった跡を残す。
泥都は犯罪者になりたかった。まるで、将来なりたい職業がそれだと言いたいように。
不満や欲求がある訳ではない。ルール、常識、秩序、それらを気にせず、やりたい事をやる自由な様に憧れたのだ。
誰にでも言える事だが、親にも社会にも幼い頃から縛られてきた彼は、世界のすべてに退屈していた。何時までも続く日常に疲れていた。
そんなある日のニュースで、昨夜逮捕されたと報道された連続殺人犯の顔が映った。泥都の目には、殺人犯がルールから解放された人種に見えた。そのやり遂げた犯人の顔を見て、泥都は犯罪者に憧れ始めたのだった。
「後は、これは人を殺せる力なのか…それさえ分かったらすぐ犯行、犯罪、違犯、…やっとなれる…憧れの犯罪者に!」
バゴッ!! と。喜びを抑え切れず、左拳で壁を殴り穴を開けた。
彼は真面目で心配性な性格である。だから行動する前に準備を怠らず、前もって調べておく。事件を起こす時も調べてから犯行すると決めていた。しかし、犯行に関しての知識が浅い自分では大それた犯罪は計画出来ない。そう考え、今まで犯罪に踏み出せなかった。
「でも今なら出来る。計画なんていらない。盗み放題殺し放題だ! でも、最低限、最低限この力を検証しないと」
薄暗い路地裏でブツブツとニヤけながら呟く。
「とにかく、まず一人、試しに殴ってみよう。何回殴れば死ぬのかな? カッカッカカッ! 五回ぐらいなら逃げる時間も充分だな、強盗殺人も夢じゃない!」
泥都はルンルン気分で暗い路地裏の奥へと進む。が、
「…やっぱここじゃあ人はいないのか?」
人に出会わない。やはり人気のない路地裏で試すのは無理があったか…。と、その時、
コツ、コツ、コツ、コツ…
「! い、いた、いた!? カッ、カカカカカカカカカッ! やった、やったぞ!! そうだ、慌てるな、落ち着け。どうしよ、いよいよだ! ドキドキするよ!! カカッカカッカっ!」
奥にある十字路の右に曲がった所から靴の音が聞こえる。
泥都は子供のようにはしゃぐ。汗ばむ手を握りしめ、緊張しながら早足でなおかつ足音を殺して近づく。
「とにかく、近づいて問答無用で頭を殴る! この『鋼の拳』で殴りつける!」
心を落ち着かせ、息を整え、何度も頭の中でシミュレーションして、覚悟を決めて、
「……よし、大丈夫。いざ、初陣!」
そして、泥都は右に曲がり、その鋼鉄の握り拳で襲い掛かった。
「ぁあ?」
シャキン
握り拳が、いつの間にかパーになっていた。
「? あれ?? …俺の指は???」
親指人差し指中指薬指小指。左手の指が付け根から全部落っこちていた。
「あ、ぁああ…ぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!??」
指がとれた事に気づいた瞬間、泥都は決壊したように叫んだ。付け根からどろどろと血が流れ、止まらない。
「ッ…っせえな! 指斬り落としたぐらいで泣くなよ…ったく」
襲われたガタイのいい男はうっとうしそうに言った。
背が高い青年だった。ワイシャツの上に黒いジャージをチャック全開で羽織り、チェーンやファスナーがジャラジャラ付いたズボンの左右に一本ずつ剣を携えている。そしてなぜか、黒い髪の中から二本の短い角のような物が顔を出していた。
「指?! 指が落ちて!!? あああああああああ!」
指を動かす感覚はあるのに指がない。不思議な感覚に戸惑い、痛みと驚きがごちゃまぜになる。
「…いや、何か、悪かった。喧嘩売られたと思ってつい…。絆創膏いるか? ボンドでくっつけるか?」
青年はポケットに手を突っ込んだまま相手の顔色をうかがう。泥都の顔は激痛と驚きでぐしゃぐしゃだった。
「あぅ…うう、…何で、何で取れたんだよ…」
「ん? 何? ボンドいる?」
「俺の指だよ! コンクリートすら簡単に砕くこの指を、どうして!?」
「……そりゃあ、斬れたからだろ?」
青年にあっさり言われ、泥都の自信は煙りのように消え去った。残ったのは犯行に及ぶどころか返り討ちに会い、泥都の力がその程度だったという屈辱の結論だけ。
「ぅ、…っぐうおあああああっ!!」
泥都は絶叫し、左肩を前に突き出してアメフト選手のようにタックルする。
「うぉお!?」
青年は身体をくの字に曲げてそれを避ける。すぐ横をタックルが通り、後ろの壁に斜めから激突する。そして、コンクリートの壁は粉砕した。
「……おいおい、マジかよ」
突撃された壁がまるで爆薬を使用したように吹き飛んだ事に、男は驚愕した。
「…カッ、カカカッカッカカカッ! み、見たかよ、俺の力! 俺は強い、最強の、最悪の殺人犯だ!!」
振り向き、青年の驚く顔を見て勝ち誇る。
「……まだ死んでねえよ。…流石にありゃ無理か…、どうしたらいい?」
泥都は首を傾げる。どうしたらいいって、何で俺に聞くのだろうか?
だがそれは、泥都に問うたものではなかった。
「じゃあぶっ壊しちゃおぅ~♪」
ゴシャッ!!
泥都の後ろから、誰かの回し蹴りが左肩へと炸裂した。
「ギャアッ!!」
そのまま反対側の壁にたたき付けられ、左肩の硬質化した皮膚は回し蹴りによってペンキの塗装のようにパラパラと剥がれ落ちた。白いシャツが赤い血で染まっていく。
「貴乃華〔タカノハナ〕ぁ、どこ行ってた?」
青年は苦しむ泥都を無視して言った。
「べっつに~☆ ボクはちょと散歩ついでにアラちゃんの慌てっぷりを見物してただけだよ~♪♪」
「……相変わらずいい度胸してんのな」
貴乃華と呼ばれたのは小学生ぐらいの子供だった。タキシードのような格好に首の赤い大きなリボンが印象的。金髪で幼い顔立ちから女の子に見えなくもないが、どうやら男の子のようだ。
「…この人誰? アラちゃんの彼氏★?」
貴乃華は心から楽しそうに、アラちゃんと呼ばれた青年をちゃかした。
「殺すぞ。ってか、知らない奴なら蹴り飛ばすな! お前のは東京タワーでもへし折る勢いの蹴りだろうが!」
「やっだなーアラちゃん♪ スカイツリーで限界だよ☆」
「大差ねえ!! 破壊神かよっ!?」
「その気になれば世界を敵にまわせます♪」
「止めろ、ちゃっかり世界征服達成しちゃいそうだ」
二人は泥都の事を完全に忘れて言い合っている。
「………く…ぅ」
その隙に、泥都はよろよろと気づかれないように貴乃華の後ろを通って逃げる。体も心もボロボロな泥都は、背を向けて逃げる事しか出来なかった。路地裏の奥へと進む。
と、
「もう、ボクそんな事に興味ないもーん☆ それに…」
泥都はその時、奥にもう一人誰かいる事に気づいた。
「世界征服するのは神之上〔カミノジョウ〕だもん♪♪♪」
暗い路地裏に、白い男が立っていた。
「その通りだ貴ちゃん。世界征服は俺様の夢だ」
異質。
明らかにあの男の纏う空気が違う。
神之上という男は肌が白く、この四人の中で一番背が高かった。髪もシルクのように白く、腰まで伸ばした長髪。イケメンの部類に入る顔に青い目、更には純白の白衣を着ていた。白の印象が強すぎて聖人のようにも見える。
「それとアラちゃんさあ、路地裏だからって一般人を斬っちゃうのはどうかと思うんだよね俺様……」
「そうだぞアラちゃん☆!」
「てめぇも蹴り飛ばしただろが貴乃華!! …いや、コイツからやって来たからつい…」
三人に囲まれた泥都は困惑し、恐怖した。憧れの犯罪者デビューのはずが、まさかこんな事態を招く事になるとは思いもよらなかった。
「うん? そうかなるほど、能力者だったか。いや、家のアラストルが世話を掛けた。すまない」
神之上は涼しい顔で、アラちゃんことアラストルの代わりに謝罪した。
「…なんだよ、…俺は力があるんだぞ!? 何で驚かないんだよ!?」
その謝罪の言葉を無視し、泥都は三人に向けて唾を飛ばした。そんな問い掛けに、神之上は答える。
「…君の力は俺様達にとってたわいもない物だからだよ」
「…は?」
「君にとっての異常は、俺様にとってはただの通常だと言ったんだよ」
神之上は頭を上げ、歩き始める。
「異能力を…非日常を手に入れて、自分が強くなったと勘違いしてるみたいだが、実際なにが変わった?」
神之上はゆっくり泥都に近づく。プレッシャーに気圧され、泥都は意思に反して後ずさりした。
「…カッ、カカッカカッ! もちろん、全て! 俺はこの力で全てから解放された!! カカカッ!」
と、泥都は高笑いをあげる。が、
「うん? つまり、ルールからの解放って事か? 残念。お前はまだ解放されてない」
神之上の言葉に泥都の表情が固まった。
「……カカッ?」
「全てのルールから解放されてなきゃ、真の解放とは言えねえよ」
神之上はそう吐き捨てた。
「“社会のルール”なんて小さなものじゃない。親から生まれ、重力に縛られ、朝になったら起きて、夜になったら寝て、腹が減ったら食べて、それを規則正しく繰り返し、そして老いて死ぬ。この“人間のルール”から解放されなきゃねえ?」
人間は生きているだけでルールに縛られる。社会で生きていくルールだけでなく、人間と言う種族であるためのルールもまたしかり。
「…か、関係ない! 俺は犯罪が出来る出来ないの話を…」
「関係あるだろ。いいか? 真の解放ってのは…死ぬって事だ。死んで、プラスでもマイナスでもない、ゼロになるって事だ」
白く異質な男の言葉は重く、水のように心の隙間に流れ込んだ。
「お前は解放されてない。悪ぶっているだけだ。それに、犯罪者ってのはそれはそれは酷い顔をするものさ」
「……ぁ……ぅぁっ…」
その時、泥都は昔見たニュースを思い出した。殺人犯のあの満足した顔、あれは、解放された者の顔だった…のか?
─…あれ? なにこの感じ…。
「…………あ」
そして気づく。あれは、死を求めた顔だ。苦しみを耐え切れず、自ら命を絶つ事も出来なかった彼らは、自分の心を殺したのだ。あの顔は、今すぐ死にたいという感情の表れだったのだ。
怖い。怖すぎる!
「い、嫌だ! うわああっ!!」
絶叫し、後ろに退いた足がもつれて尻餅をつく。
「嫌だあ! あんな顔になりたくないい!!」
今まであれ程にまでなりたかったのに、この男の言葉で夢が打ち砕かれてしまった。
目の前まで来た神之上は泣き叫ぶ泥都を見下ろす。まるで、世界を俯瞰する神様のように。
「………ふん」
そして、神之上は胸ポケットから一枚の紙を取り出し、泥都の頭にぺたっと貼り付ける。すると、一瞬の内に紙が溶けるように消えた。
「……よし、アラちゃん貴ちゃん、そろそろ行くか」
「う~っす」
「は~い♪」
興味を無くした神之上は来た道を戻り、アラストルと貴乃華の二人は神之上を追い越して前を歩く。そんな三人を尻餅をついたままの泥都は、
「………ょう」
怒りを込めて睨みつけていた。
「……ちくょおおおおぉおお!!」
そして、自分の情けなさに耐えられなかった泥都は、指がない『鋼鉄の腕』を振り回しながら神之上へと突っ込む。そんな泥都に神之上は、
「はあ…。お前、めんどくさい奴だなああ!!」
振り向きざまに硬質化した腹へ、渾身のボディーブローを放つ。
ミシャッ! と。黒い皮膚が砕け、胃液が血と共に逆流し、身体の中心から花のように血が広がった。
「ガァッ!!?」
そのまま歪んだ弧を描きながら宙を舞い、後方へ殴り飛ばされた。
「憧れの犯罪が出来てよかったな。あれ? 未遂だったか? まあいい、本気の殺意を持った時点で殺人者になったみたいなもんだしなあ」
ゴホッと吐血し、泥都の意識はそこで途切れた。…動かない。
「…死んでないよな?」
やり過ぎたか? と、少し心配になってきた。
「ヤ~ちゃった♪ ヤっちゃった♪ 神之上~がこ~ろした♪♪」
貴乃華はキャッキャとちゃかしている。神之上は冷や汗を流しながら、
「いや、でも、大丈夫だって! 危なくてもすぐ天界から人が…」
と、泥都の様子を見ながら言った。
「ちょっと待て。天界から…何だって?」
神之上にアラストルが聞き直した。
「え? あぁ…さっき貼った紙が目印になって天界人が来んの」
「馬鹿かてめぇ!! 今天界人に見つかったら確実に拘束されるだろが!!」
「え~? 元々最初に事を起こしたの何処のどいつよ? ぁあ~ん!!」
「むぐぐ…む、むこうから来たんだぜ?」
やり返したけど…。
「天界人なんかに見つからねえよ。ほら、腹が減ったから飯食いに行くぞ」
「ワ~イ☆ ボクねえ、ステーキとラーメンとステーキとシチューとステーキね♪」
「ハハッ、貯金がぶっ飛ぶな…」
そして三人は何事もなかったかのように笑いながら路地裏を去る。
「んで? 作戦会議もついでにするか? 襲撃とか破壊工作とかは俺が担当な!」
アラストルは凶暴に笑い、
「じゃあね~♪ ボクはレインボーブリッジとか東京タワーとか真っ二つ係ね☆」
貴乃華は無邪気に笑い、
「いいねいいね! 悪党っぽいね! せっかく地上界に来たんだし、そんぐらい暴れねえとなあ!」
神之上は妖しく笑う。
「じゃ、作戦会議の後、俺様たちは穏便に、冷静に、狡猾に、醜悪に、派手に、迅速に世界征服を始める! 地上人の諸君、ベッドの隅で奥歯ガタガタ言わせながら待ってろよ!!」
───────────-
「……なにあれ? ……怖っ」
その様子を見ていた黒猫妖怪が一匹。
貴:「さあさあ始まるザンスよ♪」
ア:「いくでガンス」
神:「フンガー!」
ネ:「…こ、この場合は本家かそれとも…」
マ:「まともに始めなさいよ!!」
ア:「言っちゃったしもう終わりだし…」