思い出
『…多分、これじゃねぇんだよなぁ。』
家に帰り自室に籠って1人呟く。
今は自分のアルバムを観返している所だ。
『でも、不気味だよなぁこん時の僕。』
アルバムをまた1枚捲りながら独り言を続ける。
何が不気味なのか。
小さい頃、1人は大っ嫌いで1人になればすぐに泣いたり表情を暗くしていた記憶がある。
でも、アルバムの中には隠し撮りされていたものもあるのにも関わらず、全て笑顔で写っている。
どう考えても違和感しか出てこない。
〖─夜月。〗
『ッ!?!?』
"何か"が僕の名前を呼んだ気がした。
風の囁きのようで、はっきりとした言葉。
…どう考えても記憶の中の言葉だろう。
でも、とてもはっきりとしたものだ。
それに、誰のものなのかが思い出せない。
この言葉は、この声に呼ばれていた僕の名前は、
誰のもので、どこで呼ばれたものだっただろう。
そう言えば小さい頃は1人は大っ嫌いだったが、
それでも家族と居ることなんざほとんどなく、
深琴といる事も週に数回。
それでも毎日1人で出掛けていた記憶がある。
『…意味不明。』
でも、何処に出かけていたかさえ分かれば…!
思い出したい事に直結してる気がする。
覚えていることを整理しよう。
僕は小さい頃、
1人が大っ嫌いだというのに1人で出掛けていた。
今の記憶の中には誰のものか分からない声がある。
その人に会いに行っていたと考えるのが普通だ。
『…山の中?』
そうだ。そう言えばいつも行ってた気がする。
山を登って何やってたんだろ…?
でも今午後7時だし今日確かめに行くのは無理か。
『…明日深琴連れてくかぁ。』
深琴連れて行くなら怪我の心配もないしな。
まぁ母さんたちが許すかは別問題だが昔1人でも行けてたのなら問題ないだろ。