Prolog
草の匂いよくがするこの部屋は神社の中にある小さな祭壇の前。
そこにはまだ5歳に満たないであろう子供と肩に栗鼠、床の辺りに鷹を連れた15歳ぐらいであろう男がいる。
「夜月、こっちにおいで。」
『 はぁいっ!えへへっ!ーーの上って落ち着くっ!』
少女は夜月という名を持っていた。
まだ今は小さいがいずれはこの神社の巫女にある人間である。
男の方の名前はよく聞き取れない。
「良かった。夜月、やっと笑った。」
『?うんっ!』
少女は彼の前ではよく笑うが、いくらこの歳とはいえ他の人間の前では殆ど笑顔を見せないような人間である。
男はそれを少し心配しているらしかった。
場面が変わる。
少女は15歳ぐらいに成長していた。
「夜月!貴方は神に選ばれた子なのよ?こんな事すら出来なくってどうするのよ!」
『ごめんなさい…。』
少女は母親らしき人間に怒られているところだ。
例の彼は近くにいるが少女は気にしていない…と言うよりは気づいていない、もしくは見えていないと言った方が正しいか。
「夜月、お前は神に選ばれた子だ。期待しているぞ?」
『…はい!』
明らかに作り笑顔だろうと分かるような笑顔を浮かべる少女。
だが父親らしき人間の方は気がついていないようだ。
またも近くにいる"彼"は少し悲しそうな表情をする。
…それでもやはり少女、夜月にはみえていないようだった。
これは人間不信になってしまった少女がまた、人間を信用出来るようになるまでの物語。