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恋が叶うチョコレート  作者: 上条ソフィ
恋が叶うチョコレート
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9

和葉は携帯を見つめてため息を吐いた。


今日は仕事に身が入らない。同僚のゆうちゃんにどうかした?と聞かれたが、なんでもないと曖昧に笑った。


今夜のごはんどうしようかな。佐々本さん帰ってきたのかな。


そろそろ終業時間、今日は定時で帰れそうなのに。


佐々本とは週末を過ぎても連絡が取れない。


や、別に付き合ってるわけじゃないし。毎日連絡取り合ってはいるけど、ほとんどごはんの話題だし。

…毎日連絡取ってるんだよな。ちょっと前まですれ違っても会釈するだけだったのに。


和葉はふふふと思い出し笑いする。


また具合が悪いのかな。

でもなんどもこっちから連絡するのもなあ。


今日はめんどくさいから久しぶりに冷凍パスタにするか惣菜を買おうか。

…いや、寒いから豚汁でも作ろうかな。持っていったら佐々本さん食べるかな。


和葉はまたぐるぐると考えそうになるのを振り切って、

「えーい!豚汁だ!私が食べたいの!」

と宣言した。


最寄駅まで着くと、和葉はスーパーに寄った。店内はすっかりバレンタインムード。明日がバレンタインなので、店も最後のダメ押しとばかりにバレンタイン商品をアピールしている。どこもかしこもハート、ハート、ハートだらけだ。バレンタインにまったく関係なさそうな惣菜にまでハートがついている。売れればこの際なんでもいいという店の声が聞こえてきそうだ。


スーパーでもこんな高級なチョコレートが手に入るようになったのねえ。前はデパートに行かなきゃなかったのに。嬉しいけど、ありがたみが減る気がするのはわがままかな。


結局佐々本に何をあげるかは決まってない。ハート型のお煎餅に『いつもありがとう』と書いてあるやつが、明らかに義理っぽくていいんじゃないかと思ってる。…重くなくて。


ごはん食べたいものありますかって聞いたんだけど。返事こないし。


チョコを買うのはためらって、結局和菓子コーナーで苺大福を買った。くーちゃんと一緒に食べるつもりだ。



和葉はキッチンに立つと1人でごはんを作り始めた。


いつもは佐々本さんが大きさを揃えて野菜を切ってくれるんだよなあ。

佐々本さん曰く、『姉に食材の大きさは揃えろと言われている』らしい。どんなお姉さんなのかな。お姉さんの話をする佐々本さんの顔は柔らかい。きっと仲のいい姉弟なのだろう。


一通り作業を終えた和葉は、顔を上げて部屋を見渡す。


ファミリータイプのこの部屋がこんなに広く感じるなんて。キッチンも、ダイニングテーブルも、誰かと一緒にいるために設計されいてるからな。


しんとするリビングが寂しくなった和葉は、テレビをつける。いつもは何を見ていただろう。ほとんど佐々本さんと話しながら見てたから。先週一緒に見たグルメ番組は、『今度これ作りましょうか』という佐々本さんの声を思い出して、ニュースに替えてしまった。


一応、一応ね。


ドキドキする胸を押さえて、和葉は佐々本の家のインターホンを押す。


ピンポーン


返事はなかった。和葉はしょんぼりと家に戻った。一人で食べるごはんは、味気ない。


シンクに食べ終えた食器を置いて、和葉は豚汁の鍋を見た。


…いつもの癖で鍋いっぱいに作っちゃった。明日は保温ジャーでランチに持って行こう。明日、明日か。明日のバレンタインどうしようかな。


結局、苺大福タイムになってもくーちゃんは現れなかった。


佐々本の家からは、何の音も聞こえなかった。


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