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恋が叶うチョコレート  作者: 上条ソフィ
桜の花びらミルフィーユ・チョコレート
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「ホワイト」の和葉が瑞樹のお母さんにネックレスを貰った後日談。

「お礼、何がいいかな?」

和葉はネックレスを触りながら言った。困った時はゆうちゃんに相談。一番現実的なアドバイスをくれる。

「うーん、無難なのは消え物の食べ物かしらね。でも食べ物にこだわりがあったり、アレルギーがあったりするから。お母さんの趣味とか分かる?」


まさか魔女です、とも言えない。ウサギの内臓が欲しいらしいとも。


「うーん、モノづくり?かな。」


確かなんかいろいろ作ってるって聞いたことがある。あと呪い?


「モノ作りか。幅が広いわね。お菓子とかにしといたら?一応好みは確認した方がいいわよ。まあ男なんかに聞いてもその辺のことは無頓着だからあんまり参考にならないけどねー。」



ということで、和葉はデパートに来ている。

なんかこう、きちんとした箱に入った美味しそうな食べ物ならきっとデパートにあるはず。


何がいいかな。とりあえず好き嫌いもアレルギーもないとは聞いているけど。


とりあえずぐるっと一周回ろう、と思った和葉は、奥まったところにある店舗に目がいった。常設の店舗ではなく、期間限定の店のようだ。のぼりが立てられ、透明なガラスケースに品物が並んでいる。


『桜の花びらミルフィーユ・チョコレート』…?

なにそれ、美味しそう。


和葉は店に引き寄せられた。


「いらっしゃいませ。」

女性の店員さんが微笑んだ。唇の下にあるホクロがセクシーな女性だ。

「あの、お世話になった方にお礼を探していて。」

和葉はガラスケースの中をキョロキョロと見ながら言った。


ケースに並ぶのは、親指の爪ほどの大きさのチョコレート。

桜の花びらミルフィーユってどういうことなんだろう?


「うちの自慢の期間限定のチョコレートです。桜の花びらを乾燥させて、チョコレートをミルフィーユのようにサンドしています。」

「えっ桜の花びらをですか?」

「はい。特殊な方法で、桜の花びらを一枚一枚シワにならないように平らにして乾燥させているのですよ。パリパリの桜の花びらと、しっとりしたチョコレートのハーモニーをお楽しみいただけます。」

「すごいですね!手間がかかりそう。」

「おっしゃる通りでございます。一枚一枚、桜の花びらの上にチョコレートを伸ばし、その上にまた桜の花びらを乗せ、ということを7段。すべて手作業で行なっております。」

「すごい。職人の技ですね。」

「はい、ご試食されてみませんか?」

店員はケースから綺麗な箱に入ったチョコレートを取り出すと、封を切ってすべてを和葉の目の前に差し出した。

「あの…商品なんじゃ…」

「いいんです、いいんです。食べていただいてナンボですから。ささ、お好きなだけどうぞ。」


では…と和葉は一粒箱から摘んだ。一粒一粒が区切られたケースに収められている。ピシッと桜の花びらの形をしたチョコレートがずらりと並ぶ様は圧巻だ。


これは一口で食べるもの?でも断面も見てみたい。

少し迷って和葉は真ん中で齧った。サクっという音と共にチョコレートが口の中に消えていく。


サクサク、ふわっ


パリパリの桜の花びらの食感がしたと思ったら、チョコレートがふわりと口の中で溶けていく。


「おいしい!」

和葉は目を輝かせた。


「ふふ、嬉しいです。どうぞどうぞ、もっとお食べになって?」

「え、でも…」

と言いながら、和葉は次のチョコレートに手を伸ばした。


サクサク、ふわっ


「美味しい〜」

ほうっと和葉は息を吐いた。体が暖かくなるような、幸せな気分だ。


「ホワイトチョコレートのものもあるんですよ。こちらは桜の花びらが透けて見えるように、ミルクチョコレートよりさらに薄くチョコレートを重ねています。」

店員はまた別の箱を取り出すと、ぱあっと開けて和葉に差し出した。


「わーきれい!ほんとにピンクが透けて見えますね!」

「そうなんです。このピンクは天然のものでして、着色料等は一切しようしていません。このお色を出すのには本当に苦労しまして。」

「すごい。作った方の気持ちが伝わってきますね。食べちゃうのがもったいない。」

「どうぞ、ぜひ、お食べくださいませ。」


和葉はこれも真ん中で齧った。先ほどよりパリパリ感が強いチョコレート。桜の味がふわりと広がる。


「こっちのほうが桜!って感じですね!」

「はい。ホワイトチョコレートのほうがクセがないですので。ミルクチョコレートの方は、実はほんの少しだけあんずジャムを挟んでいるのですよ。ふふ。企業秘密ですけど。あんずの花をご覧になったことはありますか?桜に似て可愛らしいお花です。」

「ないです!あんずジャムか。いいですね。」

「自家製のジャムです。」


自家製。その言葉だけで惹かれるものがある。


気がつくと箱の半分くらいを食べてしまっていた。もう他を回る気にはなれない。絶対にココ。間違いない。

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