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恋が叶うチョコレート  作者: 上条ソフィ
ホワイトデーのお返しもチョコレート
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22

「あの彼、おもしろいね。魔女の気配がする。呪われてるか、近いところに魔女がいるか。」

「……」

「おもしろいな。操ってみようか。」

「やめてください!」

「あはは、冗談だよ。」


でも、とパティシエは和葉の顔を覗き込む。

「どうする?彼を虜にする?君の言うことをなんでも聞くお人形さんにすることもできるよ?」

甘い毒を注ぐように、パティシエが誘惑する。


和葉は必死に首を振った。


違う、そんなことをしたいんじゃない。私はただ…


「ああ、心の底から愛して欲しいってやつ?そういう風にする方法もないことはないよ。精神が壊れるかもしれないけどね。」

「違います!そんな、操るとか、そういうことがしたいんじゃなくて…」

「なくて?」


今まで言えなかったこと。言っていいのか分からなかったこと。


「彼のことが好きなんです。ずっと一緒にいたい。好きでいて欲しい。もっと好きになって欲しい。…ただそれだけなんだけど…でも…」


和葉は言いながらどんどん下を向いていった。…自信がない。


「そっその!触れて欲しいって思うのおかしいですか?」

和葉は赤くなりながらパティシエを見上げた。


ただ一緒にいるだけじゃ嫌だ。もっと近づきたい。でも、そんなこと、恥ずかしくて言えない。言って引かれたら?そんなこと考えてるのかお前は、なんて、瑞樹は決して言わないだろうけど…


「だそうだよ、カレシ君?」

パティシエが和葉より後ろに視線を投げて言った。

和葉はぴしっと固まった。おそるおそる後ろを見ると、そこには赤い顔をした瑞樹が立っていた。


「ごめん、盗み聞きするつもりはなかったんだけど…」

「あっ!えっ!やだ!うそ!」


え、いつから!いつからいたの!?


「和葉、好きだ。前から好きだった。…和葉がいいって言うならもっと近づきたいよ。」

瑞樹は和葉の手を取って言う。


「…うん。私も好き。」


言った。やっと言えた。


「その、瑞樹、引かない?私がこんなこと考えてたなんて。」

「まさか!嬉しいよ。」

瑞樹は嬉しそうに笑った。その顔を見て和葉はほっとする。


「その彼は魔女の血が流れてるみたいだね。安心して。あの程度の魔力じゃあ体内ですぐに分解しちゃうかな。」

「和葉に近づくな、悪魔。」

瑞樹は和葉を隠すようにパティシエに対峙した。


「おーおー怖いね。」

「瑞樹!この人は私の話を聞いてくれただけで。あの、ありがとうございました。」

「ふふ。また気が変わったらいつでも言ってね。君のことは気に入ったから力になるよ。」

「和葉、そいつの言うことは聞くな。もう行こう。」

「うん。」


安心して力が抜けた和葉は、へにゃっと笑った。そして、無意識のうちに目の前にあった持ってきたチョコレートを食べた。パティシエが持って来たものだ。


もぐもぐ。あ、美味しい。ごっくん。


パタン


和葉はぱたりと目を閉じてソファーの背もたれに体を預けた。


「和葉に何を食わせた!」

瑞樹が和葉の体を抱きしめながら叫んだ。


「何ってオランジェットだよ。知らない?柑橘ピールのチョコレートがけ。たしかに柑橘ピールを煮る時に少しリキュールは入れたけど、ほとんど蒸発してアルコールは飛んでるはずだよ。それよりちょっとお疲れ気味だったんじゃないかな。目の下にクマができてるし。なんだかいろいろ悩んでたみたいだし。」


そう言われると瑞樹も弱い。


「うっ。そうか。和葉、大丈夫か?」

声をかけてみるが、和葉はくーすか気持ちよさそうな寝息を立てている。


「お詫びに部屋を取ってあげるから休んでけは?」

「いや、家に帰る。」

「意識ないまま運ぶの大変だよ。それに、その状態で帰ってご近所とか大丈夫なの?格好の噂の的になるよ。」

「そっそれは…」


確かに厳しかもしれない。瑞樹はなんと言われようと気にしないが、和葉は独身の女性だ。


瑞樹はしぶしぶホテルに泊まることにした。


まあ和葉が起きたら帰ればいいんだし。


「ホテル代は払う。」

「はいはい、〇〇号室押さえておくから。落ち着いたら行けばいい。」

「すまない。助かる。」


パティシエは手をひらひらさせながら去っていった。

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