表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋が叶うチョコレート  作者: 上条ソフィ
ホワイトデーのお返しもチョコレート
32/54

4

「清水さん、この書類なんですが。」

「清水さん、もうすぐお昼ですね。ランチ行きませんか?」

「清水さん、メールありがとうございました。助かりました。ところで、週末ってなにしてます?」


和葉は首を傾げた。


最近なんかやたらと色んな人に声かけられるんだよね、なんで?


「和葉、モテ期なんじゃん?」

ゆうちゃんがにやりとして言った。

「違うよー、ただの仕事の話だよ。」

「ランチとか誘われてるじゃん。いいの?私と食べてて。」

「あー、なんかお礼のつもりらしいんだけど。でも仕事だからやっただけだし。断ったよ。」

「…あんたは鈍いんだかはっきりしてんだかよくわかんないわね。」



和葉は今日もゆうちゃんと会議室でランチだ。お弁当持参。お財布にも優しくてエコだ。


でも、と和葉は続ける。


「この前不思議なことがあって。サラリーマン風の人がいきなり私の前に立ってハンカチを落としたのね。え?と思ってたら、その人がいきなり『僕のハンカチを拾ってくれてありがとうございます。お礼に食事でもいかがですか?』って言ってきて。いや、拾ってないし、みたいな。」

「それやばいよ!彼氏に言いなよ!」

「えーでも結構ですって断ったらそれから見ないよ。」

「いや、どっかから見てるかもしれないから!彼氏に言いなさい!」

「こういうことも言うものなの?なんか、変なアピールっぽくて嫌な感じじゃない?」

「彼氏はあんたの一番の相談役なのよ。知らなかったら彼氏が悲しむよ。」

「そっか。じゃあ言ってみる。彼氏。彼氏か。へへへ、いいね。」

和葉は頬を染めて嬉しそうに笑った。


「和葉!心配だわ!このボケボケちゃんを彼氏はちゃんとに守れるのかしら!今度連れてきなさい。話し合いよ。」

「いいね!ぜひ会ってほしい。今度一緒にイタリアン行く?前に行きそびれたところがそろそろ空いてきたって。流行のサイクルは早いね。」

ほのぼほと言った和葉に、この子ほんっとに分かってるのかしら、とゆうちゃんは呆れ顔だった。


翌日。

和葉は花束を持って出社した。ピンクのラッピングペーパーに包まれたピンクのスイートピーの花束。

「和葉、どうしたの?それ。」

「あっ、ゆうちゃんおはよう。これね、なんかもらった。」

和葉は困り顔で答えた。


「もらったって彼氏に?」

「ううん、なんかおしゃれな洋服着たお兄さんに。」

「ざっくりすぎだわ。知り合いじゃないのね?」

「知らない人。乗り換えのホームで電車待ってたらいきなり渡された?ってか押し付けられた?」

「断んなよ!」

「断ろうと思ったんだよ!でもちょうど電車が来ちゃって、波に押されてる間にいつの間にか手にあって。え?と思ったらもう電車閉まってたの。」

「その男は同じ電車に乗ったの?」

「わかんない。あの線の混みようは、ゆうちゃんもわかるでしょ。」

みんな朝は殺気立ってるし、と和葉は加える。


私だってびっくりしたのだ。ぼーっと立ってたらいきなり目の前に花束だもん。顔だって一瞬しか見れなかったし。しかも花束なんて余計なスペース取ってる私に乗客の厳しい目が刺さって。すみません、不可抗力なんです。


捨てようかなとも思った。でもこんなにきれいなスイートピー。こんなに朝早くからやってる花屋さんなんてあるのかな、もしかして自宅で育ててるやつ?なんて考えてたら捨てるに捨てられなくて。とりあえず会社に持って行って、こまったときのゆうちゃんを頼りにさせてもらおうかと思ってた。ほんと、頼りにしてますゆうちゃん。


「どうしたらいいと思う?」

「捨てなさい。」

ゆうちゃんはばっさりと切り捨てた。


「えっでも花に罪はないっていうか。それに見て!プードルが刺さってるの!」

そう、捨てられなかった原因の一つはこのプードルのぬいぐるみだ。顔がデフォルメされて大きくなったプードルのぬいぐるみが、大きな目をうるうるさせて(る気がする)こっちを見ている。


「捨てなさい。」

ゆうちゃんが真顔で繰り返した。

「ええ!でもかわいくない?ぬいぐるみ捨てるって罪悪感湧かない!?」


はああああーとゆうちゃんは大きなため息をついて、ついてきなさい、と言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ