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「ホワイトデーだ!仕切り直しだ!」
瑞樹は決意した。デートだ。デートをすればいいんだ。正直、家に篭るのも悪くないかな、なんて考えていたが、女の子はそりゃ外にも出かけたいだろう。
俺はモテるかモテないかと言われればモテるほうではない。だが母さんと真里に小さいころから振り回されているから、女の気持ちは分かるほうだ。
『瑞樹くんって優しい。付き合って!』と言われて付き合い始めるが、『うーん、なんかちょっと違うっていうか、優しすぎ?』と振られるパターンがほぼ毎回。だが元カノが新しく付き合った男とうまくいかなくなると、『彼の気持ちがわからない』と泣きつかれる。その度に相談に乗っている俺は、実はスゲー優しくてモテるんじゃないかと勝手に思っている。
悪魔には『おまえそんなんだから女に舐められるんだぞ』とも言われるが。否定はできない。
ホワイトデーへの決意を固めた瑞樹だったが、数年前に付き合っていた元カノに呼び出された。たしか最近結婚したばかりだったはずだけど、と思っていたが、どうやら旦那が浮気をしているらしい。
うまくいってないかな、でもこんなもんかな、と思っていた時に、旦那が寝てる時に指紋認証で旦那の携帯を開けてみたら、『もう嫁とは離婚の話が大詰めだ』と、遊んでる女とのやり取りに書いてあったらしい。
元カノはカフェの奥まったところに座って泣いている。
「は?ってなって。だって、離婚の話なんて一度もしたことないのに。」
「それはひどいな。」
女が泣いている時(もしくは感情が高まっている時)は、ひたすら聴き役に徹すること。これが鉄則だ。
瑞樹は辛抱強く元カノの話を聞いた。
話疲れて泣き疲れてふうと息を吐いた元カノに、瑞樹は水をさしだした。
「ありがと。瑞樹はあいかわらず優しいね。」
元カノが目元を拭いた。瑞樹は相談役にちょうどいいらしい。
「こんなに優しいと私もふらふらしちゃうかも。より戻す?」
元カノが冗談めかす。
「や、俺彼女いるから。」
瑞樹は即答した。
声のトーンを聞き分けた元カノは、
「いつもと違うね?」
と言った。
「うん、まじ。もう彼女しかいないってくらい好きだ。」
「はー…瑞樹はいっつも『いいよいいよ』てなんでも笑って言ってて。この人ほんとに私のこと好きなのかな?って思ってて。だから試して別れるとか言っちゃったけど。いまの彼女が別れるって言っても聞かないでしょ?」
「すがると思う。」
「俺の悪いところがあったら直すから!って?」
「うん。それで引き止められるならなんでもするよ。」
「ほー。瑞樹もついに運命の人を見つけちゃったわけだ。」
瑞樹は重々しく頷いた。
そうだ、こんな及び腰じゃだめだ。ちゃんと和葉に向き合わないと。
瑞樹の真剣な顔を見た元カノは、ふっと笑って
「聞いてくれてありがと。」
と言った。
「なんか出来ることあったら言えよ。」
「そんなに優しくしちゃだめだよ。彼女最優先で、ね?」




