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恋が叶うチョコレート  作者: 上条ソフィ
ホワイトデーのお返しもチョコレート
30/54

2

「で、最近どうなの?彼とは?」

和葉はゆうちゃんと昼休みにランチをしている。最近は日差しがぽかぽかと暖かくなってきたので、会議室のブラインドを開けている。風が強いので窓は絶対に開けない。


「うーん、特にこれといって。」

歯切れの悪い和葉を見たゆうちゃんは、首を傾げた。

「飽きた?」

「そんなんじゃないんだけど!…恋が冷めるのを待ってるっていうか。」

「は?」

「冷めてからほんとうのことが分かるのよ。」

和葉は遠くを見つめながら言った。

「…和葉はときどき深いこと言うわね。」


…だってズルしちゃったみたいだし。私があげたチョコレート、4粒一気に食べたらしいし。


『恋が叶うチョコレート』なんて、そんなに信じてはいなかったのだ。まあそういう謳い文句なんだろうなって。


でも先日。

和葉はその日も夕食を食べ終わって、そろそろくーちゃんが来るかな、と思っていたのだ。

「和葉!戸棚に入ってるどら焼き食おうぜ!」

「もー、またくーちゃんったら。」

「俺はお菓子しか見てないぞ!」

「この前瑞樹にあげたチョコ、寝室にあるって知ってたじゃない。」

「あれは魔力を放ってたからな。部屋越しでも分かった。」

「え、魔力?」


なにそれ、知らない。


「どっかの魔女か悪魔が作ったんだろ。あいつらは余計なことしかしないからな。なんかうぜー感じの。『あーん』がいいって言ったのもあの魔力だぞ。だから俺は食べなかった。」

くーちゃんはどや顔をした。

「え、ちょっと待って、ほんとに魔力入ってたの?」


確かにくーちゃんがあの美味しそうなチョコに反応しないのはちょっと変だなとは思っていたけど。


「ああ。死にゃーしねーよ。それよりどら焼きだ!」

早く!早く!と急かすくーちゃんにどら焼きを出してたら話は流れちゃったけど。


…ほんとに恋が叶うチョコレートだったりして。ズル、しちゃったのかな。前からいいなって思っててくれてたとは聞いてるから、まったく興味がなかったわけじゃないんだろうけど。


あれからあのチョコの店を探そうとしたのだ。でもパッケージは瑞樹が捨てちゃったって言うし、デパートのバレンタイン特集のサイトはもう消えてる。今さら蒸し返しても…と和葉は及び腰になっている。


魔力がなくなったら瑞樹は私のこと好きじゃなくなっちゃうのかな。好きって言ってもらえなくなったら悲しい。

でも自分から好きって言ったことはない。好きって言われたらうん、て答える。


ごはんは相変わらず一緒に食べてるが、特に進展はなし。距離は近くなったけど、手を繋ぐくらい。和葉はこれが恋が冷めたからなのか、そういうものなのか、判断がつかない。でももし魔力にかかっていたのだとしたら、今先に進むのは怖い。その後に冷めちゃったら?


考え過ぎて頭がぐるぐるしている。


「…男女がプライベート空間にいるのに何にもしないってどう思う?」

「興味ないんじゃない?」

携帯をいじりながらゆうちゃんが答える。

「そうなのかな。」

「男は女と目が合った瞬間に判別してるらしいよ。」

「判別?なにを?」

「そういう対象になるかどうか。」

「……」


黙った和葉を訝しんで、ゆうちゃんが顔を上げる。

「え、まさかなんにもしてないの?隣同士だよね?」

「……」

「いや、まあこういうのは他人と比べるものじゃないから。和葉のペースで、ね?」

ゆうちゃんが焦ったようにフォローする。


やっぱり魔力で底上げされてるからかな。


「デート!デートは?してるんでしょう?」

「この前この近くのタイ料理に行ったよ。パッタイ美味しかった。」

「いいじゃん、いいじゃん!他には?」

ゆうちゃんが明るく聞く。


「…行ってない…かな?」

和葉は少し考えたが、これといって思い浮かばなかった。


そういえば、だいたい家にいるかな。


ゆうちゃんは和葉の両肩をがっと掴むと、真剣な顔で言った。

「和葉、デートしなよ。早々にマンネリになるよ。」



デート。デートかあ。そうだよね。


お揃いのエプロンは買った。

瑞樹用のお箸も買った。


私なりの『これからも一緒にいよう』のサインなんだけど、伝わらない…かな。


だって初めてなのだ。どうしたら正解かなんてわからない。


この先に進みたいのか、恋が冷めるまで待てばいいのか。

体の一部が触れるとびくってなって、気まずい空気が流れる。


だからくーちゃんが来てくれないかなと思って、最近はくーちゃんが好きそうなお菓子を常備してる。なんかホッとするっていうか。バレンタイン前に戻ったみたいで安心するっていうか。


あいかわらず9時前におやすみだしなあ。

どうしたらいいだろう。

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