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ピンポーン
夜はインターフォンの音もよく響く。
うーん、出ないかな。私なら具合悪かったら出ないかな。
もう一度押そうかどうしようか迷っていると、「…はい」というしゃがれた声がスピーカーから聞こえた。
「あのっ夜分遅くに申し訳ありません。隣の清水と申します。具合が悪そうだったので食べ物を持ってきたのですがっ。手作りではなくて、市販のものです!」
市販のあたりを強調する。危なくないですよ、と言う気持ちを込めて。
「……」
「……」
「やっ…」
「…ありがとうございます。」
やっぱりなんでもないです!と言いかけたところで、先ほどよりもしっかりした声が聞こえた。
「えっあっお粥と!飲み物が入ってます!紙袋をドアの前に置いておきますので。もしいらなかったらそのまま置いておいてください。明日回収します!」
言い終えるか否かというところで、ダッシュで自分の家に戻る。
すっっごく不審者っぽい、私。
その日はどよーんと落ち込みながら眠りについた。
お隣さんは無事回復したようだ。数日後、ポストに『隣の佐々本です。大変お世話になりました。お礼はまた後日させてください。』と書かれたメモが入っていた。