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恋が叶うチョコレート  作者: 上条ソフィ
ギブミーチョコレート
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7

年初め、瑞樹はため息を付きながら出社した。


とりあえず冬の間は長袖で隠れるとして、夏になったらどうすればいいんだ、コレ。このままだと思春期の心を持った青年(中年に移行中)になってしまう。別に痛くはない。ただ時々顔があるところがムズムズとするくらいだ。心理的にイタイというのは充分にある。


オフィスでは年末年始に帰省や旅行に行った人たちが、お土産を配って歩いている。瑞樹も饅頭を配った。

「佐々本さん、クッキーどうぞ。」

スノボに行ったらしい女子社員が、瑞樹にクッキーをくれた。

「サンキュー。」

朝忙しくて何も食べていなかった瑞樹は、個包装を開けてクッキーを取り出した。ふわりと香るココアの匂い。


ココア。…ココア?…まて、ココアってチョコレートの仲間じゃなかったっけ。チョコを溶かすとココアになるんだよな?


口に入れる寸前で思いとどまった瑞樹は、そっとクッキーをデスクに置く。落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせながら、パソコンを立ち上げる。偉大なる検索エンジン様によると、カカオ豆を焙煎して潰すとカカオペーストになり、これに砂糖とミルクを足して固めるとチョコレートになる。カカオペーストからカカオ脂を抜くとココアの原料になる、そうだ。


…つまり、ココアもチョコも原料は同じだってことだよな?


あっぶねえ。ギリセーフだった。

じゃあこのクッキーは食えんな。同僚にやろう。あいつはクッキーをくれた女子に片想い中だからな。


気を取り直して、瑞樹は缶コーヒーを買おうとした。


待て、コーヒーはチョコと同じなのか?どっちも豆だよな?


携帯を出して検索する。コーヒー豆はアカネ科で、カカオ豆はアオイ科なので全く違う植物らしい。


違う植物らしいけど…姉ちゃんはそのこと知ってるんだろうか?


黒いから一緒じゃない?とあっけらかんと言っている姿が目に浮かぶ。


魔女の呪いは事実を元にしていない。言ったもの勝ち、定義はいくらでも自由にできる。魔女がカラスは白だといえば白なのだ。だから魔女の呪いはやっかいなのだ。


瑞樹は、泣く泣くコーヒーを諦めた。


そう考えると世の中チョコレートだらけだな。チョコレート菓子だけじゃなくても、パンとか、飴とか、飲み物とか。


何度か菓子を食べようとして、その度にこれは食べられるのかと考えた末、めんどくさくなったので甘いものは一切口にしないという結論に至った。


瑞樹はふと、学生時代に覚えさせられた「It’s better to be safe than sorry. (用心するに越したことはない。)」ということわざが頭に浮かんだ。英語のまっつん先生、俺は今、人生で初めて英語を使いこなしたよ。

『いいか、セーフは安全って意味だ、ソーリーはごめんなさいじゃなくて後悔するって意味だ。だから安全でいる方がいい、後悔するよりは、てことだぞ。お前ら、安全第一だからな!』と俺ら男子生徒を見て妙に力説してたなあ。それを見て女子がくすくす笑ってたなあ。安全、確かに大事だな。

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