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恋が叶うチョコレート  作者: 上条ソフィ
恋が叶うチョコレート
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年末からバレンタインチョコレートが売り出される昨今。和葉は正月明けの気分を引きずったまま、ふらふらとデパートのバレンタイン特別催事場に引き寄せられた。


和葉かずははほうっとため息をつきながら辺りを見渡す。


義理チョコ、本命チョコ、自分ご褒美チョコ、お世話になってますチョコ。


口実はどうであれ、世界中の美味しいチョコレートが集う祭典であるというのが和葉の認識だ。


どれがいいかなー?狙うはもちろん自分チョコ。ちょっとお高めの!普段売ってないような!テンション上がるやつがいい!


中をぐるっと見渡すと、和葉は一店のチョコレート店に目を奪われた。


わあ!これすごい美味しそう!


シンプルな黒い小さな箱に収められた4粒のチョコレート。形はスクエアで角が丸くなっている。トッピングはなし。照りが美しい。


和葉はすうっと息を吸い込む。


ああ、高いチョコレートの匂いがする。チョコレートは発酵食品。安いカカオパウダーとは違う本物のカカオの匂いがするわ。

クッキーとかマカロンとかじゃなくて、ザ・チョコレート。これぞ私の求めていたもの。


「当店の一番人気のチョコレートですよ。『恋が叶うチョコレート』です。」

「へえ、そうなんですね。美味しそう。」

和葉はチョコレートから目を離さずに答えた。


『恋が叶うチョコレート』という部分はスルーだ。私は美味しいチョコレートが食べられればそれでいい。


「はい、ぜひ彼の口に入れてあげてください。『あーん』が一番望ましいです。」

「はあ。」


まあ、口に直接チョコを放り投げられる関係ってそもそもだいぶ親しいよね。


「一度にたくさん食べると効きすぎてしまうので、用法用量をお守りください。」

「なるほどー。」


薬のCMか。

よし、他も見よう。


後でまた来ます、と言おうと顔を上げると、彫りの深いイケメンのパティシエが目に飛びこんできた。


いっけめん。これはあれか、女性客を釣るためのモデルか。


透き通る白い肌。プラチナブロンド、目は深い緑。白い歯が光っている。


こっ心の準備がほしかった。いきなりのイケメンは心臓に悪すぎる。


「や、日持ちしなそうだからまた来ます。」

和葉は顔を赤らめると、思わず後ずさった。

「お嬢さん、賞味期限は恋の期限だよ。」

イケメンに間近でウィンクされ、白旗を揚げた和葉はチョコを買った。まあ自分で食べるか、お隣さんにあげればいいよね、と。


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