表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/86

八十四  大国兵士の悲劇


 英介は地下施設を出て倉庫の中からバイクを出していた。五十年前のアナログ

のバイクで藻の影響のあるポイント(点火時期)は、テープで巻いてあった。

何回かキックしてエンジンが掛かった。


英介の地元は東京から八十キロ程離れた処で十分帰れる距離だった。道路上は

壊れた家の瓦礫や海藻が落ちていて避けながら走った。


途中に以前住んでいたアパートと大国の工場もあり様子を見に行った。


大家の家に着くと息子夫婦が出て来て親は2人とも亡くなったと話した。


仏壇の前に案内して貰い白い骨壷を見つめた。


「如何して? 避難施設に入って無かったのですか?」


「二人とも熱中症で亡くなりました。施設は無理でした。国民点数も低く、地元

の施設も子供や若者が優先で入れませんでした。私達も施設に入所が決まって

いましたが親を見捨てておけずアパートに一緒に居ました。大国の工場で

耐火シートが余って売りに出でいたのでそれを買い、部屋中に貼りました」


「それだけで大丈夫でしたか? 息子さん達も」


「えー 電気も少し来ていたのでエヤコンが少し動き私達はぎりぎりで

助かりましたが親は体力が無く駄目でした」


「成仏して下さい」と骨壷を見つめて線香を上げた。


そして大国の工場の状況を聞いた。


「大分前に驚くような爆発があり工場の宿舎が壊れた。ほぼ全壊状態で酷かった。

瓦礫の量が多く、地下から声がして大国人がいると分かった。しかし、廻りの

住民は敵国なので片付けなかった。臨時政府での戦闘が終わった時に大国の兵士

を捕まえるために宿舎の残骸を片付けにきたが、臨時政府を爆撃した大国の

戦闘機が飛来して瓦礫の下の地下を爆撃した。それで中にいた大国の兵士は

死亡した。首相が亡くなり片付ける機会を失い、その間に雨が降り続けて

地下室が水で溢れ腐った死体が流れ出て酷い状態だった。新政府が出来ても

暫くは何もしなかった。長く雨が降り続き死体は殆ど白骨化した。その頃に

やっと警護隊が来て死体を地下に入れ土を掛けてコンクリートで蓋をした」


英介は地上は酷い状態だったと感じた。


英介は工場の前でバイクを止めた。廻りの塀は所々に壁が外れているが

倒れている処は無かった。でも全体は藻で覆われ緑色だった。


敷地内には建物は無く。宿舎のあった処の床が新しいコンクリートで

白く光っていた。


そして、大国人の戦士の墓標と書かれた石碑が立っていた。


この下に大国人の大勢の兵士が眠っている。


英介は敷地に入り天授教から買った観音像を墓標の横に置いた。


端正な観音像の顔を見ていると、ここに眠る兵士の悔しさや辛さを包み込んで

くれるような気がした。


十日間だが宿舎にいた英介は少年のような作業員が何人もいたのを覚えていた。


彼らも此処の下にいる。国の指導者の一声で異国で無縁仏になった。子供の親の

心情を思えば心が痛んだ。彼らは倫理ある敗者だと思えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ