八十一 自然の脅威
大国の指導者は九州沖と相模湾沖の艦船に空爆を命令した。
諜報員によると爆撃機は地下施設専用の爆弾を積み首都には二十機、九州方面
には五十機が空母から出撃したと報告が入った。
その報告を聞いた渡辺は諦めた。
地下施設専用の爆弾の威力は知っていた。地下施設が破壊されると招集した兵士
が足止めされ首都防衛も愚か地下政府の存在も危うくなると思わず目を閉じた。
首都を目指した爆撃機二十機は爆音を轟かせて海上五百メートル程の高さ
を飛んでいた。
この日は珍しく晴天で対空ミサイルなどもなく悠々と飛んでいたが小刻みに
羽が揺れだした。
パイロットは不安に思い計器を見たがデジタル表示の数字が変化し始め針は
左右に揺れていた。
そのうち大きく揺れて失速し機首を下に向けて次々に東京湾に墜落した。
九州沖も同じ状況だった。
計器に藻が付いて操作不能になっていた。艦船も同様だった。操作出来る状態
ではなく勝手に動き艦船同士が衝突していた。
途切れ、途切れにテレビの気象情報が入って来た。台風が次々に発生して九州沖
と太平洋沖を通過すると風速百メートル以上で上陸すると地上の木造の建物は
殆ど破壊されると伝えた。
台風は速度が速くその日の夜に九州沖を通過しコントロールを失った大国の艦船
は衝突し大半が海中に沈んだ。
また二時間おきに台風が通過して三つ目の台風が通過した時には、艦船は一隻
も残っていなかった。相模湾も同じだった。
爆撃機の計器の故障の連絡を受けた艦船は太平洋上に避難したが、途中で操作
不能になり台風の直撃を受けていた。
艦船の全滅を知った大国の代表は核兵器によるものと判断した。
その時は通信の計器が藻に侵され正確な情報は入って来なかった
そして、最後の手段の核弾頭の使用を決めた。
首都へ向けて十本の核弾頭が発射されたが失速して近くの海上に落ちた。
世界中の半導体を使用した機器は故障した。原潜の艦長も新政府との連絡が取れ
なくなり焦って九州沖に各ミサイルを発射させたが海中に没した。




