八 巨大地下施設
英介は期限より一週間程早く仕事が終わったので業者Aに連絡した。
ちょっと早いけどと話したが、早いに越したことはないと直ぐにやって来た。
A3の用紙にプランをプリントして渡した。
業者は内容を確認して頷いた。
「さすが昔にマンションのプランをしていたことだけある。無駄な空間が無い」
と珍しく誉めてくれた。
「なあーに事務所に勤めていた若い頃で随分と昔の話だ」
「実は・・・・」と業者Aは途中で言葉を止めた。
やはり誉めるのはおかしいと思った。何かあるのだろう?
「実はこのプランとか平面図は極秘事項で行政からこの前に念を押された。誰にも
話してないよな?」
「話してないよ。極秘だったら最初から話せよ」
「最初から極秘なんて言うと引き受けてくれないと思ったから」
「大丈夫だよ。私も行政の設計の仕事は結構した。設計が終わるまでは何時も
極秘事項だった」
「良かった。実は又依頼したい事がある。平面図のコア部分のプランも
して貰いたい」と言ってA3判の製本(図面)を差し出した。
「えっ、 五十階もあるから無理だよ」
「五十階だけどパターンは十タイプだけで配置する空間や部屋は決まっている。
その資料も渡すから、それにうるさいように建築基準法と言うがその法は無視
してくれ。分かっているが極秘で」
業者Aは報酬の振り込み先の口座番号を聞いて帰って行った。
英介は製本を開いた。
縦横二百メートルの正四角形のコア部分は幅十メートルの通路で囲われていた。
一辺に十機のエレベーターがあり四辺で四十機もあった。
階段も四か所あり。コア部分の中心に四機のエレベーターがあり非常用と書かれてあった。
交番と消防施設がやはり四か所でこれが各階の基本だった。
それに行政の施設、学校、幼稚園、保育園、託児所、病院、工場、店舗などを
五十階の内の何階かに配置する。街に近い形態だった。
図面を開いていくと地階は六百メートル角の大きさだった。
B1階は機械室で、B2階は階の高さが高く食料庫と貯蔵庫で二層になっていた。
B3階は汚水槽、貯留槽、ポンプ室だった。
地上に一番近い住居階が五十階で、一番下が一階との表示だった。
そこから下にB1・B2・B3となっていた。
五十階との話だったが五十一階の図面があった。
それはコア部分が一層上に伸びているだけで中心にある非常用エレベーターを
挟むように二本の線が突き抜けている。
その線の上にリニアと書かれていた。
非常用エレベーターは上に向かって矢印があり地上へと描かれてあった。
これは地下に設置する街だと思えた。
この前、訪ねて来た同僚のリニアの話が現実見を帯びてきたが、この街は規模の
大きさから予算的に実現するのは不可能に感じた。
政府の国民点数制に関する③の政策が発表された。
それは地域性で住所が東京二十三区内で百点、市町村の人口が百万以上で七十点、
五十~九十九万まで六十点、四十~四十九万まで五十点、三十~三十九万まで
四十点、二十~二十九万まで三十点、十~十九万まで二十点、十万以下が十点だった。
但し、市街地以外はマイナス十点をする。
この発表で国民点数が益々馬鹿らしく思った国民は多かった。
暫くして、行政から(貴方の点数は合計五十点です)の封書が英介に届いた。
田舎なので地域性は十点だった。