七十四 避難施設の爆発
大国の兵隊は一人ずつ素早くタラップを降りて行った。全員が入り終わると
菊池はまた携帯で何処かに連絡した。
後で分かった事だが設備のメンテ要員の一人が大国人で菊池の指示を受けていた。
少しのあいだ静寂が続き、突然ドーンと大音響と共に避難口より閃光と炎が
噴き上がった。
物凄い地響きがあり、上で待機している兵士達のコンクリート床も吹き飛び、
兵士達も空中に飛ばされた。
菊池は酷く驚いて暫く固まっていたが、廻りの状況を把握して笛を吹いた。
残った兵士は八百名程だった。笛の音を聞き分けて兵士は隊列を
作り敷地内に散った。
祐介は地下施設にいる上官に連絡して門を地上一メートルの処まで下げて貰った。
大国軍の兵士はそれに気が付き激しい撃ちあいになったが前面に据え付けられた
数台の重機関銃の重低音が響き、大国兵士が大勢倒された。
果敢にも何人かが手榴弾を投げて来て重機関銃が二台壊されて数十人が倒れた。
大国軍の兵士は塀の近くに展開して五十人ずつの集団に分かれていた。
警護隊の乗った地上への出入口の箱が上がって来た。
上がりきらない内に一斉射撃を受けドアが開かない内に倒れる警護兵が
大勢いて中は混乱した。
祐介達は援護したが、出入口の箱から降りられたのは五十人の中で数人だったが、
廻りから集中攻撃を受け全滅した。
祐介は部下に手動の地対地ミサイルをトラックまで取りに行かせて、
上官には暫く、出入口の箱から出て来ないように伝えた。
首相と地下施設の住民は先程の地響きに驚き動揺した。
そして、地上のカメラで状況を住民に放送するように指示した。
英介のいるモニター室に放送局のカメラマンが来た。どの監視カメラが
良いかと聞かれた。
「二台だけ門を監視しているカメラが左右上下に動かせてズームもできる」
「如何して? 他の固定カメラでも中継したいが?」
「下は写せない!」英介の言葉に、カメラマンがモニターを見ると、千切れた
手や足、内臓の出た胴体、ヘルメットを被ったままの首などが転がっていた。
思わず目を背けたく光景だった。
「分かりました」とカメラマンは門の監視カメラに接続した。
放送局は大国軍に攻撃されている事と先程の爆音は大国軍の自爆で地下施設には
影響ないと伝えた。
門の外には臨時政府軍が応援に来ていると状況を写した。
円華と女優Sも放送を見ていた。
臨時政府軍の隊長の顔をアップした時に円華は驚いた。
「祐介さんだ!」思わず口から名前が出てしまった。
命を掛けて、私達を助けようとしている。自分の地下施設の部屋も譲ってくれた。
祐介への好意は初めて会った時からあった。女優になるため事務所の方針に従い
祐介への気持ちを振り切ったがまだ未練があった。その事務所の偉い人達と
政府は私達を捨てた。
それなのにと胸が痛み思わず泣いてしまった。
「この人が部屋を紹介してくれた人? 円華さんの知り合い?」と女優Sは聞いた。
「そう」と円華は答えて口を噤んでしまった。




