六十七 首相の決断
地下施設の首相は防衛庁の幹部、原潜の艦長、調査部の幹部を集めて
最終会議を行った。
「災害が過ぎた後の事を話し合いたい。実は総裁から恒星の接近での地表温度は
高くて百度との連絡があった。国連との絡みもあり、国民には発表できないが、
大国も自分達の観察で百度と判断したらしい」首相は話した。
続けて「そして、大国に居る諜報員から深刻な情報がある。大国の海軍の艦船
が河川で耐火シートを何重にも貼られたドーム内に格納されている。空母四隻、
護衛艦二十隻、イージス艦五隻、輸送船六十隻の大船団で何を目的か皆さまも
分かっていると思います。我が国を占領するためです。そこで、我が国の艦船
が如何なっているのか知りたいのですが?」
「三百度を想定していたのでゴムなどが痛むので全て分解してあります」
海上担当の防衛庁幹部は答えた。
「復元するにはどの位掛かります?」
「早くても十カ月位は掛かります」
首相は気落ちした。
「間に合わないな。戦闘機も分解してあるそうだが早く修復できそうですか?」
「そうですね? 急げば三カ月程で復元できますが、飛行場からの情報だと暴徒
と大国の兵士が滑走路を破壊して、少数だが大国の兵士が武装して飛行場の廻り
に展開している。駆除して飛行場を修理して戦闘機を復元するのには半年は
掛かります」航空担当の防衛庁幹部は答えた。
「戦車、装甲車の車両も四カ月ほど掛かります。砲なら一カ月で復元できますが
駐屯地は臨時政府が管理していて民間人なので復元は難しいです」
陸上担当の防衛庁幹部は話した。
「そうか? 肝心な事を見落してしまった。元自衛隊員は全て全国の地下施設の
警護隊として散らばっていて各兵器の復元はすぐには不可能だと言うことだな」
残念そうに話した。
「諜報員からの情報だと大艦隊は災害が過ぎて一カ月後に大国を出航するらしい。
一週間で九州の沖のある地点に集結し、そこから、四国、大阪、東京、東海、
東北、北海道、北陸に向かって艦船を分け攻撃する。それに合わせて日本にいる
大国の兵士が動き出す。その前に地下の政府と臨時政府を攻撃して無政府状態に
する計画らしいです」調査部の幹部は伝えた。
「大国の目的は日本を占領して属国にする。大国の廻りの国も同じ状況に
置かれている。この災害を機に領土を広げようとしている。災害が過ぎたら全国
に展開している元自衛隊員を首都に召集する。総勢五万人程になるがどうか?」
首相は尋ねた。
「大国の上陸する兵士は三十万ほどです。その内十万以上は首都に上陸するので
占領される可能性が高いと思います。それから、ゲリラ戦になりますが良く
持って1年です。後は民間人の兵士の数次第です。地下に籠り抵抗すれば少し
伸ばせますが、問題は食料がなくなる事でしょう」調査部の幹部は話した。
「この状況では国民に属国に成るか否かは聞く事が出来ない。この事は十年前
から想定していた。だから、原潜を作り核弾頭を積載させた。最悪の場合は
九州沖の大国の艦船の集結地に核ミサイルを打ち込んで欲しい。それが最終手段
だと考えている」首相は沈痛な顔をして話した。
「えー」一同は驚いた。
「それをしたら、首都に核弾頭を打ち込まれますが?」原潜の艦長は尋ねた。
「分かっています。首都に撃ちこまれたら大国の首都にも原潜から
撃ちこんで下さい」
「それではきりがなくなり、お互い焦土に成ります」原潜の艦長は答えた。
「地下施設は核にも耐えられ換気設備も耐放射能仕様となっている。食料も
二年程ある」
「でも地上の人達は? 臨時政府は? 放射能は如何するのですか?」
防衛庁幹部は聞いた。
「地上の人々は、地表温度三百度で覚悟を決めて諦めていた。臨時政府は地下
にシェルターを作ってある。それに希望的観測だが科学者によると地表温度
百度以上が長く続くのでモンスター級の台風が発生する。風速百二十メートル
以上で連続して発生するらしい。核弾頭も軌道を外れ放射能も吹き飛んで
しまう。大国の指導者にもし東京に核を撃ちこんだら大国の首都にも撃ちこむ
と伝えてある。出来るだけ避けたいが一か八かになってしまった。船団に
撃ちこむ時は私が責任を持って指示を出します」首相は話して会議は終えた。
暫くして原潜六隻は太平洋に出航して行った。




