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六十五 天授教の教祖


 災害まであと一カ月になった。英介達のメンテナンス要員に耐火服が支給された。

耐火温度二百度で二時間用だった。


三百度になる最接近時の一週間は外には出ないのが前提だった。


しかし、酸素ボンベを背負って耐火服を着て動くことはかなりの重労働で年寄り

の英介には無理だった。


武内に事情を説明して恒星接近時の一カ月間は勤務を外して貰うことにした。


そのためリーダーを今の副リーダーに譲った。

英介はモニターを担当することになった。


警備隊には三百度で二時間の耐火服が支給されたと聞き、英介は武内に尋ねた。


「二百~三百度で戦う相手は暴徒ですか? その温度では暴徒は生きていない

のではありませんか?」


「警備隊が戦う相手は多分大国の兵士だと思う。大国資本の工場で耐火服や

耐火シートを製作していた情報は入っている。これはメンテナンス要員の人

には秘密にして欲しい。動揺しないようにするために」


英介は大国の事は少し関わっていたので理解していたが、災害が去って又災害

が来るようで大変なことになったと思った。


暫くして、英介は武内に呼ばれた。秘密通路に人を迎えに行くように指示された。


初老の男と女性二人で素性は教えて貰えなかった。片道五キロ程の秘密の通路で

出入口のモニターには白装束の三人が写っていた。

英介は衣装に驚いたが素早く三人を中に入れた。


初老の男は何処かで見た事があったが思い出せなかった。その男には威厳があった。


「施設まで案内します」英介は遠慮気味に言った。


「宜しくお願いします」以外に穏やかな言葉が返ってきた。


女性の一人が英介を観察するように見た。


「おじさんは警護の兵士ではないですね?」


「そうです。私はメンテナンス要員です」

英介の外見、動作などを見て判断したようだった。


普通のお付きの女性では無いな? と感じた。


「警護の兵士が如何して来ないのですか?」


「この通路は極秘で、警護の兵にも知られてはいけないので私が来ました

「おじさんはどうして良いの?」


「この通路は知っている人間しか案内出来ない、私は建築担当でこの通路を

設計したから」


「分かりました」女性は渋々納得したようだった。


一時間と少し歩いて施設に付いた。倉庫に出て外に人が居ない事を確認して

五十階の通路に四人は出た。


「あのエレベーターに乗り九階で降りて下さい。東側の端が5LDKになって

いますので後は案内板で確認して下さい」英介はカードを渡して伝えた。


「首相に会いたいが? 何階にいるのか?」


「えー それは教えられません」


「私は首相の知り合いでお願いしたい」


英介は困って武内に連絡した。暫くすると武内が来て三人を首相

の処へ連れて行った。


英介は後であの男の正体が気になり武内に聞いたが、首相の親しい人の一人で

あり地上で工作をしていた。二人の女性は警護の兵士だと、それ以上は

教えて貰えなかった。


暫くして、英介は天授教のパンフレットに載っていた教祖に似ていると気が付いた。


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