六十 暴徒と抗争
午後は英介のチームがメンテナンスの担当で、二十五名を率いて
非常用エレベーターに乗った。
出入口の箱がせり上がり地上階に出てきた。モニターで外を確認してドアを開けて
一人ずつ出て行った時。
先頭のメンテ員が(カキーン)と鉄パイプでヘルメットを殴られて
その場に倒れた。
男は次に英介に鉄パイプを振り上げ向かって来た。
すでに安全装置は外してあった。驚いて銃を構えず反射的に撃ってしまった。
単発仕様になっていた。
(パーン)と音が響いて男が腹を押えて蹲って前に倒れた。
五十歳位の屈強な体をした男だった。
すると、出入口の箱の後ろに隠れていた男二人が塀の方に逃げて行った。
その方向を見ると、塀に一メートル角の穴が空いていて其処から侵入したらしい。
穴を通って外に逃げて行った。
英介は大きな台車を手配して一人を穴のところに待機させ二人を率いて塀の内側の
階段を上り塀の外を恐る恐る見た。
穴の直ぐ下には高い足場が組んであった。
足場の床には削岩機が置かれてあった。
足場の横にはコンプレッサーを積んだトラックが停まっていた。
その後ろに四十人程の暴徒が横に並んで此方を見ていた。
手には鉄パイプなどを持っていて数人が猟銃を持っていた。
何やら、騒いでいるが何を言っているのかは聞こえなかった。
銃声がして塀に弾が当たる音がした。大粒の雨が降るような音で散弾だった。
撃たれたと思い憤慨した英介が地面に向かって威嚇射撃をした。
暴徒がザーと後ろに下がり又騒ぐ、英介の差別する悪い性格が出てきた。
あいつらは暴徒だ! 「大人しくしていれば良いのに逆らうとこうなる」
トラックのコンプレッサーに3発の銃弾を撃ち込んだ。(プス)と音を出して
コンプレッサーが停まった。
一緒にいた副リーダーに無駄な発砲は禁止されていると忠告されて我に帰った。
台車に腹を撃った男を乗せて門の小扉から外に出した。
門は厚いステンレスで作られていて酸素でも穴を開けるのは無理だった。
門と塀の頂部は有刺鉄線があり梯子を掛けても乗り越えてくるのは無理だった。
唯一、塀の一部が普通のコンクリートなので穴を開けられた。
暴徒達は撃たれた男を連れて引き揚げて行った。男はもう意識が無いようだった。
英介は他のメンテ員に塀の点検をさせた。
武内に状況を連絡して塀の外部の処置を頼んだ。
メンテ員は塀の外の作業は禁止だった。
暫くすると、警備隊十人程がやって来て銃を構えながら門の小扉から
外へ出て行った。もう暴徒達は居なかった。
足場に登り穴を鉄板で塞ぎビスで止め始めたので、英介は高強度コンクリート
を手配した。
警備隊は鉄板を取り付けると足場を引き倒し解体した。
そして警戒しながら戻ってきた。
英介は内側から穴を高強度コンクリートで埋め蓋をした。
英介は自分が撃った男の生死はそんなに気にしてなかった。
それは今の日常が戦闘を意識していて次は自分が撃たれると覚悟しているからだった。
でも、男も死を目前にして色々な事情があったはずだった。
英介と副リーダーは武内に報告に行った。
「英介さんは暴徒を銃で撃ちました。相手は鉄パイプしか持ってなく規則違反
で処分が必要です」副リーダーが訴えた。
「あの時、撃たなければ私も殴られて大怪我をしていた。あの状況では仕方
が無かった」英介は弁解した。
その時に電話が入り用件を聞き武内は電話を切った。
「殴られたメンテ員は重傷で暫く入院が必要だそうだ。英介氏の発砲は仕方
が無かった。それに徐々に増える暴徒に対して見せしめになったと思う。暫くは
来ないだろう」武内は話した。
「死ぬのが分かっている暴徒に見せしめになるのですか?」副リーダーは反論した。
「今死ぬのと、一年後に死ぬのと君ならどちらを選ぶ? 一年後に状況も変わる
かも知れない。だから見せしめになると思う。それから、監視カメラが門にしか
設置していないので、今日のような事が起きた。再発を防ぐ為に塀の廻りに
五か所ずつ、計二十か所のカメラを設置するので、暴徒が怪しい動きをしたら
直ぐ対応して欲しい」
暴徒の数は半分程になり暴徒は足場を設置するも威嚇射撃をすれば逃げて行く状況
を繰り返していた。




