四十六 英治の自慢
英治は何回も円華の事務所に連絡したがスケジュールが開かないと断られていた。
早く海底マンションの説明をしたかった。
特にマンションからリニアに乗って全国何処でも行ける事など教えたかった。
そして、余りにも連絡が付かないのでインターネットで調べた。
円華は映画の撮影中で東京にはいなかった。漫画家と円華の繋がりを調べた。
円華がまだ脇役の頃に漫画家の作品がアニメになり主人公の声優で色々揉めていた。
たまたま、漫画家が円華の出演するドラマを見ていて声が気に入り推薦され
声優をした。それがきっかけで売れたと分かった。
会社へ行くと副社長から話があった。漫画家のキャラを使ったゲームは採算が
やっと取れる状態だったと、まあ赤字に成らなかっただけでも良かったと思った。
二か月位経った頃、漫画家から連絡が入った。
前と同じ場所で出席者は円華を女優Sだった。
四人なので前よりは円華と接触出来ると考えた。
英治は前よりも遅く出掛けてギリギリに着いた。円華と女優Sは既に来ていて
座っていた。
英治は椅子に坐ると早速カタログを見せた。
美しい海底の写真と大規模なマンションの断面と海底リニアがイラストで書いて
あった。三人は目を輝かせて見ていた。
「これリニアですね? 本線と繋がっているのですか?」女優Sが聞いた。
「そうマンションの最下層から直接乗れて全国のどこにも行ける」
「すごいですね。でもこんなに深い海底だと光が届かなくて真っ暗で景色が見え
ないのではないですか?」と円華は聞いた。
「海底に照明を幾つも置いてあるので綺麗に見えるそうです」
「無駄な設備ですね」と思わず円華は言ってしまった。
「えー 無駄?」英治はおもわず聞き返した。
「すみません。避難施設だと噂があったので思わず言ってしまいました」
「ああー 地震とか核とかより身を守れるそうです」
「で、社長さんのマンションの間取りは?」と女優Sが聞いてきたので、
図面を見せた。
「あれー 普通の3LDKと変わらない?」
英治は少し腹が立ってお前の稼げる金では玄関も買えないと言いたかったが
前回で女優Sの性格は分かっていたので、そこでむきになってもまた笑われる
と思い黙っていた。
「引っ越しなどの荷物は何処から入れるのですか?」と漫画家が聞いた。
「地上からエレベーターで入れて海底のリニアでマンションに運ぶ。貨物専門
のリニアがあり、片道十キロの距離なの五分位で着く」自慢げに英治は答えた。
「この海上に向かっている細い通路のような物は何ですか?」
漫画家は断面図に指をさして聞いた。
「非常用通路と給排気用のスペースです。海上に浮き島風の港があり船が泊れる
ようになっている。海面の上下に合わせ伸縮出来る構造になっている。途中の
円盤型の部分は展望所で魚の群れを見る事が出来る」と英治は説明した。
「凄いですね!」皆は感心した。
英治は円華に連絡が付かなかった事を思い出した。
「円華さんは撮影で東京を離れていたようですが大丈夫ですか?」
少し嫌みを含ませ聞いた。
「すみません。丁度撮影の中休みになったので漫画家Kさん頼んで飲み会を
開いて貰いました。それに海底マンションにも興味がありましたので」
「住居の他はどんな施設があるのですか?」漫画家は興味があるようで食い入る
ように図面を見ながら聞いた。
「店舗系ではスーパーマーケット、衣料品、雑貨店など、食事系ではレストラン、
和食、居酒屋など、学校系では幼稚園、小中学校があり建物の中心部に配置して
ある」英治は説明した。
「社長さん、何で系を付けるの? 可笑しい、(では)で良いのに」
言いながら女優Sが笑った。
英治は又この小娘がと思ったが以外と頭が良いので侮れないと感じた。
海底マンションの話は夢があり会話になったが、時間が過ぎるのも早く
飲み会は終焉になった。
英治は最初に円華と飲めれば良かったのが、段々願いが大きくなり
海底マンションで円華と暮らすことが夢になっていた。




