四十一 円華との飲み会
暫くすると、漫画家Kより連絡があった。
契約祝いの飲み会を開くと、出席者は円華とその友達の女優Sと著名人の二人
で計六人だった。円華と話す機会が確実になり英治は喜んだ。
英治は前回と同じ会員制のバーに少し早めに行った。
店に名前を伝えると個室に案内された。
もう漫画家Kは来ていて他の二人と話をしていた。
一人はテレビでよく見る中年の男性の評論家で国民点数に付いてよくテレビで
話をしていた。
もう一人もテレビで見る中年の女性で何かの専門職だった。
英治が入って来ると漫画家は英治を二人に紹介した。
二人の事は知っているでしょうと話し紹介はしてくれなかった。
円華達が来ないので不安になっていると、店の人が案内して若い女性二人
が入って来た。円華は少し小柄で顔も小さく可愛らしさと少し色気も出ていて
英治は直ぐに惹きつけられてしまった。
一緒にいた女優Sはハーフで英治より大分背が高かった。
席は対面に左より専門職、円華、女優Sの順で座り、こちら側は評論家、漫画家、
英治の順で座った。
漫画家は英治を円華と女優Sに紹介した。
「ゲーム会社の社長で英治さんです。今回の飲み会の主役です」
円華は軽く会釈して頭を下げた。
「知っている! このゲーム会社のソフト持っている」と女優Sは喜んで話した。
「今度、私の漫画のキャラでゲームを作るそうです。買ってやって下さい」
と自慢そうに漫画家は話した。
女優Sは買うと話していたが、円華は興味が無さそうだった。
「英治さんは円華さんのファンだそうです」漫画家が話した。
「大ファンです。映画も全部見ました」英治は思わず立ち上がり、緊張気味
に話した。
座っていた英治は金髪で顔も鼻も大きく背が高いと思い込んでいたので立ち
上がった英治の背の低さと緊張の様子を見て女優Sは大声で笑ってしまった。
英治は決まりが悪く坐ったがまだ女優Sは笑っていた。
廻りも苦笑いをしていたので円華が女優Sを窘めた。
「有難うございます。応援、お願いします」と笑顔で答えて嫌な空気を和ませた。
円華は劇団の下済み時代で色々な境遇の人を見て来たので英治の不細工さと
スタイルの悪さは気にならなかった。
女優Sは美形とスタイルの良さで中学生の頃からモデルをしていた。
高校を卒業するとバラエティ番組に多く出演し有名になっていた。
円華とは違う環境だったが円華と女優Sは仲が良かった。
それは円華の性格だった。本来は思った事や感じた事など表現したいけど相手の
地位とかを考えて行動するようにと事務所の教えもあり思った事を表現できる
女優Sが好きだった。
円華は頭が良かった。円華が著名人と飲む事も彼らの経験、知識を吸収してそれを
自分の演技に反映させるためだった。
しかし、円華が著名人と飲みまわるのも金のある青年実業家を捜している
ためだと英治は勘違いをしていた。
俺のことを直ぐ笑うような軽い女優Sと仲が良いのも同じ部類だと思っていた。
「社長さん。年収はどれ位あるの。IT関係は凄く儲かるでしょう?」
と女優Sは悪びれず聞いた。
「辞めなさい。そんな事を聞いたら失礼でしょう」と円華は釘を刺した。
英治はやはり年収かと思った。
「良いですよ。二億を少し超えるだけです」と遠慮しているふうに言った。
「凄い! 二億以上だって! 社長さん独身?」女優Sがはしゃいで聞いたので、
英治はそうだと答えた。
この女優Sは俺の事を名前で呼んでいない。俺には興味も無くこの場を盛り
上げているだけだと感じた。




