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三十三 四角い穴・爆破


  三日ほど経った頃、総監督の渡辺がやって来た。どうしても首相の甥

という肩書で見てしまう。

武内と何かを話してメモを渡して渡辺は戻って行った。


「何かあったのですか?」


「工事現場で事故があり、作業員が1人亡くなったらしい」


「じゃー 労働基準監督署の人が来て色々とうるさい思いをしますね」


「いや、亡くなったのは大国人で、政府の調査部の管轄になるらしい。だから、

書類の提出で済みそうです」ほっとしたように武内は話した。


「死んだ大国人の住所は英介さんがいる宿舎と同じですね」メモを見ながら話した。


「そうですか? でも私は引っ越しましたから」


「何故? 食事も付いて無料で楽だと思ったのですが?」


「規則が厳しく外出も時間指定され行き先も確認された。食事も三十分以内の

制限もあり、一緒にいる大国人と話も通じず不気味で一年も居られないと思った」


「それに見知らぬ日本人と話した時も警備の人間に監視されていた。

あっ、そうだ、その日本人が私に忠告のような事を言った。この現場に入る

大国の作業員同士の会話をこっそり聞いたらしい。言葉は分からないが単語が

理解出来たらしい。それが四角い穴・爆破だったと話していたらしい」


「大国語は難しい聞き違いの可能性もあるが今度の会議で渡辺に話してみます」

と話して武内は工事の管理に行った。


 ある日、武内が工事の管理に出掛けていない時に珍しく菊池がやって来て何故

宿舎を出たのか聞かれた。


息子のアパートが近くにある事と規則が厳しくて自由でないと話すと苦笑いをした。


「誰か、親しい友達は出来なかったか?」


「出来ないよ。年寄でそれに言葉も分からないし」


「誰かと話をしなかった?」


「ああ、宿長と規則のことで、それと日本人の若い男におじさん日本人ですか? 

と話しかけられた」


「それだけか?」


「それだけです。何かあったのですか?」


「いや、会社の上司に理由を聞いて来いと言われて聞きに来た」


英介は引っ越しの理由は宿長に提出する書類に書いてあった筈だと思い連絡が

旨く取れていないと感じた。


暫くして総監督の渡辺に呼ばれた。


武内と共に部屋に入ると会議用のテーブルと椅子が4脚あり、対面に背広を

着た中年の男と渡辺が坐っていた。


座るように促され武内と共に腰を降ろした。


「武内くんから聞いたが大国の工場の宿舎で四角い穴・爆破と話した日本人の

名前は分かりますか?」渡辺は聞いた。


「確か・・・・黒岩だと思うのですが?」


「やはり、そうですか」中年の男は武内と英介に名刺を渡した。

名刺には国の調査員と書いてあり男は続けた。


「黒岩は極秘事項を知ったので殺されました」


英介は酷く驚いて「えー」と声を出してしまった。


「知らなかったようですね。殺したのは大国の諜報員といっても、あの工場

にいる作業員達です。あと黒岩と接触した人間を狙っている。警護の隊員が

前に接触していて命を狙われたが無事だった」


「じゃー 英介さんも狙われると言う事ですか? すぐに引っ越さなければ!」

焦って武内が話した。


「本人が逃げれば、息子さん、娘さんと狙われて犠牲が大きくなる。接触したが

何も聞いていないと思わせて今までと同じように暮して下さい。夜は不安なので

警護の隊員を会社員としてアパートの隣の部屋に住まわせます」


英介は今まで普通に生きて来て命を狙われる事には実感が湧かなかったが危機感

が段々伝わって来た。


「最近、変わった事はありませんでしたか?」


「菊池さんがこの前に尋ねて来て宿舎を出た理由を聞かれました。息子のアパート

が近くにある事と規則が厳しくて自由でないと話した。又若い男と話した内容も

聞かれました」


「どのように話しました?」


「お互い日本人と確認しただけと」


「菊池さんは大国資本のゼネコンの監督でしょう。諜報員とも情報は

交換している。彼が確認に来た事は英介さんを狙う確率は低いと思いますが

万全を期して前に言ったように行動してください。あと一カ月ほど過ぎれば

大丈夫だと思います」


それを聞いて英介は少し安心したが、ある事に気が付いた。


「黒岩の言った言葉を今思い出したのですが、四角い穴と爆破以外に(通路)

とも言っていました。四角い穴は前に武内さんに施工図の事で聞いた温度を測る

穴のことではないですか?」


「それは菊池さんの管理で、各階に八か所で合計四百か所もあり凄い数です」

武内は答えた。


「その穴が怪しいです。中を確認したいが菊池の居ない時に確認しなければ

ならないが? 何時確認すれば良いのか?」調査員が聞いた。


「何時も定時に帰るから、十八時以降と日曜日が良いと思います」


「土曜日の十八時以降に確認しましょう。怪しまれず元に戻すのも時間が必要で

日曜日を予備日としましょう」調査員が話した。


今週の土曜日に確認をする事に決まり製図室に武内と戻って来た。


英介は不安で落ち着かなく施工図も手に付かなかった。


それを見ていた武内は施工図も進んでいて時間もあるので、落ち着いてゆっくり

進みましょうと言ってくれた。


帰りのバスは緊張した。普通に振舞おうとしてもキョロキョロしてしまった。


同じバスで同じ席でほぼ乗っている人も同じだが静かで誰も喋らない。

何時ものことだが余計不安になった。


バスから降りてアパートに帰る途中でコンビニに弁当を買うために寄った。


やはり何時もと違いを感じてしまい、客も店員も大国人に見えてしまう。


アパートに帰って鍵を開けて恐る恐る中へ入った。


誰も居なくて安心したが、今日の夜に襲われたらと思ったら眠れなかった。


次の朝、寝不足気味で英介は現場に出掛けて行った。



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