三十一 襲われた祐介
祐介は上官に頼んで小さめのゴルフバッグを借りて、その中に木刀と暗視眼鏡
を入れてアパートに持って帰った。
それは大国の見張りの目を誤魔化すためだった。
その日から、祐介は昼に寝て夜は起きる生活に切り替えて工場での訓練は中止した。
相変わらず夜はゲームをしていた。
2日ほど経った夜中の2時頃「ガシャ、ガシャ」と玄関の鍵を開ける小さい音
が聞こえた。
祐介は部屋の入り口の袖壁に隠れて暗視装置を付けて木刀を持ち立っていた。
ベッドは人が寝ているように膨らませておいた。
三人の男がドアを開けてゆっくり入って来た。
暗視装置を付けていた。手に持ったナイフが外の光に反射し鈍く光っていた。
二人が部屋の中に入って来て、祐介に対して斜めに背中を向けていた。
三人目は部屋の入り口で待機しているようだった。
喧嘩の経験も無く実戦も無く、祐介は精神的に限界だった。我慢できずに祐介は
木刀を振り上げて二人の首を次々に打った。
男に人は気絶してその場に倒れた。
それに気が付いた三人目の男がナイフをかざして向かって来た。
祐介は木刀でナイフを払い頭部を打った。男は気絶した。
気が動転し夢中になって倒れた男の背中を木刀で叩いていると、
不意に手を押えられた。
「落ち着け」と声がした。国の調査員だった。
素早く気絶している三人の男を連れ去っていった。
祐介は血痕を確認するため電気を付け部屋の中を点検した。
そして、木刀を押入れにしまった。
暫くすると、外に赤色灯の光が見えた。チャイムが鳴りドアを開けると
警察官が二人立っていた。
先程この部屋から(ぎゃー)とか(えい!)とか聞こえて来てうるさいとの
通報がありました。何かありましたか? と聞かれた。
「すいません。寝ぼけて寝言を言ったみたいです」
警官は念のため中を確認すると話して風呂、トイレ、押入れなどを調べた。
不審なところが無いので以後注意するようにと言って帰って行った。
自分では声を出していないつもりだったが、興奮して声が出ていたようだった。
次の日から祐介は荷物を纏めて工場の宿舎に移った。
宿舎で荷物を片付けていると、上官から呼ばれた。
襲った男達の情報が分かったらしい。
「やはり大国人で建設作業員だった。例の工場の宿泊施設にいたらしい。襲った
理由と誰の指示かは頑固として口を割らない。子供の頃から教育されて
半分ロボットのようでこの先も情報を取るのが難しい。三人の内で部下らしい
二人に尋問したが、もう一人がリーダーのようだったが情報が取れない」
祐介は不安になって聞いた。
「情報が取れないと言うのはどんな状態ですか?」
「重体で意識がない」と言われて祐介は自分のした事に後悔した。
「一番後にいた男ですか?」
「そうだ、祐介君は鍛えていて普通の人より二倍の力が出せる。力の出し方を
調整できるようにしなければならない。今回は初めてで仕方がないが死闘を
する時は全ての力を出す、今回は捕獲して情報を得るだけなので力を加減する。
これからはそこを考えて行動するように」と上官は言い、写真を出した。
「この男だが見覚えはあるか?」
写真を見て驚いた。
黒岩と居酒屋に居たヒロとか言う坊主頭の男だった。
その事を上官に伝えたが、祐介はどうしても男の状態が気になり
「男は、治る見込みはあるのですか?」と聞いた。
「駄目だと思う。後三日持てば良い方だそうだ」
祐介はショックを受けた。自分がしたことで人が死にかけていると。
「その男が死んだらどうなるのですか? 私は殺人者ですか?」
祐介は気落ちして聞いた。
「大丈夫だ。戦闘中で正当防衛とする。男は現場作業員だからゼネコンに頼んで
工事中の死亡事故として貰う」と上官は慰めるように言った。
暫くの間、祐介は落ち込んでいたが、紛らせるためゲームと訓練に
のめり込んでいった。




