三十 国の調査員
メーカーの工場に訓練に行くと上官に呼ばれた。部屋に入ると上官と一緒に
サラリーマン風の中年の男がいた。
男は国の調査員と名乗り祐介に名刺を渡し、ある男を捜していると一枚の写真
を見せた。写っていた男は明らかに黒岩だった。
「昨日のニュースは見たと思いますが、この人はご存じですか?」
祐介は黒岩との事だと覚悟をした。訓練の成果もあって胆も座っていた。
「はい。知っています」
「此処の工場を辞めて行方不明になった。私達も捜索したが手掛かりは無かった。
ニュースになってしまったので、私達は放置されていた黒岩のアパートに捜索に
入った。まだ空き部屋で荷物は何もなかったがドラマの台本が隅に落ちていた。
それに貴方の名前と住所と携帯番号が書いてあり、その横にこのメーカーの名前
と実験員と言う文字が書かれてあった。それで事情を聞こうかと」
「分かりました。戦隊物のドラマで一緒になった事があります。それとこの工場
の実験者の面接で顔を合せました」
「それから、黒岩とは接触しましたか?」
「しました。二回ほど一緒に飲みました」
「最初は何を話しましたか? それと同席者は居ましたか?」
「実験内容の情報を交換しようというので、耐火服の実験内容を話しました。
同席者は一人でヒロと言う大国の人間でした。このメーカーの研修生だと
いうので、担当の実験員に聞いたら大国の研修生はいないと言われました。
次の飲み会で黒岩に聞いたらヒロさんは大国資本のメーカーの社員で黒岩は
引き抜かれ其処へ行くと話しました。そして、そこのメーカーの共同宿舎
に入ると言っていました」
「分かりました。他には何か言っていましてか?」
「あとは借金を肩代わりして貰ったと言っていました」
「それも日本の若者を引きこむ常套手段ですね。借金の情報を集めている。
金融関係にも大国の諜報員が関係している」
「黒岩が殺された理由は?」上官がと聞いた。
「耐火服や金属スーツの実験内容の漏えいを恐れてでは無いと思います。
もっと重要な事を知ってしまったからだと思います。恐らく、大国の諜報員は
黒岩が接触した人間を捜していると思います」
「祐介君の処にも来るのか?」上官は少し不安そうに聞いた。
「多分、来ると思います」
「そのメーカーの工場に、踏み込むことは出来ないのか?」
「治外法権になっているので無理です」
「どうしてそんな処が治外法権に?」
「滅多な事は言えないですが政治力です。その場所は以前に大国の大使館だった。
大使館は老朽化から都心に引っ越しました。そして跡地に工場を建てました。
普通では治外法権から外れるがそのままだったようです。有力な政治家Hの指示
があったらしい。その政治家は大国側とか? 大国人との噂もあります」
「君達の調査では大国の狙いは掴めたのか?」
「まだ、はっきり分かりません。日本にいる大国人の作業員は六万人程ですが、
日本を占領出来る程の兵隊の人数でもなく不思議です。ただ地下施設の工事を
開始した時から、作業員不足で大国人を大量に受け入れた。工事が終われば、
皆引き揚げるとの意見もあります」
「なら諜報員は何故いるのか?」上官は怪訝そうな顔をして聞いた。
「作業員に紛れて、原潜や核ミサイルの情報を収集しているとの見方です」
「もうこの話は分かった。祐介君に如何しろと?」
「恐らく、祐介さんを狙って来ると思います。だから囮になって貰います。
たぶん夜に襲って来るでしょう。その時に捕まえます。もう見張られているので、
アパートの中での待機はできませんので外の分からない場所で待機します。
タイムラグがあるので祐介さんも戦闘の用意はしていて下さい」
と言われ祐介は緊張した。




