三 原潜の建造
四月一日に政府は重大な政策を発表した。
原子力潜水艦六隻を建造して三年後には配置する計画だと、野党は猛反対したが
何時ものように可決された。
マスコミは騒然となり四六時中テレビで放送した。
軍事評論家が普通の潜水艦との違いを説明していた。
強調していたのが水、食糧、酸素があれば何年も海の中に待機できる事だった。
又、評論家は米国が許可をしないだろう。
周辺の国が猛反対して外交問題になるだろうと話していた。
しかし、米国も周辺の国も無言だった。
何時もなら猛反対するのに不思議だったが、そんなに脅威に思われていないの
だろうと英介は考えた。
それにもう一つの政策をその後に発表していた。
(前回の国民点数制法を今日から実施する。期間は五年で五年後に各個人の
合計を発表する。今回は、国民点数制の①として年齢による点数を付ける。
簡単に説明すると今年に六十五歳になる人を零とする)
これを基準に数字が増減していく、例えば八十歳はマイナス十五、今年に生まれた
子供は六十五の点数になる。
つまり、年寄りは点数が低く子供が高くなることは分かった。
六十五歳は年金受給の歳で年寄りの冷遇だと言った評論家もいたが国民点数制の真意
が分からないので気にはされなかった。
点数が表示された封書は各行政から国民に送付された。
原潜の話題ばかりでマスコミは国民点数制の事は余り取り上げなかった。
暫くして、英介の処に封書が届いた。
(貴方の国民点数は零です)と書いてあった。
英介は封書を見ながら重要なことではないと気にしていなかった。
国民の全てがそうだった。