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二十八 アパートに移る


 息子のアパートは以外と近く歩いて二十分位で着いた。


連絡もしないで来たので居るのか不安だったがチャイムを鳴らすと、

インターホンから「はい」と声が聞こえた。


「俺だ」と英介は照れ臭そうに話す。


「俺だ・・・・?」不信に思われ聞き返されたが、黙っていると気が付いたらしく

ドアを開けた。


「親父! 何しに来た?」と驚いた顔をしている。部屋の中に入り話しを始めた。


「姉さんから東京に親父が仕事で来ると聞いていたが何の仕事で?」


「ああー 地元でも頼まれていたが地下の共同住宅の施工図を描く仕事で来た。

東京のT市の現場に行っている」


「あー T市か、其処は政府の施設が入る処だよ」


「お前、何故、そんな事を知っている?」


「俺は今、空調関係の会社で仕事をしている。親父の現場とは違うが地下の

現場で工事をしている」


「お前は音楽関係の仕事は諦めたのか?」


「諦めた。初めは自信満々で来たが四年位頑張ったが音楽で成功するのは

一部の人間で才能と運が無ければ無理だとわかった。生活する為にアルバイト

をしていた。それが今の会社で大手の空調メーカーの支店だった。最初は手元

などをしていたが、そのうち工事も任され仕事も楽しくなった。支店長にも

仕事が早いと気にいられて正社員にしてもらった」


「似たような仕事なら地元でも良かったのに?」


「駄目だよ。東京でなければ! 新しい機器とか知識の全ては中心の東京から

始まる。地方などや地元の田舎とは一年もタイムラグがある」


英介は仕事を旨くこなして上司に気にいられること。

東京を中心と考えることなど少し自分に似て来たと感じた。


「親父は何処のアパートにいる?」


「この近くのメーカーの工場の宿泊施設にいる」


「えー あの大国資本の?」


「そうだ、食事が二食付いて無料だから」


「他に移った方が良い。悪い噂が多い。前も中の従業員が逃げて警察が駆け

つけて大騒ぎになったが工場の中が治外法権のようになっていて警察も

諦めて逃げた従業員は連れ戻されたらしい」


「確かに中は大国人だらけで皆ロボットの様で規則も厳しく長くは

いられないと思っている」


「そうだ。このアパートの隅が2部屋空いている。大家さんに連絡してみる」

と言って息子は大家に電話した。


期間は一年間位で自分の父親と話すと了解してくれたらしい。


英介は宿舎に帰り宿長にアパートに移りたい旨を伝えた。


宿長が理由を聞いたので息子が近くのアパートにいるので、そのアパートに

一緒に住みたいと答えた。

信じて無さそうなので守衛に聞くように言うと、守衛に確認してその件は

信用したが出て行くのは木曜日の朝で送迎バスは工事が終わるまで

使用する事が条件だった。


ちょっとでも不審な事があればバスの中で拘束出来るからと英介は感じた。


夕食を食べに食堂に向かう途中、部屋から出てくる若い大国人が扉を開けた

瞬間に部屋の奥が見えたような気がした。

それは広い空間に見えた。錯覚だと思った。


食後に自販機で缶コーヒーを飲んでいると黒岩がやって来て缶コーヒーを

買って英介の前に座った。


英介は木曜日に出て行く事を話した。


「工場内で気になる事がある。大国人の部屋あれは全て繋がっている。

前にちらっと見えたので気になって鍵の掛かっていない扉を開けてみた。

大きな1つの部屋になっていて練習場のようだった。部屋の周囲は

二段ベッドが並べてあった。中央に地下に降りる階段もあり地下で何か

訓練しているようだ。それと実験場で良く会う大国人と片言で話すようになった。

彼は金属のスーツの実験員で終了したので貴方の現場に作業員として行くらしい。

そして仲間との話を片言だが聞いてしまった。それは火薬、通路、四角い穴、

爆破で物騒な言葉が幾つもあった。現場で何か企てている気がするから気を付けて」

と言うと黒岩は立ち上がり行ってしまった。


英介は宿舎を出て木曜日の夕方にはアパートでコンビニの弁当を食べていた

が黒岩の四角い穴、爆破の言葉が引っ掛かっていた。


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