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二十七 黒岩との出会い


 六時に工場の駐車場に付いたが門の守衛の処から人の列が出来ている。

守衛が一人ずつ確認しているからだった。三十分程掛かり部屋に着いた。


七時から夕食で、やはり、三十分で済ますように言われる。


消灯が十時で時間があるので本の貸し出し所に行く。


大国の本が多かったが殆どが和訳されていないが、全て思想書のようだ。


日本の本は文学書しか置いてなく、仕方なく、明治の文豪の本を

借りることにする。


そして、自販機で缶コーヒーを買い椅子に座って飲んだが、若い人も

大勢いるのに何処に行ってしまったのか? 不思議に思っていると一人の

若い男が近づいて来た。


髪の毛を赤く染めて耳にピアスを付けて此処の若者とは違っている。


「おじさんは日本人でしょう? 自販機の前で缶コーヒーを呑んでいるのは此処

では日本人しかいないと思って声を掛けた」


「そうだよ、君も日本人のようだが?」


「はい。黒岩と言います。おじさんは工事の関係?」


「そう。施工図を描いているが、君は?」


「俺はこの工場で実験員として働いている」


「何の実験?」


「耐火服と金属のスーツの性能の実験」


「何に使うの?」


「俺には分からないが、政府からの依頼だそうだ」


「そういえば、地下の建物の最上部の警備隊の部屋に耐火服の倉庫があった。

地震による火事に対処する為かも知れない」と英介が話し終わったら若者は急

に立ち上がり目配せをして去って行った。


少し後ろを見ると、いかにも警備と分かるような服を着た男がこちらを窺っている。

色々監視されていると思うと、此処には長くは居られないと感じた。


日曜日の十時過ぎに英介は門の守衛室の前にいた。


息子の処へ行くと話しても信用して貰えなかった。


ようやくアパートの大家に連絡して息子が入居していることを確認して

外出が許された。


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