二十四 東京への誘い
英介は工事が終わり引き揚げる準備をしていた。すると、菊池がやって来た。
「東京の地下施設の工事が遅れている。納期に間に合わないようで監督、職人、
施工図描きが足りない。英介さん良かったら手伝って貰えませんか?」
「えっ、 それって東京で仕事をするのでしょう? この歳では無理だと思う」
「いいえ、英介さんは優秀で仕事も早いので、報酬は今の倍近く出します。
期間は一年間です。直ぐ終わりますよ」
「家の事もあるので返事は明日で良いですか?」
「もちろんです。良く考えてください」と言って菊池は出て行った。
丁度、他にも人も居なくて高橋がいたので聞いた。
高橋も誘われたが、この工事の関連でJRのリニアの下請け工事があるので
出来ないと断わったらしい。
家に帰ってきて長女に電話した。長女は隣の市に住んでいて子供が二人いた。
最初は驚いていたが期間が一年間だと聞いて少し安心したようだった。
住む処を心配していたが、会社が世話をしてくれると言ったら東京にいる息子の
住所を教えられて尋ねて行くようにと言われた。
息子は姉さんとは連絡を取っているようだった。
息子が東京に音楽の仕事に行くと言った時に英介は反対した。
そんなに甘くないと、でも家出をするように出て行った。
長女と連絡していた事には安心した。
長女に月に二回だけ家を見に来て換気などをしてくれるように頼み電話を切った。
次の日に英介は現場事務所にいた。
暫くすると菊池が来たので「昨日の話ですが協力したいと思います」と話した。
「良かった。有難うございます。助かります」と言いながら住所が書いてある
メモを英介に渡した。
「期間が短いのでもし良かったらですが、ここは或るメーカーの工場で此処の
共同宿舎に住んでもらえれば2食の食事が付き無料です。それに現場への
送迎バスも此処から出ている。部屋は1Kでユニットバスも付いている。
外国人も多いが、皆、現場の作業員で心配ないです」
英介は此処に住む事を承諾した。
そして三日後の月曜日に行き火曜日から現場で仕事を始める予定になった。
家に帰りメモを見ると(東京都H市・・・)で長女から聞いた
長男の住所に近かった。




