二十三 避難用通路、核装備
英介の処に行政から封書が届いた。(貴方の点数は合計百六十五点です)
と書かれてあった。今の工事で五十点もくれるのかと思った。
工事も順調に進み予定より一年早く終わる目途が付いたので土曜日が休日になった。
時間ができたので地元の仲間の麻雀に付き合うことにした。
他の三人も年金生活者で暇だったので直ぐ集まった。
麻雀をしながら自分達の近状を話すのが何時もの事だった。
国民点数の話になり、三人は⑤以降封書が来ていないと話していた。
該当しないからではないかと英介が話すと、地域の交通員とか三人ともリストに
載っている公共奉仕をしていると話した。
重要な事ではないのでその日は其のままになった。
後で分かったが点数を決定し封書を配送する、など行政の膨大な業務と多額な
費用を軽減する為に国民点数の今までの合計点が百点以下の人には点数も
点けず封書も送らないことにしたらしい。
最初は切り捨てられたと思ったが国民点数の目的が不明なので、
段々気にしなくなった。
英介の施工図描きも順調に進んでいた。
住居棟の間仕切壁工事でパターンが同じなので手間がかからず済んだ。
アキラが他の施工図を描くので、その分が英介に廻ってきたが、やはりパターン
が同じなので手間が掛からなかった。
英介はアキラがどんな施工図を描いているのか気になった。
機械室、緑地帯とコア部の殆どと住居の半分位が工事を終わっていた。
一番下のリニアの駅はJRの管轄で、後は五十階のコア部分の施工図だった。
コア部分は設計図では警備隊本部と名前があり倉庫の比重が多かった。
訓練室、準備室、宿直室が五部屋あった。
最上部の住居部分の極小タイプの1Kの三百戸程が警備員用となっていた。
多分そこの施工図を描くだろうと思った。
また三人が一緒に会議に出かけて行ったので監督の高橋にアキラが
何処の施工図を描くのか聞いた。
「最上階もコアも住居も施工図は終わっているので其処ではないと思う。俺も
良く分からないが菊池が前にアキラに小さい声で避難用通路とか言っていた。
俺も気になり平面図を見たが、避難用通路はなかった。アキラのパソコンの
CAD図を見れば直ぐわかるけど無理だな。そうだ! さっきアキラが会議用
の図面のコピーを失敗し、ゴミ箱に捨てたのを見た」と言いゴミ箱をあさり、
中からA2判の用紙を八枚位に裂いた紙片を出して繋げた。
その施工図には五十階の各住居部分の先端に前室があった。
その奥にエレベーターが二機あり、図面に避難通路の文字が描かれてあった。
エレベーターは地上から三メートル下の床で止まりその前にホールがあった。
エレベーターの向かい側にトイレ、倉庫などがあった。
ホールの壁にはタラップがあり地上に出るようになっていた。
地上への出入り口は蓋が開く形状だった。
「避難用だが平面図にも書いてあっても良かったのに?」高橋は言った。
「急な変更の追加工事だと思う。私もメーカーの工事で嫌と言うほど経験した」
と英介は話した。高橋もそうだなと納得した。
同じ事を繰り返していると時間の経つのが早く。もうすぐ一年になろうとしていた。
廻りの鉄板の囲いは高さ三メートルのコンクリートの塀に変わり。
現場事務所も外に移り縮小していた。塀に囲まれた中は芝生が植えられた。
中央より少しずれた処に非常用エレベーターから地上への出入口があった。
そこはコンクリートの床が地面と同じ高さで打ってあった。
その中央部分に幅十メートル・奥行き五メートルのステンレスの部分があった。
それが地上五メートル程に立ち上がり箱の形状になる。
箱の西側部分のシャッター、ドアを開けて人が出入する構造だった。箱の天板は
厚さ一メートル位の金属で出来ていてゆったり五十人は乗れる物だった。
箱は上下式で五メートル下のホールに降りた。
そこには非常用エレベーターがあった。
アキラの施工図に描かれていた避難通路の出入口が見えなかった。
中止に成ったのか? 芝生の下か? 分からなかった。
それより前から考えていたが、出入口の頑固さからこの建物は何かより人々を
守るためと感じていた。
何かは核兵器で核シェルターだと思うようになってきた。
英介の思いに沿うように米軍が日本からの基地の撤退を発表した。来年中に
全て撤退する予定だった。
そして政府が驚愕の方針を発表した。
先に建造していた原潜に核弾頭ミサイルを積むことを、一隻に六発で
計三十六発だった。やはり来年中の予定だった。
マスコミは最初に騒ぎ立て報道したが上部より圧力が掛かったようでそれ以上
の報道はしなかった。
政府は米軍の撤退で軍事力の増強が必要になり核の傘からも外れたので抑止力
となる核弾頭ミサイルを原潜に積む事にしたと理由付けた。
当然周辺の国々より反対の抗議があることが予想されたが各国はまたも無言だった。




