十三 妻との出会い
英介は大学生の時まで母親と買い物に一緒に行っていた。
それがマザコンだとは思わなかった。欲しい物を買って貰えるので変だとは思っ
いなかったが、母親の言うことに逆らうことは無かった。
妻と付き合うまでは服、靴など身に付ける物は全て母親が買って身に付けていた。
妻はレストランでウェートレスをしていて、昼食を毎日のように食べに来る
英介と知り合った。
レストランでは2人のウェートレスがいた。もう1人は、髪の毛を少し赤く
染めていて英介の同僚の間では人気があった。英介の好みでは無かった。
というより付き合える可能性が低いと悟るのが早かった。
その辺が皆と少し変わっていたが自分では気が付いていなかった。
妻の実家は裕福ではなく借家だった。父親は以前運送業をしていて豪邸に住んで
錦鯉を沢山飼っていたが、騙されて会社を取られたと話していた。
話しから見栄っ張りの面が見えていた。
妻は高校中退だったので母親は当初は反対したが、製材所は次男が継ぐことが
決まっていたので結婚は渋々認めて貰った。
設計事務所の同僚は資産家の息子が多く。それなりの付き合いをしてきたが
安い給料では大変で母親に金を借りていた。でも返す気のない借金だった。
テレビのドラマに出てくる建築士の様に優雅でなかった。
地方の小さい都市の設計事務所は社員はいずれ独立するからの理由で給料は
少なかった。
後に東京の設計事務所の仕事を手伝った時には社員の給料が高いので定年まで
在籍する人が多いと東京と地方の格差を感じた。