十 耐火服の実験
祐介は今日から仕事で、繊維メーカーの工場の実験室にいた。
最初は100℃で一時間経過した時の体の状態の検査だった。
着るのは繋ぎの服だけだと思っていたがヘルメット、手袋、ブーツで
宇宙服のようだった。
手袋やブーツの繋ぎ目も耐火テープで巻いた。そして四角いブースに入った。
ヘルメットにはコードと呼吸用のビニール製のパイプが繋がっていて呼吸数、脈拍、
血圧、酸素濃度を測れた。
一時間近くになると耐火服の中は多少熱くなり汗が出て気分が悪くなってきた。
その事を実験員に伝えて実験は終了した。
午前十時に実験室に着いて通常の体のデーターを測り、繋ぎの耐火服を着る時に慎重
に着せられた。それで十二時になり耐火服を着たまま昼食を食べた。
十三時から実験を始めて終了時は十六時近くになっていた。
「まだまだですね」と実験員は言いながら次の予定を祐介に伝えた。
次は十日後だった。
祐介の処に行政から封書が届いた。
(貴方の合計点数は百二十点です)又ゴミ箱に捨てた。
次の工場の実験室では熱さを感じなくなり耐火服の性能は上がっていた。
すこしずつ温度を上げ時間を延ばし実験は順調に進んでいた。
しかし、何回来ても他の九人に会う機会は無かった。
お互いの情報を交換出来ないようにメーカーが時間をずらしているようだった。