一 序章
倫理とは知識のある人間だけが考えて行動するものだと思う。
常に勝者と敗者が存在する動物の世界の勝者は敗者を食べ敗者は勝者に食べられる。
人間の世界には色々な場面に勝者と敗者がいて、そこには倫理がある。
勝者は威張らず、自慢せず、敗者を労り、模範となる。敗者の倫理は反抗せず、
妬まず、尊敬し、勝者に従う。
それが倫理だと思うが、それを認識して行動している人はどれだけいるのか?
勝者と敗者がどんな時にもどんな場面にも存在すると気が付いていない人も多い。
その人達はある意味幸せかも知れない。
何時か、それを思い知る時が来るとしたら自分は如何するのだろう。
敗者の倫理に従う人がどれだけいるのだろう。
世の中には規則、常識と言うものがある。人は生まれた時から、それに従って
生きている。
規則、常識から外れたら敗者で規則、常識通りなら勝者。
でもその反対もある。規則、常識に縛られ自由な考え方が出来ない敗者、自由に
考え自由に生きる勝者。
そもそも、規則、常識は人が決めたもので真理ではない。
いつでも状況で変化する。それを旨く利用して国民を操るのが政府又は指導者である。
政府がある政策を発表した。国民点数制法として国民に点数を付ける法律を
施行すると、野党は挙って反対したが、与党の議員数が多く衆議院と参議院を
通過して可決されてしまった。
政府は国民が納得する理由は発表しなかった。
ある資格を与えるためとしたがどんな資格なのか説明は無かった。
テレビの情報番組の評論家が年金の受給を早くから貰える資格、福祉で介護を
受けるのに優先される資格とかもっともらしく話している。
別の評論家は今の首相は右より思想で徴兵するための情報集めと話している。
何故徴兵の必要か? との質問に、最近大国の動きが活発になっているからと答えて
いたが何れも真意は分からなかった。
英介はテレビを見ながらマウスを動かしている。
机の上のノートパソコンに無料のCADのソフトがダウンロードしてあり
建築の図面を描いている。
英介は今年で六十五歳になっていた。
老眼鏡が少し下にずれて上目づかいでテレビを見ている。
(点数を付けたら私など底辺に近いだろう)と思った。
外では桜が咲いていたが三月の下旬なのにまだ寒くファンヒーターを朝から点けている。