28、ナラード王国に到着しました
1ヶ月の馬車での長旅を経て、ナラードへと到着した私達を、ナラードの国王が出迎えてくださいました。
「よく来てくれた! 長旅でお疲れでしょう。舞踏会は3日後、それまで用意した部屋でゆっくり過ごして欲しい」
私達は舞踏会の日まで、城から出ないことを伝えていました。私が見つかるのを避けるためです。
王城とはいえ、お姉様の遊び相手がいないとも限りません。城の中でも気をつけなければなりません。舞踏会までは、お姉様に知られたくないからです。
部屋へと案内してもらい、ようやく一息つけました。
「結構目立っていましたね」
馬車4台と馬に乗った護衛が100人なのだから、目立たないわけがないのですが……
「ドラナルドの王太子夫妻が来ることは知らされているはずだから、見物人が多かったようだ」
ドラナルドは、この大陸で最も大きな国で、どの国も敵に回したくない国です。その国の次期国王が訪問して来たのですから、見物したくなる気持ちも分かります。
「今更ながら、私はすごい方と結婚したのですね」
「君なしでは今の俺はいない。これからもずっと、そばに居てくれなくては困る」
「離れるつもりなんて、ありませんよ? たとえルーク様が嫌がっても、ずーっとくっついています!」
「嫌がるはずがない。君が思っているよりもずっと、俺は君を愛してる」
ルーク様はいつも、私が言ったことよりさらに嬉しい言葉で返してくれます。それほど想ってくださっているのだと、全力で伝えてくれます。
愛される喜びを教えてくれた、ただ一人の人。
「いつそんな甘い言葉を、覚えたのですか?」
「本心を言っているだけだ」
知っています。いつだってルーク様は、本心しか言いませんでした。だから、騙されて傷ついた私が、ルーク様を信じることが出来たのです。絶対に私を裏切らないと信じられる人。
「そうですよね。私の料理は食べたくないとハッキリおっしゃいますから」
あまりにも素直な方だから、恥ずかしくて誤魔化してしまいました。
「食べたくないとは言っていない。俺はまだ死にたくないと言ったんだ」
「もっと酷くありませんか?」
あはははっと笑いながら、おどけるルーク様。
「君は俺の料理を食べてくれればいい。作るのは、俺に任せて」
ルーク様の料理、1ヶ月食べていません。めちゃくちゃ食べたいです。そんな事を考えていたら……
ぐうううううううぅぅぅぅぅぅッと、盛大にお腹がなりました。
「ぷぷーーーッ!! あはははっ!!」
「もう! そんなに笑わなくても、いいじゃないですか!! ルーク様の料理のことを考えてたら、お腹が空いちゃったんです!」
「いや、だって、君のお腹は素直だなって思って……ぷぷぷっ!! 本当に可愛いな!」
ルーク様の前でお腹が鳴るのは2回目です。あの時も、笑われてしまいました。そういえば、なんて失礼な人って思っていました。そんな失礼な人をこんなに愛するようになるなんて、不思議ですね。
「ルーク様、厨房をお借りできませんか? ルーク様の料理をずっと食べていないから、禁断症状が……」
「初めて俺の料理を食べたいと言ってくれたね」
まっすぐ見つめられて、恥ずかしさから目を逸らしてしまいました。
「食べたいとは、言っていませんよ?」
「素直じゃないところも、大好きだよ」
「……ルーク様、変わっていますね」
「変わってるかな? 俺はただ、アナベルの全てが好きなだけだよ」
素直じゃない私に、めちゃくちゃ素直に気持ちを伝えてくれるルーク様。もう少し、素直になれるように頑張ります。
ナラード王国に来て、2日が過ぎました。ずっと城の中にいたのに、ルーク様と一緒にいたらあっという間でした。イチャイチャしたり……イチャイチャしたり……イチャイチャしたり……って、頭の中お花畑じゃないですか!!
そんな事ばかりしていたわけではありません。どうしたら、お姉様を止められるのかを話し合い、結論はシルビア様のあの手紙を、ブライト公爵に渡すことが最善だということになりました。
あの手紙だけではお姉様がシルビア様を殺めた証拠にはなりませんし、ホーリー侯爵と浮気をしていた証拠にもなりませんが、ブライト公爵にお姉様の本性を知って欲しかったからです。
シルビア様がブライト公爵に話そうとしていたことを、ブライト公爵に知っていただくのが1番だと思います。
舞踏会が始まる数時間前に、ナラードの国王様に頼み、ブライト公爵にお会いすることになりました。




