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12、わざと私に見せつけるお姉様




お茶のトレイを持ち、寝室のドアをノックする。


「もっと、キスして……んん…………っ……」


中から聞こえて来るのは、吐息混じりの声。ドアの外にも聞こえるように、わざと大きな声を出しているようです。


もう一度ノックをする。


「……入りなさい……んっ……」


ドアを開けて中に入ると、2人は舌を絡ませ、激しいキスをしていました。お姉様は私に見せつけるように、私の顔を見ながらエルビン様の口の中に舌を入れます。

これでもう、エルビン様への想いは消え去りました。私達の幸せだったキスが、穢されてしまいました。


「……んっ……エルビン……んん……私を……愛してる?」


「愛してる……ずっと、愛していた……っ……」


私には、1度も言ってくれなかったセリフ。エルビン様と笑いあっていた日々が、走馬灯のように流れてきます。これは、あなたへの想いとお別れする為のようです。

もう二度と、元には戻れません……


トレイを寝室のテーブルに置き、部屋から出ると、自分の部屋に戻り手紙を探します。

手紙はエルビン様が開けようとしていた机の引き出しには、入っていません。机の上に置いてあった、エルビン様から頂いた本の間に挟んでいました。この本は、溺れたのを助けてくださった時にいただいたものでした。

怖くて震えていた私に、『この本、面白いよ』と言って渡してくれました。

今思えば、エルビン様はあの日、お姉様を助けようと駆けつけたのかもしれません。


手紙を持ち、邸を出ました。

馬車に乗り込むと、ゆっくりと走り出します。この邸に越してきた時は、あんなに幸せいっぱいだったのに、今はこの邸に二度と戻りたくないと思っています。


実家に着くまでの間、両親にどんな風に話すか考えていました。

ホーリー侯爵夫人の死に、お姉様が関わった証拠はありません。ですが、手紙にはお姉様がゴロツキを雇い、ホーリー侯爵夫人へ暴行してお腹の子を流産させた事は書いてあります。これはもちろん、立派な犯罪です。


実家に着いてすぐに、お父様とお母様に手紙を見せました。


「……信じられないわ。イザベラがそんな事するはずない。ホーリー侯爵夫人に、騙されているのよ」


「お母様、ホーリー侯爵夫人は亡くなりました。その手紙を私に出した後、すぐに亡くなったのです。その手紙を届けた使用人も、行方不明です」


「…………」


お父様はショックが大きいのか、ずっと無言のままです。


「アナベル、まさかホーリー侯爵夫人をイザベラが殺したと言いたいの!?」


「私はそう思っています。ですが、証拠は何もありません」


「証拠はないのだな。それなら、忘れなさい」


お父様が口を開いたと思ったら、思いもよらなかったことを口にしました。


「お父様!? 何を仰っているのですか!? お姉様は、罪を犯したのですよ!?」


「お前は何がしたいのだ!? イザベラの罪を暴こうとでもいうのか!? イザベラは、お前の姉だ。守ろうとは思わないのか!?」


家族だから、罪を犯した事を隠せと言うのですか!? お父様なら、分かってくれると思っていたのに……


「お姉様の罪を隠す事は出来ません。ブライト公爵の権力を利用して、やりたい放題した挙句に人の命を奪ったのですよ? これからだって、更に罪を犯してしまうかもしれない!」


「この話は終わりだ」


そう言って、お父様は手紙を破り捨てました!


「な!?」


ビリビリになった手紙は床に散らばりました。ビリビリの手紙をかき集めようとすると、


「やめろ。イザベラがした事が公になったら、私達だって無事ではすまないんだ! お前はこのグランド伯爵家を破滅させる気か!?」


大好きだったお父様が、まさかこんな事を仰るなんて……


ですがお父様、その手紙は馬車の中で私が書き写した偽物です。お母様はお姉様の事ばかり可愛がっていたので、保険のためでした。まさか、お父様が破り捨てるとは思っていませんでしたが、本物の手紙は無事ということです。

お父様は、娘の書いた文字も分からなかったのですね。お父様だけは、私の味方だと思っていたのに……




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