異世界の黒猫事情
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翌朝、女盗賊・レイラに拘束能力のスキルを習得する為の特訓が始まったのであった。 手始めに切り株の上に空き瓶を置き、少し距離を取った場所からレイラは掌を瓶に向けるロープのようなものが飛び出して瓶を引き寄せたのだ。
「基本的に 拘束能力のスキルは掌からロープや鎖で近くに引き寄せたりもできるスキルでこれが盗賊の盗みで一番遠距離から物を奪い取れる手法ね? 」
なるほど、確かにお宝を手元引き寄せてとんずらするのが一番生き残る確率も高い。それに戦闘も必要最低限でいいメリットがあるのか。
「ちなみに魔物相手だと…? 」
「そうね…取りあえず全力で洞窟から逃げてみてくれる? 」
レイラに言われて全力疾走で洞窟を走るとナニかに足を取られて転ぶと、地面からロープが出てきて身体を固定されてしまったのだ。
「今のは逃がしたらダメな相手の時の対策ね?けど、基本的に魔物相手だと戦闘…つまりは攻撃を仕掛けてくるから動く相手を捕らえる訓練は必要ね… 」
「ちなみにレベルによって拘束能力って… 」
「勿論、破られる事もあるわよ?私が拘束能力のレベル5でミノタウロスとかトロールみたいなパワー系を足留め出来る位だしね。 それにクロの固有スキルを活かすなら捕まえたら拘束を破られないレベルにならないと色々とキツいわね…」
確かに、俺の固有スキルは相手の魔力と体力を奪い取れる能力で目線があっていなければ発動しない上にいざというときの攻撃系のスキルを持っていない為に火力不足であるのは事実である。
何よりも、小猫族は元々非力で腕力を活かした攻撃スキルはなく職業である盗賊も敏捷と器用にポイントを割り振って敵から逃げるのが定番の様だ。まぁ、ヤバくなったら「逃げるが勝ち」が盗賊の定石だしな。
「それにクロの場合は王族や貴族、魔族から狙われる可能性もあるから身を護る為に逃げる術もつけておかないとならしね…」
「えっ?どういう意味?なんでそこで魔族が出てくるんだよ?俺、まだ魔族に会ったことないぞ? 」
まぁ、異世界に呼び出されて『勇者』って職業があるなら魔族側は魔王が定番か?
レイラ曰く、小猫族の目は特殊で地位の高い者に大いなる権力が与えられるそうだ。
だが、黒猫は使役することで人間には不幸という害を及ぼすが魔族側からは全ての魔族の王・魔王なるのに必要な相棒になる事で圧倒的な力をえることが出来るというのだ。
その驚異から護るために黒猫は人間に迫害され、魔族から魔王を産み出さない為に蹂躙されてその代償で小猫族の数は激減しまったというのだ。つまり今の俺には希少価値がある種族というのだ。
・・・ ん?ちょっとまってよ。
「…それって折角、小猫族の黒猫を討伐して国として名を挙げるチャンスを棒に振ったって意味か…?
なんだっけ名前…グラードン?何とかって王様は馬鹿だったの?」
「あー…グラード三世が納める国の名前は【ラインヴッセル】って国でね? よくも悪くも神頼みの国なのよ…隣に聖職者の神官みたいな人いなかった? 」
「おかっぱのヤツがいたな~そうだった。あのおかっぱと王様の髪の毛が真ん中からハゲますように…真ん中ハゲますように…」
あの大柄な騎士との約束を思い出し、追い出したおかっぱと王様の髪の毛が真ん中からハゲる様に女神・ヴィッセルにお祈りしておこう。
レイラはそのいやがらせに近いお祈りに対してクスクスと笑っていた。
「さて、それで修行方法だけど、クロが私を拘束するって内容でいいかしら?」
「え"っ!?…レベル差あるのにそれ修行になるの?」
「スキルは経験値じゃレベルアップしないから何度も使ってレベル上げするしかないのよ?
それに魔族は低級でも今の私よりも敏捷ある上に翼もあるから拘束能力のスキルレベルをあげておかないと捕まるわよ? 」
「お願いします。レイラ師匠!!! 」
冗談で言ってない。これは真面目な話だろう。レイラは魔族と戦った事があるからこんな忠告をするのだろう。もしも、レイラに気に入られてなくてオークションに売られでもしてたらとすると考えただけでもゾッとする。
何よりも梨央奈が同じ目にあっても同姓だからオークションに売られ獲る金額のがメリットがあった。
もし、仮に梨央奈の職業が決まっていない事から城からおいだされ、レイラにオークションに売られて【奴隷】になっていた可能性が高いのだ。
実際現在進行形で小猫族の火力の無さに頭を悩ませているし、何よりも魔族に梨央奈が拐われて勇者として救い出せる自信もない。
選択は間違えてない。俺は小猫族の黒猫として王族や貴族そして魔族から逃げる事を目標にレイラとの修行に気合いを入れたが、レイラは問答無用で馬乗りなり、負けた分は身体で払わされたのであった。




