私は世界を救いたかった
あくまで、この物語はフィクションです。
それは、砂糖菓子のように甘い夢であった。
一度、口にしたら止まらない砂糖菓子のように、中毒性がある甘い甘い昔の話。
2XXX年、EU・日本、カナダなどを中心とした自由貿易・自由経済を掲げる「自由社会派」、中国・ロシア、北朝鮮を中心とした国の管理によって行われる貿易・経済を掲げる
「社会主義派」、イギリスやアメリカが行っている自国の利益のみを追求する「自国主義派」のよる争いが起こった。
最初は、経済制裁や金融制裁など血の流れない戦争が行われた。この争いは何代にも渡り行われた。
ある時、リリスという女性が中心となり、「α」という宗教や人種を越えた組織が作られた。
彼女が作った組織の目的は人種差別のない世界の創造、性差別の撤廃、非暴力、富の分配、宗教対立の解消というものだった。誰にも支配されず、誰もが平等で、自分らしく生きていける世界。それがリリスの理想とする世界だ。
世界の最下層で産まれ、貧困と差別の中で育った彼女は、幼い時から世界から差別を無くすことを目標としていた。だが、貧困は彼女の夢の大きな壁として立ちはだかった。しかし、リリスはどんな困難にも彼女の唯一の武器である頭脳を駆使し立ち向かった。
リリスはどんなに嘲笑を浴びようとも勉強に明け暮れ、遂に世界で最高峰の大学に学費免除の特待生として入学を許された。この大学を最高の成績で卒業すれば、世界の最高決定機関で働くことができる。
リリスは与えられた機会を無駄にしないため、死に物狂いで勉強を行った。その結果、同期たちの中で優秀な成績を取り、最高決定機関で働くことになった。しかし、世界は残酷であった。リリスの就職が取り消されたのである。
理由は、「リリスが最下層の人間であり世界最高決定機関で働くに値しない人物」であるためと。
リリスは絶望した。その機関は知識・実力があれば出身は問わないと有名なところ立ったにも関わらず、その期間はリリスを拒否したからだ。
だが、捨てる神あれば拾う神もある。絶望にうちひしがれているとき、一人の男性と出会った。
男性の名前はアダム。
世界を救いたいというリリスの願いを聞き入れ、アダムはリリスに莫大な金額を出資した。リリスはそれを元に世界平和を目的に活動する「α」を創立した。
最初は、誰も彼女の唱える平和は見向きもされなかった。だが、彼女は諦めず何度も多くの人に語りかけた。行動を起こした。世界中をかけめぐり街頭で演説を行った。嘲笑われ物を投げつけられながらも懸命に訴えた。世界中をかけめぐりあらゆる紛争の仲裁に入った。銃を突きつけられながらも、平和について指導者たちに語り続けた。
アダムはその活動を献身的に支えた。ある時は、傷ついたリリスの傷の手当てを行い、またある時は、命の危険にさらされたリリスの盾となり剣となり彼女を守り抜いた。
彼女の願いを最初に聞き入れたのは、ラエドというある宗教の有力な指導者だった。数百年前に起こったテロをきっかけにラエドが信仰する宗教が他の宗教から避けられているのが我慢ならなかった。ラエドが「α」に参加してから「α」の躍進は始まった。優秀な宗教学者にして指導者だったムハンマドの教えを受け、リリスはあらゆる差別の解消、領土問題の解決を行った。最初笑っていた人々も、リリスに協力を申しだすようになった。そして、αはノーベル平和賞を授賞した。
ノーベル平和賞授賞後、アダムの提案により政界進出する事が決まったら。差別や宗教対立、領土問題などはお互いの意見が対立を始めたら終わらせることは難しい。対立を始めないためにも、国のトップに立ちあらゆることに目を光らせる事が大切だと考えたからだ。
αから多くの人が立候補した。リリスは議席を少なくてもいいから獲得できればいいと考えていた。だが、リリスの予想に反し各国で議会の半数以上の議席を獲得し与党となった。議席を獲得しただけでなく大統領・総理大臣など国のトップにまで登り詰めた。リリスはこれで差別がなくなるとムハンマドとアダムと喜びを分かち合った。
これで世界の平和が保たれると追っていた。しかし、リリスの予想に反し争いは無くならなかった。必ず毎年どこかで小さな争いが起こった。その争いが大きくなる前に解決を行っているが、この頃から反αの声が大きくなり始めていた。リリスは反αの人々と対話を行い、お互いの理解を深めようとした。
そんなときある事件が起こった。反αデモを起こした人々を、とある「α」の私兵たちが殺したのである。その私兵はアダムの私兵だった。リリスはアダムに詰め寄った。だが、アダムにはすでにリリスの声は届かなかった。アダムの隣に立つ美しい女性の言葉ばかり聞き、第3次世界大戦を始めてしまった。
リリスは戦争を阻止しようと駆けずり回った。しかし、アダムの行いにより、「α」及びリリスは世界からの信用を失ってしまった。誰も彼女の言葉に耳を貸さなくなっていたが、それでも彼女は昔のように懸命に言葉を尽くした、アダムを止めるための協力を求めた。
彼女の努力は報われず、アダムは世界中にある核施設を破壊した。核兵器により世界は汚染されてしまった。
リリスは人目もはばからず、大声で泣いた。
自分が無力なことがくやしくて、悲しくて。幼いころからの夢が散ってしまって。
世界を救うことを諦めかけたとき、ラエドが声をかけてきた。
「全ての人を救うことは難しいかも知れないが、多くの人を救いましょう」
ムハンマドは一人聖戦を行っていた。ラエドは多くの科学者を説得し宇宙船を造り上げていった。リリスはラエドと共に多くの人に宇宙船に乗るように声をかけた。α支持者や非α支持は続々と宇宙船に乗り込んだが、反αの人々は一人も乗ることはなかった。それでも、リリスは待ち続けた。結局、反αの人々は誰一人として来なかった。
リリスは後ろ髪を引かれる思いで、宇宙船に乗り込み地球から旅立った。