誰かを救う時、誰かを捨てる時
31年間、本当の恋を知らないということに、私は気付いていなかった。
適当な恋愛なんてしたことがなかった。誰かと付き合うと3年以上は付き合っていたし、自他共に認める一途な性格。
だけど、知らなかった。
恋をすると、これほどに嬉しくて悲しくて、愛していると涙が出るということを。
今日、離婚届を提出した。
私は彼をたくさん苦しめた。
自分の小ささを知った。
自分の醜さを知った。
自分の愚かさを知った。
自分のしたことを認め、一生背負っていく覚悟があるか。
どんな未来になろうとも、私に迷いは一つもなかった。
誰かが間違っていると言おうとも、誰に何を思われようと、別に理解して貰おうとすら思っていなかった。
もしも、他の誰にも分からなくても、私達が分かっていればそれで十分。私達さえ良ければ他にはどう思われようと、本の少しも関係ない。
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「行きたいなら行っていいけど、分かってる?」
あー、この人と一緒にこのまま一緒にいると、私の世界が狭まる。なんて恐ろしいことだろう。
私は一生、こんな小さな世界でしか生きることができないんだ。
それは本気で怖い。
そう思った。
私は撮影モデルとして、たまに仕事の依頼を受けていた。つい先週もその仕事をしてきたところだ。
私の家は都内まで新幹線でも数時間はかかる場所にあるのだが、仕事がある時は都内まで出なければいけない。
なので、撮影がある時は、旦那が仕事から帰ってきたら電子レンジで温めれば済むよう、朝に晩御飯を作ってから自分の仕事に出るようにしていた。
と言っても、結婚してからは初めての依頼っだった。前に撮影の仕事をしたのは、結婚式の数ヵ月前だった。