3. 演技派の現世 2
ゴロゴロゴロ…………ピシャッ!!
少し思考に沈みすぎたみたいだ。
今日は天気が悪く、部屋は薄暗い。外では雷が鳴っている。このような日はよく前のことを思い出す。
気分転換に図書館にでも行くか。
善は急げと図書館となっている塔に向かうことにする。
私が今いるのは第2王子宮にある自室だ。第2王子宮は王宮を挟んで第1王子宮の反対側にある。そして図書館の塔は第1王子宮寄りに建っている。
部屋の外に出ると、私の従者兼護衛であるミカエル・フローレンが寄ってきた。
「ラナンキュラス様、どちらへお出掛けになりますか?」
「図書館へ行きます」
「御意に」
ミカエルは青緑色の肩にギリギリ着かないくらいの髪と琥珀色の瞳を持った小柄な少年だ。容姿はとても可愛く、女の子のようである。
ちなみに私は薄紫の腰よりも長い髪を、耳の高さあたりで1つに結っている。
身長は平均よりも高い方であるが飛び抜けて高いわけではない。だから普段はシークレットブーツを履いてごまかしている。それでも男性の中では低い方だろうが……
ミカエルは小柄で女の子っぽいがそれでも私より少し背が高い。だから、そういった面で私が女だとばれてしまわないように魔術で小細工はしている。
そう、この世界には魔術があるのだ。そして私は膨大な魔力を持っている。だからまあ、自分が男性に見えるように軽く幻術をかけている。
思いきり幻術をかけてしまっては感の良い人にバレる可能性があるので本当に心持ち印象が違うのでは……というくらいのものであるが。
ミカエルの歳は私より1つ上で、私が今15歳。ミカエルは16歳だ。
彼は私の男装を知っている数少ない人物の1人である。他には侍女長と身の回りの世話をする侍女数名、それから執事長が知っている。
その中でもミカエルは私が7歳の時から従者をしていて、信頼のできる相手だ。
エスファル公爵の息がかかってはいるが、ミカエルは裏で私の味方をしてくれている。
第2王子を演じる中でもミカエルには色々とサポートしてもらっている。
普段、私は権力を笠にきた少々傲慢でナルシスト気味な王子を演じている。それとエスファル公爵が考えた設定に乗り、操られたふりをして虚弱であまり王城の外に出られず、世間知らずの王子として振る舞っている。
今もそんな第2王子を演じて自信を持ちつつ弱々しい足取りでカツカツと足音を鳴らて歩いていると、もう図書館は目前だった。