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転生演技派王子  作者: 雪吹 郁
1/16

1. 演技派の前世





***




『死ねっ!!』


ドンッ!


誰かに押されたと気付いた瞬間にはもうバルコニーから落ちていた。


『あんたが悪いのよ!私のものを奪ったんだからっ!』


私を押したらしき人の喚き声がする。


うるさいな。私は貴方のものなんか奪わないし。馬鹿じゃないの?私を殺したって警察に捕まるだけじゃない。


それにしても……死ぬのか……




***










「寝てしまっていたのか……」


あれは私が前世で死んだ時だったな。

あの時はまさか転生するとは思わなかった。


それにしても夢のせいで昔のことを思い出してしまった。

前世ではあまりいいことがなかった。まあ現世もそうだけれど。





私の前世の名前は水瀬みなせ羅奈らな


父親は水瀬(れん)という有名な俳優だった。そして母親は水瀬祐奈(ゆうな)という同じく有名な女優だった。


そして私も子役をやっていた。親が有名でさらに美男美女。子供の私も容姿が整っていたこともあり、とても注目されていた。私は天才子役だとも言われ、もてはやされたが妬まれることも多かった。


私はどんな演技も本当のように演じることができた。そして仕事を精一杯頑張ってやった。だけど親はそんなことはできて当たり前だと褒めてさえくれなかった。


両親は私に興味のひとかけらもなかった。

でも、何か少しでもできないことがあると怒鳴り散らされた。しかし暴力は振るわれなかった。商売道具である体に傷をつければ、世間にばれてしまう可能性が大きいからだ。父親も母親も正統派を売りにしていてイメージを下げてしまうようなことだけは絶対にしなかった。それだけは本当に良かったと思う。


私たちは外では仲の良い家族を演じていた。


だけどそんな上辺だけの私を見て妬む人は多かった。

頑張っても親に褒められることはなく、自分に負の感情を抱く人がどんどん増えていく。


何度も辞めたいと思った。

そもそも私は親に強制的に子役をやらされていて演じることはそれほど好きではなかった。だけど辞めることは許されなかった。


だから私はいつの間にかひねくれてしまい、演技を自分を守る盾として、他人と接する時はいつも良い人を演じるようになった。







そうやって日々を過ごして18歳の誕生日パーティーの日が来た。


パーティーはホテルの会場で父親や母親と交流のある人や同業者の人を呼んで大々的に行われた。

私はいつものように親と仲の良い家族を演じ、パーティーを過ごした。そして挨拶を終え、少し息抜きにバルコニーに出た。


しかしそこで誰かに押され、バルコニーから落ちて死んでしまった。

危険な目に遭わないよういつも気を付けてはいたがこんなところで殺そうとする人がいるなんて思いもしなかった。


でも死ぬ時はああやっとこの人生が終わるんだとしか思わなかった。



本当にさして面白くない人生だった。












そして現世の私の名前はラナンキュラス・フィオ二ティア。

薄紫の髪にアメジストのような紫の瞳を持つ、このフィオ二ティア王国の第2王子だ。


だけど私は男ではない。

男装をして王子になりきっている。



今もまた私は演技をして自分を偽って生きている。







ああ今世もろくなものではない。










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