7、地球ダンジョン
ドカーーーーン
「……うぅ………う゛ぅ……!!ん!あれ?」
爆発するような音とともに目覚めた。
「……あれ?俺……生きてる?……のか……う゛」
起きあがった瞬間"ズキッ"と頭痛がした。
だが痛みがあるってことは生きてる証拠だ。
"ぐぅ~~う"
ついでにお腹も鳴った。
「もしかして……異世界からの瞬間移動に酔って気を失っただけ……なのか……」
というか異様に喉渇くし腹減ったな……一体何時間気を失ってたんだ?
ふとデジタル時計を見ると金曜日の昼1時を示していた。
まぁ、いい。お茶でも飲もう。母親も今の時間は仕事だろうから鉢合わせはないだろう。
……あいつ、俺が死んでもどうせ悲しむこともなかっただろうな
そんな事を思いながら台所へ行こうと部屋のドアに手を掛けた瞬間───────
ガラガッシャーンバリィーンカラカラ……
台所の方からもの凄い音がした
(なんだ!!……泥棒か!?)
俺は恐る恐るドアを少し開け、ドアの隙間から台所の方をのぞいた。
!!
(──!!えっ!なんで!なんで!あいつが!?)
俺は目を疑った。
ドアの隙間から台所を見ると、そこには倒れた食器棚の上ではしゃいでいるゴブリンの姿があったのだ。
なぜ家にゴブリンがいる?……もしかして俺が持ち帰った魔石が原因か?
……いやっ!そんなことより速く倒さないと……
俺はポケットから5000ウェンで買った普通の短剣を取り出し、カバーを外して構えた─
瞬間、ゴブリンが目を反らし、こちら側が死角となった─
その期を逃さずドアから飛びだし、ゴブリンの反応より速く喉を切り裂いた……
流れるような素早い動作……まるで今でも【身体強化】スキルがあるような………
「やっぱり俺の持って帰った魔石から戻ったのかな?このゴブリン……」
俺がゴブリンの死体を見ながら考えこんでいると、次の瞬間、ゴブリンの死体が魔石を残し消えていった。
そう、まるでダンジョンに吸収される時のように─────
その瞬間、俺の脳裏によぎる嫌な予感──
「まさか!」
俺はすぐさま窓の外を見た
俺の住んでるマンションの3階からは外の大通りを見渡すことができる……
嫌な予感的中……窓の外から見える景色はまさに地獄絵図だ。
魔物が街を荒らし回っている。
あちこちから煙があがり、
通りには横転した車や人の死体がいくつも転がり、人の死体をむさぼり食うゴブリンやゾンビ、スライム、遠くにコボルドらしき魔物まで見えた。
冗談だろ?
俺が待ち焦がれていた平和な日本が……
まさにあれだな……
昔映画でみた、猿が支配する星からやっとの思いで地球に帰ってきたとおもったら、そこはすでに猿に支配されていたってみたいなオチのやつだ……
ひとまず、お茶を飲んで落ちつこう
そう思って冷蔵庫を開けたが冷えてない。食品も腐っていた。電線をやられたのか?
仕方ないので、ペットボトルの天然水を飲んだ。
ごくごく…ぷはっ
喉の渇きがおさまり少し冷静になれたが……
「俺が異世界に行ってる間に何が起こった?……誰か教えてく………!…」
その瞬間、俺は馬鹿馬鹿しいほどの考えを思いついてしまった。
「そうだ!神様に聞けばいんじゃないか?」
瞬間移動であの神様のいた天界へ……
行けるはずだ、俺はそこに《一度訪れている》んだから!
「神様がいる天界へ【瞬間移動】!!」
ヒュンッ
─────────────
───────────
シュンッ
俺は見覚えのあるあの薄クリーム色の世界に立っていた。
(成功だ!)
『お主!こんな所まで来てしまったのか?!』
聞き覚えのある神々しいこの声。
声のする方に振り向くとそこには神様がいた。
「神様!!大変なんです!俺の住んでる町に魔物が…どうして…」
俺は神様に歩みより事情を尋ねた。
『まぁ、落ちつきなさい。事情はちゃんと説明するつもりじゃ。……まずは、驚かずに聞いておくんじゃよ、…魔物が現れたのはあの町だけじゃない、地球の全国各地でじゃ。そしてこうなってしまった原因はお主じゃ』
神様は落ちついた声色で言った。
「…………俺……?」
背筋に悪寒が走った
『お主はダンジョンができる原因をしっておるか?』
なんだ?いきなりダンジョンの質問?
「えっと、確か《マナの急激な変化によって発生する》でしたっけ?それがなにか?」
俺はケインさんから聞いた通り答えた。
『そうじゃ。お主が地球へと瞬間移動で移動したことによって異世界と地球を隔てる壁に穴を空けてしまったんじゃ。その結果、異世界の高濃度のマナを含む大気がマナの全く存在しない地球の大気へ向かって流れ混んでしまった……』
俺は理解してしまった。
「つまり……地球がマナの急激な変化によってダンジョンとなってしまった……ということですか……?」
『うむ、そうじゃ……残念なことじゃが……』
はは……嘘だろ……俺のせい?
俺のせいで、何人死んだ?いや何万人?
「神様!どうにかできないんですか!!」
『残念じゃが一度大気にマナが混じってしまった以上、無理じゃ……一応人類の3割を異世界へと強制転移で避難させ、その3割の人の存在を人々の記憶から消すまでしかできなかった』
「なんてこった……どう責任取ればいんだよ……」
絶望だ。地球に帰りたかっただけなのに……多くの命を奪う結果になってしまうなんて…
『そう、落ちこみなさんな。お主は悪くない。悪いのは全てわしじゃ!しっかりスキルを把握してなかったことも、説明不足だったことも、こんな時の対策をしてなかったことも全てわしが悪い』
慰めてくれてるのか?
罪悪感を柔らげようとしてるのか?
神様は優しいな
「それで、俺はどうしたらいいですか? 」
俺はどんな罰でも受け入れる覚悟はある
「そう、じゃな…この地球ダンジョンでしっかり《生き延びろ》!そして自分のせいだと《気負うな》!それだけじゃ、約束!」
本当に神様は優しいお方だ。
神様の言うことには逆らえない…
そうゆう意味でしょ?
「はい……分かりました!」
俺は何があろうと生き延びる!そう決意した。
『まぁ、今回のダンジョン化もある意味人類が強くなるための壁ということじゃな。一応スキル等も取得しやすいように調整もしたし、今までの天災同様に乗り越えてくれるはずじゃ』
─と神様は呟いていた。
───────
そして俺は神様に感謝と別れを告げて瞬間移動で部屋へと戻った。
その後、瞬間移動で天界と異世界へ行けないようスキルに修正がかかっていたのだった。