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地球ダンジョン  作者: 涼夜
34/39

34、ヴァンパイア



あのハイオークナイトとの一戦から一日が経過した頃、無事にショッピングセンターを拠点化することができた。

いや、拠点というより要塞と言ったほうが似合うかもしれない。

【土魔法】スキル持ちとダイナマイトを作れる【爆弾生成】スキル持ちの人の頑張りによって、ショッピングセンターの周りに用水路と繋げた深い水掘りができた。しかも剥き出しの高圧電流の配線を何ヵ所か浸けているので水に触れた魔物は感電し溺死する仕様だ。

唯一の通り道である正面の橋はどこよりも警備が厳重なので魔物の入る余地はない。



「ショッピングセンターを拠点にできたのはかなり大きいな。かなりの住民が移住できそうだ」


一部は腐ってたので廃棄したが、食品は大量にあるし、サバイバルグッズやキャンプ道具のあるスポーツ用品店、服屋、寝具屋に本屋や娯楽施設等々がショッピングセンターにはある。


夏子「そうね、4、5階に駐車されてた車の状態もかなり良かったから集団生活でストレスの溜まってる人にもプライベート空間が確保できるしね」


「まぁ遠征に参加した俺らは1人1台割り当てられたが、移住者は警備、清掃、管理とかをしないと使えないんだろ?」


「それはそうよ!車は沢山あるとはいえ数には限りがあるからね。働かない人には権利なしよ」


「それもそうか。それで残りの問題は安全地帯の結界がないから危険と隣合わせな点と水道もトイレも使えない点だな」


「水道のことなら安心して。あの風呂作りに協力してくれた配管関係の仕事をしてた人が【配水管管理】ってスキルを使えるからその人が到着し次第水道もトイレも使えるわ。ついでに風呂の建設もね」


「へぇー、上下水道を使えるようにするスキルか。便利だな」


「でも、私の【回路把握】同様に使う分だけ魔石を消費するから今まで以上に魔石集めと節電節水が重要になってくるわね」


「確かに、ショッピングセンター規模の維持だもんな。…………というか、明良と黄瀬はまだあそこにいるのか……」


「……えぇ、桃ちゃんが寄り添っているんだけど、明良君はまだ……」


「行ってみるか……」


「そうね……」


俺と夏子はショッピングセンター内の片付けを切り上げ屋上へと向かった。


屋上には4つの簡易な墓石が並び、その前に座りこむ明良とそこに寄り添う黄瀬の姿があった。

明良の後輩達の墓だ。遺体は火葬され明良の希望で屋上にスキルで墓を建ててもらい骨が埋葬された。


「明良……」


呼びかけてみるが何を言ったらいいのか思い浮かばない。


明良「涼夜か……なんだよ」


「後輩達の事は本当に残念だと思う…………」


「それは何度も聞いた」


「気のきいた事は言ってやれないが……あいつらだってお遊びじゃなく死を覚悟の上で遠征に望んでいたはずだ。いい加減前を向け。じゃないとあいつらも安心して天国にいけないんじゃないか?」


「そんなのわかってる。だけど、まだ気持ちの整理がつかないんだ……………なぁ涼夜、もし俺が死んだら涼夜は悲しいか?」


「当たり前だ!俺だけじゃなく黄瀬も夏子も悲しむ。だからそんなバカなことは言うな。一人で思い詰めるなよ!お前が俺に言った言葉だ!」


黄瀬「そうよ!アキ君がいなくなったら私生きてけない!」

夏子「感傷にふけるのはいいけど変な気を起こさないでよね。私達はもうかけがえのない仲間なんだから!残された人の気持ちもあるのよ」


「明良は簡単には死なん。こんなにもお前を大切に思う仲間がお前を守るからな。だからお前も強くなれ。失いたくなかったら俺達を守れるくらいに強く!」


明良「桃花……涼夜、夏子……ありがとう。…………なんとなく心の整理ができた気がする。そして悪かったな。辛気くさくして」


「こんな世界だ、しょうがない。気にするな。…………って俺が言えた立場じゃないが……」


こんな世界にした本人が言えたことじゃないよな


明良「それこそ気にするなって。終わったことだ。」


俺は座りこむ明良に手をさしのべ、強い握手をしながら明良を引っ張り起こした。



「取り込み中悪いんだが、少しいいか?」


背後から声が聞こえた。

振り返るとそこには川上さんの姿があった


夏子「何かようですか?」


川上「ちょっと聞きたいことがあってね、そこの赤井君に」


「俺に何のようですか?」


嫌な予感がする。

そして、川上さんの見透かしたような眼差しに不安が強まる。


川上「キミがあのハイオークナイトを封じこめた結界を張った事実に間違いはないかい?」


完全にばれてる。

無理もないか。バリアスキルを使った時に周りに何人も人がいたからな。

パニック状態だったから大丈夫かと思ったがダメだったか。


「そうですがなにか?」


「この度は本当にありがとう!あの結界がなかったら我々は全滅していたことだろう!よくやってくれた!」


川上さんはビシッと敬礼をした。


「いや、こちらこそですよ。川上さんが皆をまとめて色々と指示を出してくれたからこそショッピングセンターを拠点にすることができたんですし」


「いや、そんな事はない。私の指示ミスにより若く勇敢な4人が命を落としてしまった……緑川君本当に申し訳ない!」


明良「川上さんが謝る事じゃない。そして川上さんを責めるつもりはないから気負わないでいいですよ…」


「…お言葉感謝する。後程お墓に花を手向けさせてもらいます」


川上さんは深くお辞儀をした。


「それと、赤井さん、今回のハイオークナイトの一番の功労者であるあなたに、ハイオークナイトの剣と盾、それとドロップアイテムを確保してますのでお受けとりください」


「でもあれは俺だけで倒したわけじゃ──」


明良「涼夜、あの豚の剣は俺にくれ!」


明良が真剣な顔で俺に願った。


「いいのか?あの剣はお前の大事な後輩を斬り殺した剣なんだぞ?」


「だからこそだ!後輩達の気持ちを忘れないためにも!」


「…わかった。じゃあ川上さん、剣は明良にあげて、盾はそちらで有効活用して下さい。」


川上「いいんですか?」


一応、夏子や黄瀬の方を見て確認をとるが「私達は何もできなかったから」と納得している。


「はい。それで、ドロップアイテムはどんなのでした?」


正直、あの時はドロップアイテムが落ちたことすらきづかなかった。


「《魔除けの欠片》という半径2mに魔物が入れない空間を発生させるものでしたね」


「じゃあそれもショッピングセンターの入口にでも設置するなりして有効活用して下さい」


そう言うと川上さんはとても俺に感謝し、その後、「まだ用事があるので私はこれで失礼します。ハイオークナイトの剣は緑川君に後程渡しに向かう」と言って去っていった。


◇◇◇


夏子「じゃあ今後の方針だけど、とりあえず涼君は移住者が安全にショッピングセンターにこれるようにまた夜中に安全経路を作ってくれる?」


「了解。北校とカキ工の安全経路と繋げば一晩でできるはずだ」


「あと皆ショッピングセンターへの移住者の道中の護衛や地下空間の探索を頼まれると思うからそのときはお願いね」


「わかった」

「了解です」


そうして俺達は解散した。


夏子は備品の管理や配給計画、今後の方針を確認しにショピングセンターの臨時会議室へ

明良と黄瀬は色々しに

俺は夜中の安全経路作りに備えて割り当てられた俺の車に仮眠をしに向かった。


俺の割り当てられた車はベージュの軽自動車だ。

無理やりドアをこじ開けたのではなく【ピッキング】スキル持ちに解錠してもらったので鍵は壊れてない。

完全なプライベート空間。窓に遮光カーテンを付けたので昼間でもゆっくり寝られる。


今日はゆっくり寝よう


◇◇◇◇◇


夜中に目が覚めた。


ショッピングセンターは暗闇に包まれている。それもそのはず、昨晩は夜遅くまでショッピングセンターの照明をつけていたために魔物が寄ってきてかなり大変だったのだ。なので、ショッピングセンターでは夕暮れには消灯し、夜中に電気をつける際は外に光が漏れないように窓には遮光カーテンをつけている。


そんな暗闇の中、俺はショッピングセンターの外に瞬間移動した。


めまいなし!

【暗視】スキルよし!

周囲に魔物の気配なし!


そしていつものことながら夜中に外に遠征に出ているやつはいない。仕事がやりやすくて助かるが、どうもこの夜中の静まり具合にはゾクっと寒気がする。


とりあえずカキ工と北校を繋ぐ安全経路が近くを通ってるからその途中からショッピングセンターへの安全経路を繋げよう。


まずは道路に転がる廃車を収納!

人の死体も転がってるのだが、もうほとんど原型を保ってない。放置でいいだろう。


次に収納した廃車を道路の両端に4段に積み上げて【溶接】スキルで崩れないようにくっつける、それを繰り返す。車と車の間にどうしてもできる隙間はそこらに転がってるブロックやらバイク、自転車等で埋める。


移動し、収納から取り出して溶接するだけ。ほとんど力はいらない単純作業。

後は積み上げてる時に出る多少の音によって寄ってくる魔物に警戒するだけ。


本当に手慣れたもんだな。


そういえば大蜘蛛は車の壁を越えて侵入することがあるって言ってたし今度天井に金網でもつけてみよ─


──ん?【空間認識能力】の範囲内に反応がある。


魔物…じゃないな、人だ。それも体型的に若い女性だ。


こんな夜中に一人で何してるんだ?

怪しい…


こっそり近づいてみよう。


【気配遮断】


俺はその女性にばれないようにこっそりと近づいた。


女性は赤茶のフード付きローブを着て片手に包丁を携えていた。


夜中に一人で歩く女性にこっそり近づく、ってまるでストーカーになった気分だ。

もしかしたら選択可能職業に《ストーカー》ってのが表示されるかもしれないな


思わず小さく鼻で笑ってしまった。


「だれ?!魔物?!出てきなさい!」


(え?!)


女性が俺の隠れている茂みに向けていい放ち包丁を構えた。


明らかに俺の存在を感知しているようすだ。


気配遮断してたのに…まさか鼻で笑ったからか?


とりあえず出るか、


「まて!魔物じゃない。だから包丁をおろしてくれ!」


両手をあげて敵意なしを全力でアピールする。


「人?!もー、何言ってるのかわかんない…」


「何言ってるのかわからないって…包丁をおろしてくれ…って、え?まてよ、この人、日本語をしゃべってない…」


でもまさか…そんな事って……


「あー、もしもし、これで理解できるかな?とりあえず包丁をおろしてくれないか?」


「えっ!!あんた、私の世界の言葉しゃべれんの?!」


女性は驚いた様子だ。


俺も驚いた。まさか異世界の言葉を喋る人に地球で遭遇するなんて。


「ああ、一応そういうスキルを持ってるんだ」


神様がサービスでくれた固有スキル【言語理解】を


「やった!ようやくまともに話せる人に会えた!」


女性はガッツポーズをとって喜んでいた


「えーと、俺は赤井涼夜。あんた、もしかして…異世界人だったりする?」


そんな事ありえないと思うが一応…


「私の名前はシルバ・ゴルディ19歳のヴァンパイアよ。そして違う世界からきた者よ」


シルバ・ゴルディはフードをおろし、銀髪の長い髪を肩にたなびかせた。


異世界人…しかもヴァンパイア?


嘘だろ?地球ダンジョンって魔物の発生以外にも異世界ヴァンパイアを召還したりするのか?


「ヴァンパイア?もしかして魔物か?!」


「バカなの?ヴァンパイアは立派な魔人族よ魔物じゃないわ。そんなことも知らないの?」


あー、そういうば異世界のギルドで人族以外にも色んな種族が存在する、みたいなことを聞いたような気がする。


「悪いが、この世界にはヴァンパイアなんておとぎ話の中にしか存在しないんでな。この世界は人族onlyだ」


「まじ?!」


「マジだ。それより近くに魔物がきてる、とりあえず話しは移動してからだ。掴まってくれ」


俺は瞬間移動するためシルバに手を差しのべ、掴まるように言った。


「掴んだけど、急に掴まれと─」


シュン


────────


シュン


「─かどし…た…ん?…え!どこここ?!」


「俺の元住んでた家に瞬間移動させてもらったが…問題あるか?」


窓も全部鋼材で閉じて真っ暗だが、シルバも月明かりもない夜中を歩いていたし暗闇でも大丈夫だと思ったが


「いや、ないけど。アカイっていったっけ?瞬間移動なんてレアなスキルもってんの?」


「ああ、一応、俺の仲間以外には秘密にしてるから誰にも言うなよ?」


「チクるもなにもこの世界の人と喋れんし…」


「それもそうか。というかシルバはどうやってこの世界に来たんだ?」


「あー、それがなんか知らないけど、一ヶ月位前におじいちゃん家に遊びに行こうと思って転移石を発動したら急にマナの流れがおかしくなって気がついたらこの異世界にやって来てたの」


一ヶ月位前…急にマナの流れがおかしく…


絶対に俺のせいだ…!


俺が異世界との壁に穴を開けたことにより異世界からこちらの世界に急にマナが流れ込んだ。それに巻き込まれたのだろう……


「しかも種族的に日向に長時間いれないから、すぐさま空き家に潜り混んでクローゼットの中で夜まで寝ることにしたんだけど、いざ夜に起きてみたら、なぜか街中に魔物が溢れてるわ、人の死体は転がってるわでマジヤバかったのよ」


「はは…それは…大変だったろうな」


「うん。マジで大変だった。食べれそうな食料は日に日に見つからなくなるし、明かりのついてる人族の建物に行こうとしても結界に阻まれるし、夜中に運よく人に遭遇しても言葉は通じないし挙げ句魔物だと思われたのか攻撃されるし、さんざんよ!」


本当に悪いことをした…

言葉も通じない、魔物の溢れる世界で安全地帯にも入れず昼間は外にも出れない…俺とは比べものにならないほどの異世界サバイバルだったろう

俺のせいで…


「なんかごめんな……責任とってシルバのことはこれからちゃん面倒みるから」


「え…別に人族に攻撃されたからってアカイを責めてるわけじゃないんだけど………まぁ、言葉の唯一通じるアカイが面倒見てくれるって言うなら頼もしい!遠慮なく甘えさせてもらおっかな!よろしく!」


勘違いしてるようだが本当に原因は俺だ。


「あ、ああ、こちらこそよろしく!」


「それじゃあさっそく、アカイの血を飲ませてくれない?」


「えっ?血?」


「そう血。こっちにきてから人間の生き血を飲んでないから本来の力が全然出せないのよね」


「本来の力って…血を飲むとパワーアップするのか?」


「まぁ、筋力値も一定時間上がるんだけど、他に羽をはやして空を飛んだり、五感を鋭くしたりできるかな。それと生き血は美味しいし!」


「血を吸われて眷属になってしまったりは…」


「ならないって!ちょっとチクッとするだけ」


「じゃ、じゃあちょっとだけな」


この子の人生を狂わした責任も感じてるし…断るのもな


「やった!じゃあいただきまーす!」


シルバは俺に抱きつきそのまま首筋に噛みついた。


確かにチクッとするだけでそこまで痛くない。


女子に抱きつかれて首筋を噛まれるなんて結構恥ずかしい……


そうだ!デカイ蚊に刺されてるだけと思いこもう。無心だ。


…………………………

…………………

……


「ぷはっ!アカイ、心臓バグバグさせすぎ~!そんなに興奮したの?」


シルバはニヤニヤしながら言ってくる。


「興奮なんてしてない。普段から心拍数が高いだけだ」


「本当かなぁ?さっきも急に"責任とって面倒みる"とか言ってたし、実は私に一目惚れしたんでょ!」


「してない。顔がいいからって自意識過剰すぎだ。それに最近俺には本当に好きだと思える人ができたんだからな!」


「なんだ……残念!その子可愛いの?」


「関係ないだろ。まぁ可愛いな……ってそんな事より予定が狂った。とりあえず昼間には起きれるように寝ておけ、そのときに俺のパーティメンバーを紹介するからそこで今後について皆で話しあう」


俺は収納からベッドを取り出した。


「収納スキルまで持ってるんだ!ますます凄いわねアカイ。それで?ベッドなんて出して一緒に寝ようってこと?」


「何言ってんだよ。シルバが寝るためのベッドだ。俺はまだまだ終わらせないといけない用事があるから徹夜だ。飲み物と食料も置いとくから腹がへったら食べろ。じゃあ俺は行く」


「そう言えば夜中に何を──って、もういないし!」


◇◇◇◇◇


俺はシルバを残し、中途半端に終わらせた安全経路作りを再開した。


──


結果、なんとか日の出前には安全経路はショッピングセンターの駐車場まで繋げるところまで完成した。

最後の方なんてショッピングセンターに近づき過ぎて入口の見張りをしてた人にバレる寸前だった。


ま、ともかく移住者の移動はかなり安全になったろう。


とりあえず昼まで俺も寝てシルバの紹介だな。


夏子達どんな反応するかな…


なんか最近、気苦労が多い気がするな。どこかで一回リフレッシュしないと…


そうして俺はプライベート空間の車で眠りについた。




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