表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地球ダンジョン  作者: 涼夜
28/39

28、恨み


《信号無視のトラック、男子高校生を撥ね逃走。犯人未だみつからず》


そんな記事の書かれた新聞を片手に私は笑っていた。


「はっはっは!ざまあみろ!」


私の名前は木本六朗(きもとろくろう)30歳。無職独身。実家暮らし


親兄弟からは「穀潰しの寄生虫」だの「そろそろ働け」だのと言われる人生だ。


だが、初めからこんなだったわけではない。私は大学を卒業し小学校教員として真面目に働く立派な大人だった。

そんな私の人生を壊したのは憎き糞ガキども……特に赤井涼夜と緋田暖昼の二人だ!


8年程前のこと……

私が新米の先生の頃、志雄子小学校の5年2組の担任となった。

初めて任されるクラスということもあって張り切って仕事に励んでいたのだが………

女子への過度なスキンシップを赤井と緋田に見られてしまい、赤井と緋田が私のことを「ロリコン教師」「セクハラ野郎」「キモ先」だのと言い始めたのがきっかけでクラスの皆も便乗し、私のことをバカにし始め、最後には学級崩壊となった。


本当に恨めしいガキどもだ。


そして俺はすぐに違う小学校に飛ばされるように移って行った。

赤井、緋田から離れられて本当に喜ばしく思って気を抜いてしまったのだろう。二年目の時に、女児へのセクハラがばれて捕まってしまった。

私が何度も「誤解だ!」と訴えかけても、「前の学校でもセクハラが問題となった」ということで信じてもらえなかった。


あれもこれも、すべて赤井、緋田が元凶だ。あいつらさえいなければ……


仕事も辞め、日々仕事もせず恨む毎日が続いてたある日のこと、自転車に乗って楽しそうに談笑しながら下校している赤井の姿を見かけてしまった。


俺がこんな人生を送る原因を作ったあいつがなんで人生充実したように楽しんでんだよ……!


私の恨みは最高潮に達し赤井への復讐を思いついた。


赤井の下校時間を調べあげ、この時間帯にサボっているトラック運転手のトラックを奪う計画を立て実行した。


青信号を渡る赤井を撥ね飛ばし逃走からの盗んだバイクに乗りついでの逃走……


「私の計画は完璧だった。逃走経路での目撃者なし。変装も完璧、指紋一つ残ってない」


こんなに上手くいくとは思わなかった。こんどは緋田でも狙ってみようか!やばい、はまりそう!


──ゴゴゴ……


「揺れた?地震?」


ウーーウー────


「こんどはサイレン?それに外が騒がしいな……」


と窓を開けて外を見るとそこには魔物が人を襲い、あちこちから煙が上がっている光景があった……


「な、なんだこれは!……に逃げなきゃ!ここらの避難所は確か……丘の上の北高だ!」


そう思い、部屋を飛び出し家の階段を降りていくと、一階で母がゴブリンに襲われて私に助けを求めてきた。


だが、そんなことは知ったことか!自分の命が優先だ!


そうして、母がゴブリンに襲われている間に車に乗り込み北高へと車を走らせた。

道中、魔物以外にも人も撥ね飛ばしてしまってたが、今なら仕方のないことだと気にしない。

〜〜〜〜〜〜〜

そして北高の安全地帯での生活が始まって二週間が経過したころ私は目を疑う光景に直面した。


私が殺したはずの赤井涼夜が普通に生きているのを目撃した。

北高で女子と楽しげに談笑していた。


どういうことだ?何らかのスキルで復活したのか?


まぁ、何でもいい。もう一度殺してやるまでだ!

ここ最近の不自由な生活にイライラしてたんだ。ストレス発散にはちょうどいい!


そう思い、赤井が拠点にしているというカキ工へやってきた。


───────


そして今現在、赤井が入って行った生徒会室の近くに隠れて陣取っているが……


「全然、赤井一人にならない!それに何度も見失ってしまう……くそっ!こんなんじゃ赤井を殺してやる計画もたてれねぇ!」


そんなことを小さく呟いた瞬間─


「ははーん、なるほどな。懐かしい顔がいると思って近づいてみたが、そんなことを考えてたとはな!」


急に背後から声が聞こえ、即座に振り返ると……


「お、お前…緋田か!いつの間に!」


あの憎き緋田……いや、それよりもこいつに聞かれた?!


ハル「まあ、話しは後で、じっくり聞かせてもらうぜ、キモ先……よ!!」


緋田は私のみぞおちに膝蹴りを撃ち込み私は気が遠退いて行った……


〜〜〜〜〜〜〜


────────────


う……う……うぅ、私は……いったい……


──グルル……


「う、うわぁっ!ま、魔物!」


目が覚めると私の目の前には鋭い金属の顎をもった狼の魔物がヨダレを垂らして威嚇していた


しかも私はロープで縛られている!


「おっ!起きたみみたいだぜ!ハル兄」

ハル「お、やっとか!……おい、ケン太狼、待て!まだ喰うなよ!」


緋田の声に鉄顎狼はおとなしくお座りした


「何のまねだ?!ここはどこだ?緋田、こんなことしてただですむと思うなよ!」


ハル「黙れ!!人殺しが!」

「あっ、それとここは防音の地下室だから騒いでも助けはこないよー」


くっ……


「もしかして私が「赤井君を殺してやる!」みたいなこと言ったから勘違いしたのか?ははっ、あれは対戦ゲームの話しさ!知らない?私と赤井君はゲーム友達でね~、最近負け続きだったから「こんどこそ倒してやる!」って意味合いで言っただけさ!」


お願いだ。これで騙されてくれ……


ハル「バカか、そんな誤魔化しに引っ掛かるかよ。お前の服の中からナイフにロープ、毒液らしき小瓶まででてきたぜ」


くそっ!あっ、でも……


「それは魔物対策だ!学校でも剣やら弓やら携帯してる人いるだろ?」


「残念~!これなーんだ?」


そう言って緋田の弟らしき少年が紙切れを取り出した


「そ、それは……」


それも回収されてたのか……

終わった……


ハル「なになに【赤井暗殺計画】……物騒なこと沢山書いてるもんだぜ。しかも赤井をトラックで撥ね飛ばして殺した犯人もお前とはな!キモ先よっ!何とか言ったらどうだ!」


「私を殺すのか……?」


「あっ、言い分はないんだ」

ハル「殺人未遂のお前はぼこぼこにした後、俺の【パシリ】にするつもりだったがな……この紙の事実を知ってしまった以上、お前を生かすつもりはねぇ」


緋田は俺に短機関銃の銃口を向けた。


「おっさん、最後に言い残すことないの?」


緋田弟がニコニコして聞いてくる


私はこんなところで死ぬのか?

どうにかして──


「じゃ……じゃあ取引だ─」


─パンパパパパーン







──────────


床に血が広がった


「あ~あ、ハル兄、最後に一言ぐらい言わせてあげればいいのに!」


ハル「悪人に情けは無用だ。ケン太狼、もう喰っていいぞ」


その命令で鉄顎狼は尻尾を振って死体にかぶりつく


「本当に世の中って汚い心の人がいるよね~」


ハル「そうだな。理温(りおん)はあんな大人になるじゃねぇぞ」


理温「わかってるって。そんで、ハル兄、今回は何のスキルが手に入ったんだ?」


ハル「今、選んでるところだ。……チッ、キモ先の野郎、全然いいスキルもってねぇぜ……もう【意思伝達】でいいや」


理温「いいな~ハル兄。固有スキル【強欲】って殺した相手の持ってたスキルを一つ奪えるんだろ~」


ハル「正確には奪うスキルは1/2スケールの劣化版になるけどな。今回の【意思伝達1/2】だと登録できる人数が半分になるってところか」


理温「それでもすげぇよ。殺せば殺すほどスキルが増えるだからさ」


ハル「わかってると思うが、俺が殺すのはよっぽどの悪人か、助かる見込みのない死にかけで介錯を必要としてる人だけだ。好き好んで殺してるわけじゃない!」


理温「わかってるって!正義のための必要な殺しだろ~。多数の魔物を【テイム】して志雄子小を支配しようとした中年のやつも、カキ工を乗っ取ろうとしてた【パシリ】スキルのやつも自業自得だしな~」



ハル「ん、じゃ俺はそろそろ、あいつらの動向でも探ってくっかな!」


理温「また、涼夜さん達のストーカー?」


ハル「ストーカーじゃねぇよ!立派な情報収集だろ!あいつら近々、八岐大蛇を討伐するらしいからな」


理温「へいへい。【気配遮断】があるとはいえあんまり近づき過ぎるとばれるぞ~」


ハル「おう!じゃ行ってくる」



そんな会話がどこかの地下室で行われていたのであった───


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ