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地球ダンジョン  作者: 涼夜
27/39

27、ハル

緋田暖昼(あけだはるひ)、通称ハルとは小学一年生の頃、同じクラスになったことで知り合った。

最初の頃はお互い自己中な性格だったからぶつかることが多々あったが、なんやかんやあって意気投合して親友となった。


俺とハルはかなりの素行不良として有名だったと思う。

一緒になってキモい同級生へのイジメをしたり、キモい新任の担任をイジメて学級崩壊へ追い込んだり、上級生とのケンカの数々、障害沙汰……等々

思い返しても恥ずかしくなるほどの悪いことを共にしてきた悪友だ。

あの頃は何をするにも本当に楽しかった。


だが俺は、小学高学年に上がるにつれ自らの行いを恥じるようになり、悪い事から足を洗ったことで、ハルとの仲はだんだん疎遠になっていった。


それから、小学校を卒業し、お互い家の位置的に違う中学に進んだことでもう会うことはないと思ってたんだが、カキ工の入学式でハルと再開した。

ハルはカキ工の電子機械科に入ったそうだ。


入学式でハルに再開し、昔の思い出話に花を咲かせたり、色なことを話した。

その中でハルは中学で悪い事から足を洗ってまっとうに自分の正義を貫いて生きていると語っていた……


と、この時はハルも変わってまともなやつになってくれたことを喜んでいたのだが……

どうやらハルの中の正義は少し変わっていると後で知った。


ハルは何か悪い事をするやつを見つけたらまずぼこぼこにボコって止めさせ解決するやり方をする。

それで、タバコを吸ってた生徒や同級生をイジメてた生徒をボコっていたって噂を何度も耳にしたもんだ。


まぁ、つまりハルは俺の小学生の頃の悪友で、今は正義を通すようなやつに変わったが、行き過ぎな点や自分の考えを押し付けるところは変わってないらしい。


ついでに言うとハルは昔からそれなりに頭が切れてずる賢く、運動神経もよかった。」


──と、俺は夏子と黄瀬に話した。


黄瀬「……緋田さんって人かなり危なそうな人ですね……」


「まぁ、気の大きいやつだが、悪いことしないかぎり危害を加えてくることはないやつだ」


夏子「というか、涼君が昔やんちゃなのは知ってたけど。本当に酷かったのね……」


やっぱり印象悪くなったな……

余計なことは言うんじゃなかったか……


「あれらのことには本当に反省してる。…………もしかして俺のこともう信用できないか?」


同じパーティにこんなやついたら不安だよな……


夏子「いいえ。涼君のしたことは悪いことだけど。それは昔の話し。私達が信頼し、頼れると思えるのは今の涼君なんだから!」

黄瀬「はい!そうですよ!赤井先輩は大事な仲間です。」

明良「昔も今も俺は涼夜を信じてるぜ!」


「皆……ありがとう!」


こいつらに出会えて本当によかった!心からそう思える


恵「私も涼君を信じてるよ!」


…………


そう言えば恵もいたんだった……


「ありがとう。恵」


明良「それで、話し戻すけど。ハルに関しては俺はこのままでいいと思う」


「そうだな。ハルがいることで今回のようなことを未然に防げるかもしれないし、抑止力にもなって治安が保たれるはずだ」


夏子「だとしても、人を自分の判断だけで殺すなんて許せないわ……」


黄瀬「すみません夏子先輩……私もアキ君達に賛成です……」


夏子「桃ちゃんまで……白川さんはどうなの?」

恵「私はなんとも……」


夏子「…………」


「もちろん。ハルのあの身勝手さは許すわけではないが……」

黄瀬「気配遮断で身を潜められてる以上、どうしようもないじゃないですか」

明良「それにハルは悪いことしない人に危害をくわえないんだろ?それに変にハルを刺激すると邪魔者と見なされて俺らを殺しにくるかもしれないしさ……」


夏子「……はぁ……そうね。わかったは、今は保留ってことにしときましょう」


「で、恵はこれからどうすんだ?北高へ帰るなら瞬間移動で送ってくぞ?」


もう昼だ。

恵には丸1日も付き合ってもらったな


明良「白川帰るのか?もういっそ俺達のパーティに入ってこの家で一緒に暮らさないか?」

黄瀬「いいね!それ!まだ部屋の空きもありますし」


確かに恵ならかなり戦力になるはずだ


「うん。お誘いありがとう。私もカキ工に留まりたい……と言いたいところだけど北高も人手不足だからね、私が抜けるわけにもいかないの。瞬間移動お願い涼君!」


そう言って恵は俺の肩に手を置いた


明良「そっか」

黄瀬「白川さん今回は本当にありがとうございました。」

夏子「ありがとうね。北高にも支援で行くことがあるからまた会いましょう」


恵「またねー」


「じゃあ、いくぞ!」

シュン───






シュン────

「着いたぞ」


俺と恵は北高近くの民家に着いた。

北高生徒から逃げて一時立て籠った家だ。ここなら誰にも見られることはない


恵「本当にすごいね。瞬間移動って」


「まぁな。それより、今回は本当にありがとう。恵のおかげで無事解決できた」


恵「そんな……私なんて捕まってしまって足を引っ張っただけだよ」


「そんなことない。恵がいてくれたおかげで犯人を見つけることができたんだぞ!」


恵「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ」


「そっか。じゃあ、まぁ、俺はこれで帰るから、またな!」


恵「待って!」


帰ろうとした俺の服を掴んで恵がとめた。

その表情は真剣な顔だった


「なんだ?」


恵「涼君!私ともう一度付き合ってください!私、涼君とずっと一緒にいたいの!」


「え…………」


驚いた……

恵はあんな酷い思いをさせた俺をまた好きでいてくれてるのか……


恵「どんな返事でも受け入れるから真剣に答えて…………!」


もちろんだ。


恵は普通に考えてとてもいいやつだ。

しかし─


「ありがとう。恵の気持ちは本当に嬉しい……だがわるい、俺には今気になるやつがいるんだ……」


俺がそう答える……すると恵は涙をぬぐうように目をこすって笑った


恵「そっか!残念だな~……今ならいけると思ってたのにねっ!どうせ気になる相手ってあの青景さんでしょ?」


「まあな……誰にも言うなよ」


まぁ、夏子は気になるってだけで恋愛感情かはわからないが


「うん……わかってる。じゃ、じゃあ、もう私行くね!送ってくれてありがとう……」


恵は背を向けながらそう言った。


気づかれないようにしてるつもりだろうが、俺には恵が涙を流してることがわかった。


恵も、大切な家族や友を亡くして俺みたいなやつでも心のよりどころになってほしかったのだろう……

なんてことを考えてしまったが…………なんだろう罪悪感がある


「その……恵のことも俺の中では大切なやつだと思ってるぞ!うん、恵かわいいし!」


とりあえず、フォローで誉めとこう。こんな時、気のきいたセリフが思い浮かばない


恵「ふふっ、涼君ありがとう。嘘でも嬉しいな!」


恵は涙をぬぐって振り返り笑顔で答えてくれた


「嘘じゃないって!」


恵「ありがとっ。じゃあ私、行くね!また北高にきたら会いにきてね!」


そう言いながら恵は北高へと帰っていった。


………………


「帰るか……」

シュン

────────────



──────

シュン


明良「おっ、戻ったか」

黄瀬「お帰りなさい」

夏子「何だか時間かかってたけど何かあったの?」

「いや、別になんでも。ちょっと話してただけだ」

告白のことは恵の気持ちも考えて言わない方がいいだろう


夏子「そう、それならいんだけど」


「……」


夏子か……俺は夏子が好きなのだろうか?気になってたって言ってもそれはただ単に昔一緒に遊んでた、なっちゃんだったからって発覚したしな……理由がわかった今でもなんとなく気になるやつだが……


夏子「ちょ、ちょっと何?私のことじっと見つめて!恥ずかしいのだけど」


おっと、夏子を見ながら考えこんでしまってた。


「いや、そう言えば夏子って昔はショートカットだったよなって思ってさ…」


それなりに記憶力がいい俺が、なかなか夏子となっちゃんが同一人物だと気づかなかったのは夏子が髪を伸ばして印象が変わってたからだ


明良「涼夜と夏子って昔に会ってたんだっけ」


明良には夏子と昔あってたことを一応話している


夏子「はぁ、忘れたのね涼君……私が髪を伸ばすきっかけを作ったのは涼君よ」


「えっ!俺?」


夏子「ええ。小4の夏、涼君が『なっちゃんは髪長い方が似合うと思う!』って言ったのよ!」


「あー、なんか言ったような気がする……」


夏子「だから私、それから髪を伸ばし始めて来年の夏に涼君に会うのを楽しみにしてたのに……涼君来なくなったのよ!」


ばあちゃんが亡くなったからな


「悪かった。うん!夏子、長い髪似合ってる!!」


夏子「そ、そう?ありがとう」


黄瀬「本当に夏子先輩と赤井先輩って運命みたいな出会いですよね~」

明良「いっそ、本当に付き合えばいいのにな」


「「…………」」


明良「まぁ、そんなことより涼夜も帰ってきたことだし話しを戻すぞ。涼夜はハルが持ってた短機関銃って作れそうか?」


短機関銃の話しをしてたのか


「いや、無理だな……ネットで調べた資料があるとはいえ俺にはあのレベルの部品を創造して組み立てる技術はない」


明良「そうか。……涼夜でも無理な物をどうやってハルは作ったんだろうな?」


「いや、ハルだからこそできたのかもしれない」


明良「どういうことだ?」


「明良は知らなかったかもしれんがハルって実はかなりのガンマニアなんだ。小学生の頃一度ハルの家で大量のモデルガンからエアガンやらガスガンを見たことがある」


明良「まじか……」


黄瀬「なんにしろ、短機関銃のようなものを作れるのは今のところ緋田君しかいないってわけですね」


夏子「どうにかして緋田君と友好的にコンタクトを取りたいところね」


ハルが気配遮断を使っている以上難しい話しだな……




「あっ!そういえば色々あって言うの忘れてたが。涼夜、修学旅行で行った所に瞬間移動したことあるのか?」


「そういえばまだ行ってないな……」


ここのところ身の回りのことが手一杯でそんなこと忘れていた!


俺は家族旅行なんて経験はないが、ちゃんと修学旅行には行った。

小学校が京都大阪奈良、中学が沖縄、高校が東京だった。


俺は魔物発生からまだこの市を出ていない。確かに明良の言うように修学旅行で行った地なら瞬間移動できるのだから他の都市部の現状を把握するには行っておかないと


夏子「なんで私も気づかなかったのかしら。今から行きましょう!」

黄瀬「そうですね」


「わかった!掴まれ、まずは京都に瞬間移動する!」


シュン



────────


京都───


シュン



明良「うそだろ……」

黄瀬「そんな……」

夏子「壊滅状態ね」


俺達の目の前には伝統ある京都の町並みはほとんど破壊され瓦礫となった建物の残骸たけが散らばった風景が広がっていた。


ゴブリンやオークなどの魔物は見当たらないが地面には所々大きな穴が空いており遠くでは数匹の気持ち悪いデカイワーム生物が地上から伸びていた。


すると──

ゴゴゴゴゴっと地面が揺れたと思ったら近くの穴からデカイワーム生物が現れた。


「うわぁ!!」

「見つかった!」

「掴まれ!」


ワームはすぐさま俺達にギザギザの鋭い歯が並ぶ大きな口を開けて向かってきた


「瞬間移動!!!」


シュン


─────


家────


シュン


明良「危なかった~……瞬間移動ナイス」


夏子「あんな大きな魔物が複数いるなんて……京都に生き残ってる人はいるのかしら」


黄瀬「気を取り直して次に行きましょう」


「そうだな。京都は壊滅的でも他は無事かもしれない!いくぞ!」


────────


そして俺達は大阪、奈良、沖縄、東京、と次々回って行った。


結論から言うと……どの都市も無事とは言い難い状態だった。


大阪では統率のとれたゾンビの軍団が襲ってきた。ゾンビの上位種がゾンビ軍団を統率してるのかもしれない……


奈良では、手のひら大程ある巨大な蟻の群れがひしめいていた。あれはさすがにおぞましい……


沖縄では、怪獣映画でも見てる気分になるほど大きなクラーケンが海辺で暴れていた。アメリカの戦闘機がミサイルなどを撃って攻撃してたがタコ足で墜落させられる光景があった。


東京では上空で大きなドラゴンと自衛隊の戦闘機が戦っていた。鱗に覆われ火を吐く姿はまさにドラゴンそのもの、倒せるイメージが沸かないほどだった


それと、瞬間移動を使い過ぎて頭が痛い……

────────




家───


夏子「あんな魔物が存在するなんてね……」


黄瀬「そう考えるとこの地域って恵まれてたんですね……八岐大蛇がかわいくみえますよ……」


「ああ、…………やっぱり、都市部程魔物が多く、強いって考えが当たっているのかもしれないな」


山や、牧場に行った時は町に比べて魔物が少なかったしな


明良「そうだな。そう考えると万が一の時を考えて魔物が少ない田舎に拠点を一つ作っておくのもいいかもな」


それもいいな。今回みたいに安全地帯に入れなくなるような事になった時、町に高レベルの魔物がいる可能性もあるしな


夏子「そうね。それならおすすめの場所があるわ。近いうちに行きましょう。」


おすすめの場所?…………夏子と出会ったあの田舎か?

夏子の故郷であり俺のばあちゃんの家があった田舎。

あそこなら空き家もいくつかあるし、田畑も、山も、川も、海もあるとてものどかなド田舎。


「まぁ拠点作りもいいが、まずはレベル上げを急ごう。目標は『一週間以内に俺達だけで八岐大蛇を倒せるレベルまで行く!』だ!」


明良「いいなそれ!今日見たあんなレベルの魔物がこの町に来た時、今の俺達じゃあ逃げるしかできないしな!レベル上げは重要だ!」


黄瀬「ええっ!!私達だけで八岐大蛇をですか?それって無茶じゃ……」



夏子「…レベル上げも重要だけど私達には北高へ物資を運んだり、学校間の人の往来を安全にするために道路整備等の優先するべきことがあるんだから」


ああ、あの学校間の経路上にある邪魔な車を端に寄せて車やバイクで行き来できるようにするってやつか…………マジでやる予定だったのかよ


「それなら大丈夫だ。俺達には【身体強化】と【精神耐性】と【暗視】スキルがあるんだ。夜間に不眠不休でレベリングに励んでも、肉体面や精神面でも少しの無茶はきく」


夏子「つまり、寝ずにレベリングや道路整備をするってこと?」


「まったく寝ないってわけではないが一週間だけなら睡眠時間をいつもより数時間減らしても平気だろって話だ。それに道路整備は【収納】を多用するから人目につかないように夜間にする必要があるからな」


夏子「確かに……そうね。じゃあ、それでいきましょうか。二人もいい?」


黄瀬「はい。問題ないです!」

明良「う~ん。まぁしゃあないか!それでいいぞ」


「あっ、それと道路整備は基本俺しかやれないから、その間、近くでレベリングしておいてくれ。なんかあったら通信の指輪で呼ぶから駆けつけられる距離ぐらいでな」


「オッケー」

「わかったわ」

「わかりました」


そして今晩から俺達のレベリング週間が始まった。



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