22、青景夏子
私の名前は青景夏子18歳。
趣味は漫画やゲームや映画鑑賞
部活は弓道部に所属し、生徒会長も務めている。
両親は幼い頃に事故で亡くし、祖父母と一緒に古い日本家屋のような家で暮らしている。
今日も1日頑張ろう!
鏡の前で長い黒髪を整え学校へ向かった。
学校は、今日も朝から朝練をしている人達の掛け声が響く爽やかな朝。
私は進学予定なので、内定が決まって気楽な就職組と違ってこれからが本当に頑張らないといけない時期!
もう少しで生徒会長の任期も終る頃だし、頑張らないと!
そんなことを考えていた日の昼の事──
どこからか悲鳴が響きわたったと同時に魔物が教室に現れた。
町の方からサイレンが響くなか現れた蜘蛛の魔物はクラスメイト達を襲いだした。
「な……何これ……」
目の前のあまりのできごとをすぐには理解できなかった。
クラスメイトは悲鳴をあげて逃げだす。
大きな蜘蛛が人を殺した……
「皆逃げて!!!」
私は皆にそう叫んだ瞬間
廊下に出て行った男子にゴブリンが飛びかかってナイフでめった刺しにされていた
「!!!!」
【精神耐性スキルを獲得】
【精神耐性のレベルが上がりました】
頭に響く声と同時に冷静になった
状況確認のためクラスメイトが次々襲われている中私はそれを横目に窓の外を見た。
「嘘でしょ……」
窓の外にはあちこちから煙があがり、車は事故りまくり、人を襲い殺す魔物の姿が見えた。
町全体で……もしかしたら世界全体でおこってるの?!
そして理解した、助けを待ってても来そうにない、逃げる先もない……
とっさに横の棚から私の愛用の弓を取り出し教室で暴れまくる大蜘蛛に矢を放った。
矢は大蜘蛛の胴体に刺さりうめき声をあげながら倒れこんだ。
「皆!逃げず武器を持ってに立ち向かって!」
私はそう皆に伝え。次矢で大蜘蛛の頭を貫いた…………
【レベルが上がりました】
それを見た残っているクラスメイト達も廊下から入ってきたゴブリン2体に立ち向かい、花瓶を投げたり椅子で叩き潰したりして撲殺してくれた。
私達はその後すぐ廊下のドアや窓に鍵をかけて一息ついた。
「こんだけしか残ってねーのかよ……」
誰かが言った。
私も改めて教室を見渡すとそこに立っていたのは、ほんの18人……40人中18人……
他のクラスメイトは逃げたか、足下に血だらけで転がっている。
生き残った生徒もパニックになる者もいれば、吐きだす者、夢だと思いこもうとする者、落ち着きがない。
私も冷静を保っているつもりだが、内心心の奥で恐怖や悲しみが渦巻いている。
そして放送が流れた─
ジジ…ピーー
『ザザ…生徒の皆さん!すみやかに逃げろ!校内に複数の奇怪な大型動物が侵入しました!見かけても決して近づ───うわっ!この!止めろ……ガシャン……ブチュッ……ザザ……プチ』
あの生徒指導の先生が……
より恐怖心を煽られた。
皆にもどよめきがつたわる
ヤバいわね……
「皆!……皆聞いて!誰か私と一緒に放送室に行くのついてきてくれない?早く全校生徒に状況を伝えて動いてもらわないと……どんどん学校にあいつらが入ってきてしまうわ!」
私の声に教室が静まりかえり近くから聞こえる悲鳴だけが響いた
「…………」
皆、だんまりね……
さっきの放送で放送室に行きたくない気持ちはわかるけど……
ここにいるだけではいづれ追い詰められるってわからないのかしら
「わかったわ…………私一人で行く」
そう言って弓矢を手に教室を出ようとしたその時──
「俺もいくぞ!」
野球部の大石君がバットを持って言った。
そしてそれに続くように
「お、俺も!」
「俺もいくぜ!」
「青景だけに行かせるわけにはいかないしね」
「じゃあ、俺も……ここで死を待つだけなんていやだし」
バレー部の中本君、サッカー部の小山君、美術部の井上君、ラグビー部の田中君がホウキや黒板用のデカイ分度器や三角定規を盾のように持って名乗り出てくれた。
本当に頼もしく感じる……嬉しい
「あ、ありがとう!……じゃあこのメンバーで放送室へ向かいましょう!」
私達6人は教室を出て放送室へ向かった。
その道すがら隣の教室は全滅していたのに気づいた。
これは急がないと……
そう思い、素早く慎重にゴブリンを倒しつつ、大蜘蛛をさけながら放送室前にたどり着いた。
「やべぇ……緊張してきた……」
「まだ、魔物いるのかな……」
皆不安そう……
「大丈夫よ!私達なら魔物がいても対処できる!」
そんな励ましをかけてみるも私自身手の震えが残っている。
「そうだな!じゃあ開けるぞ!構えとけ!」
皆、折って尖らせたホウキを構え、私も道中で見つけた消火器を構えた。
キィ……バン!
井上君が勢いよく扉を開けた─
だが、魔物はいない。
魔物が侵入したと思われる割れた窓に、天井から糸に巻き付けられ吊るされた生徒指導の先生の死体……
「おえっ!」
えづく田中君
「ひどいわね……」
「でも、魔物がいないならさっさと要件をすませようぜ!」
大石君がそう言って放送室に入った瞬間──
「おい!上にいるぞ!!!」
そう中本君が叫んで棚の上から大石君に飛びつこうとしていた大蜘蛛をホウキで叩き落とした。
「うわぁぁ!あぶねぇー!」
大石君が叫びながら転げているうちに私は叩き落ちた大蜘蛛の目に消火剤を吹き付けると同時に中本君、小山君、井上君がホウキで突き刺さした。
そしてその大蜘蛛も教室の時同様石を残して消えた
「ふぅ……」
「やったな!」
私達は放送室のドアを閉めてなんとか一安心できた。
「皆ありがとう!さっそく放送をかけるわね!」
私はマイクのスイッチを入れ状況説明と皆が動いてくれるよう放送した
『……全校生徒に伝えます。現在、町中で魔物と思われる生物が出現しています。…………生き残っている生徒達は協力して学校内にいる魔物を退治してください。立ち向かえば倒せます!実際に倒すとと石を残して消えました!逃げてばかりでは状況が悪くなる一方です!急いで魔物の駆除と校門のバリケード作りに参加してください!』
これで皆は動いてくれるかな……
そんな心配もあったけど、意外と皆動いてくれた。
複数人で魔物を囲い倒す生徒達や材木置き場に魔物を誘いこんでそこで材木を崩して押し潰すなどの罠を使う生徒もいた。
そして上の教室からバリケード用の机を校門の方へ投げて運んでいた生徒もいた。
そのおかげで校内の魔物も駆除でき、バリケードも速やかに完成した。
でも、一安心なんてしてられない、先生方がほとんど殺されてしまった今、生徒会長である私が仕切らねば!
まずは、生徒達に交代で学校内に魔物が入らないよう見張りをするように通達。
それが終わったら、生き残っている学級委員や生徒会メンバーを召集して被害状況と侵入してた魔物の数と種類の調査をするよう指示
本当に忙しかった。
でも、そのおかげでその日のうちにステータスの事がいち早く伝わり、スキルで学校を安全地帯にすることができたので本当によかった。
そして私は次の日、救援がくる可能性が低いことを考え、布団や食料などの確保及び住民の保護を目的とした遠征を提案したり、学校の片付けなどの活動をしたりして人一倍頑張った
だけどそんな事で目を背けようとしてもどうしても頭に浮かぶ…………おばあちゃんとおじいちゃんのこと……
わかってはいる、もう生きてないだろうってことぐらい……
でも……
その日の晩、誰にも見られない生徒会室に籠って静かに泣き続け一夜を明かした。
そしてその次の日、私は彼と出会った。
以前から成績上位者にいるので名前だけは知っていた男子
そして、数日前全校集会で亡くなったと伝えられた彼
赤井涼夜君
彼は条件が揃ってたので神様によってレアスキルを授かり新しい体とともに甦った
─そんな事を教えてくれた。
そんな事を人に言ったらデメリットしかないはずなのに私を信用して教えてくれた。
本当に嬉しかった。
こんな状況でも、私の事を見てくれてた人達がいたことに……
まぁ、何はともあれ涼夜君が学校に来てからというものとても順調に事が進んだ。
涼夜君は私の気づかないことにも色々気づいてくれる
家畜の事や【小物創造】で銃を作るアイデアとか
そして、何より涼夜君がいるだけで頼もしい!
レアスキルがあるからだけじゃない、私の危険に身代わりになってくれるような優しさも素敵なの
私はつい最近出会ったばかりの涼夜君に日に日に惹かれている
でも、これが恋なのかわからない
本当の恋愛をしたことがないから……
魔物の現れたこんな世界だから吊り橋効果なだけかもしれない。
そうだとわかっていても気になってしまう。
私は中学生の頃から恋愛に憧れていた。
自分で言うのもなんだけど私は顔もスタイルもいいからよく告白はされてきた。
でも、どの男子に対しても恋愛感情のようなものが沸かなかったの。だから、そんな中途半端な気持ちで付き合うわけにもいかず今まで交際経験がない
でも、涼夜君、彼は違った
彼なら付き合ってもいいかも……なんてつい妄想してしまう
そして、涼夜君のことが気になり過ぎて一度明良君に涼夜君のことを聞いてみたことがある
それによると、涼夜君は小学生の頃から多才で何でもできる上に顔もいいからよく告白されてたらしい。
でも、付き合ったのは中学の時に一回で2カ月だけだそう。
────────
涼夜君は恋愛にあまり興味がないのかな?
それが違うとしたらもしかしたら……同性が好きなタイプだったり……だから男子率の多いカキ工へ?あっ!もしかして明良君が好きだったりして!
…………なわけないよね。さすがに失礼すぎたわ
──
結局、今はまだこれが恋なのかはわからない。
吊り橋効果なのか、家族を失った悲しみを紛らわすために抱いているのか……
そんな気持ちかもしれないのに涼夜君に恋愛感情だなんて思うのは失礼すぎる
…………でも、涼夜君に対するこの気持ちが恋というものならこ、告白してみたりなんて………
……あーもう!だからなんでそんな恥ずかしいことを考えてしまうんだろ!
あの指輪の件だって私が羨ましそうに桃ちゃんと明良君を見てたり涼夜君をチラ見してたことで、涼夜君が「着けてあげる」なんて気を使わせてしまったのに!
今思いだしても恥ずかしいー!
こんな事考えてたら今日も寝れないじゃない……
桃ちゃんと明良君のイチャイチャに感化してしまったのね!うん、あの二人のせい!
─そんなことを布団の中で思いながら今日も夜がふけていく




