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地球ダンジョン  作者: 涼夜
18/39

18、明良の復縁


俺の名前は緑川明良(みどりかわあきら)18歳。

カキ工に通う普通の男子高校生。


趣味は漫画やボウリング

部活は剣道部に所属している。

両親と一緒に小さい一軒家で暮らしていた。


何不自由ない普通の人生を送っていた。


だが、そんな俺の人生に不幸な事件がおこった。

残暑の残る9月のこと、幼稚園からの付き合いである一番の親友、赤井涼夜が俺との下校中にトラックに跳ねられてしまったのだ。

俺はあまりの出来事に頭が真っ白になった。

血を流して倒れる涼夜に駆け寄り大声で呼び掛けるも返事はない。

そしてアスファルトにだんだん広がっていく涼夜の血を見て俺は気を失ってしまった。


そしてその日の晩に目が覚めると俺は病院のベッドにいた。

俺は混乱する頭の中、「あれは悪い夢だ!」と自身に言い聞かせながらナースさんに声をかけた。

そしてナースさんの口から伝えられた涼夜の死。


今までいつも近くにあった自分の体の一部がなくなるようなどうしようもない感覚と悲しみに涙が止まらなかった。

俺は次の日、学校を休んだ。

涼夜との思い出が頭をよぎるたびに涙がこぼれる。

そして思い出す幼き頃に交わした合言葉……


《死んでも友達》


「ああ、俺と涼夜は今でも友達だ……」


涙がこぼれた。


「はは…………こんなに泣いてちゃあの世で見てる涼夜に笑われるな」


そうして涙をぬぐい次の日からはちゃんと学校に行った。


あの世で見てる涼夜に笑われないためにも残りの学校生活をしっかり楽しみ、涼夜の分まで人生を謳歌してやる!


そんな気持ちでいたのだが……どうやら不幸は連続するらしい……


昼休みになってお楽しみのお弁当を食べようとしたら、社会科の先生に「次の授業で使う資料を5階の社会科準備室から運んどいてくれ」と頼まれてしまった。


面倒だと思いつつも俺は資料を取りに行った。


社会科準備室───

5階の端にある埃っぽい部屋で、なんだか薄暗く色んな書類や物が置かれた棚が置いてある


「これだな……地図とレプリカ品……」


俺は棚から指示された品を見つけた。


ワーキャー……ワー……キャ……


というかやけに外が騒がしいな……どこのクラスだよ

この階は一年か?

少しはしゃぎすぎだろ。先生に怒られるぞ


と思っていると──


……ゆらゆら……グラ……


ウーーウーー─────


少しの揺れを感じた後、町の方からサイレンがなり響いた。


「地震か?」


ここにいたら大きい揺れがきた時に棚の下敷きになるな……急ごう


と思い棚から指示された物を取り出し、手に抱えて教室に戻ろうと社会科準備室のドアに手をかけた瞬間─


ジジ…ピーー

『ザザ…生徒の皆さん!すみやかに逃げろ!校内に複数の奇怪な大型動物が侵入しました!見かけても決して近づ───うわっ!この!止めろ……ガシャン……ブチュッ……ザザ……プチ』


普段冷静な生徒指導の先生の慌て取り乱したような声の放送が流れて途切れた。


………………


「なんなんだよ今の放送……ただ事じゃねーよな……」


俺は荷物をおろし準備室から出て廊下を覗いてみると──


「え……嘘だろ……」



奥に見える廊下に転がる血だらけの生徒達

逃げまどう生徒に襲いかかり首筋を噛み千切って回る大きな蜘蛛

響き渡る叫び声──


俺はなにがなんだかわからず立ちつくしていると準備室横の階段から4人の男子生徒が上がってきた。


「おい!準備室があいてるぜ!」

「入ろう!」

「おい!何してる!あんたもさっさと入れ!」


俺はその4人の生徒に促されるまま準備室になだれ込んだ。


ガチャン



「ふぅ……ヤバかった……」

「……健太……優輝……死んだ……」

「マジなんだよあれ……」

「……はぁ……はぁ……」


4人の男子生徒は息を落ちつかせながら呟いていた。

制服のマークと色を見るに2年の電子機械科だろう。

4人ともホウキを折って尖らしたような武器を持っていた。



「なあ……何があったんだ?さっきのデカイ蜘蛛はなんだ?」


俺は状況が掴めず4人に聞いた。


「俺らも知らねーよ。放送にあった奇怪な大型動物?それに襲われた」

「もう少し、声さげて!気づかれる」

「すいません。俺らも何がなんだか……急にゴブリンみたいなやつと蜘蛛に襲われて……クラスの皆が……」

「…………」


4人とも俺と同じで何がなんだかわからないようだ。


「そうか……」


「って、おい!外みてみろよ!」


一人が窓を見て言った。


そして俺達は窓から外を覗き込むと……


住宅街のあちらこちらから煙が上がり、叫び声やサイレンの音が聞こえ、数体のゴブリンに襲われている人の姿まで見えた。



「はは……終わった」

「町全体に現れたのかよ」


絶望的だ……


カツカツカツ……カツカツ


廊下の方から何かが通る音が聞こえた。


(皆しゃべるな!蜘蛛がきた!)


………………


蜘蛛の気配に俺達は動きを止めドアを隔てたすぐそこにいる蜘蛛が立ち去ってくれるのを待った。


─が、ダメだった。


蜘蛛はドアの上につけられた換気扇を突き破って一匹入ってきた。



「くそ!」

「おら!」


4人の生徒が尖ったホウキの棒を大蜘蛛目掛けて突き出すがそれらを軽々避けられている。



「……お、俺も何か武器になりそんなもん……」


と焦りながら辺りを見回すがここには資料棚以外にない。


「うわっ!」

「なんだ!」

「いでー!噛まれた」


そうこうしているうちに二人が糸のたばに絡め取られ一人が腕を噛まれ痛みで腕を抱えこんでいた。

だが最後の一人はホウキで大蜘蛛の胴体を突き刺して抑えていた。─のだが……


「うわっ!」

ドシン


だが、抑えていた生徒が足元に置かれた資料のレプリカ品につまずいて後ろにこけてしまった。


ヤバい!!


大蜘蛛がこけた生徒に向かって鋭い牙を剥き出しにして飛びはねた─────


「くらえ!よいしょ!」


俺は大蜘蛛が飛びはねた瞬間、大蜘蛛横の資料棚を全力で倒した。


グチュッガラガッシャーン

【レベルが上がりました】


棚は盛大に倒れ大蜘蛛は下敷きとなった。


「やったのか……?」


糸に絡め取られた生徒の糸をはがしながら言った。


そして絡め取られた生徒を解放して、俺達は棚の下を覗きこんだ。


しかしそこには大蜘蛛の死体はなく、あるのは散らばった書類と紫色の石だけだった。


「大蜘蛛の死体がない!」

「気をつけろ!まだこの部屋に潜んでるぞ!」


………………


俺達は警戒して狭いこの部屋を見渡すが蜘蛛の気配はない。


「逃げたんじゃないか……?」


そんなことを誰かが言ったその時──放送がかかった。


『ザザ……全校生徒に伝えます。現在、町中で魔物と思われる生物が出現しています』


「この声……生徒会長?」

「だな……」


『生き残っている生徒達は協力して学校内にいる魔物を退治してください。立ち向かえば倒せます!実際に倒すと紫色の石を残して消えました!逃げてばかりでは状況が悪くなる一方です!急いで魔物の駆除と校門のバリケード作りに参加してください!』


学校中に放送が響きわたった。


「…ってことはさっきの蜘蛛は無事に倒せて……この石になったのか……」

「マジわかんねぇよ」

「…それで…どうする?」

「……あんなのに立ち向かえっていったって……」


4人の生徒は不安そうな感じだ。


ここは先輩として何か言っておこう。


「俺は行くぜ!お前らも来てくれないか?町の様子を見たろ。誰かがやってくれるなんて考えてるうちにどんどん魔物が入ってくるぞ!」


俺は4人を鼓舞させるような事を言った。


すると


「俺も行く!健太と優輝……クラスの皆の(かたき)をとってやる!」


「……しょうがね……行きますか!」


「俺も行く!」


一人、また一人とのってきてくれた。


「俺も行きたいですがこの腕では足手まといになります……。先輩どうか後は頼みますね」


腕を噛まれた生徒は俺に尖ったホウキを渡しながら言った。


確かにこの傷なら残ったほうがいいだろうな。


「わかった!よし行くぞ!」


俺は尖ったホウキを受け取り、他の三人を先導して準備室を出ていった。


だが俺は出てすぐに足が止まった。


改めて凄惨な生徒達の死体が目に写ったからだ。


うぇっ!


吐き気がする。

手足が痺れる。


先輩として後輩を鼓舞したくせにみっともない。

だがこれにはさすがに……


【精神耐性スキルを獲得】

【精神耐性のレベルが上がりました】


頭に響く声とともに手足の痺れはなくなった。


「悪い。大丈夫だ、行こう」


俺達は校門にバリケードを作るため校門があるほうの窓から下を確認して机を投げ落とした。

これで運ぶ手間が省けたはずだ。


そうして俺達は校門に向かっているとさっそく魔物と交戦している生徒達を見つけ加勢に入る。


ゴブリンと言われる魔物は油断しない限り大丈夫だったが大蜘蛛は6、7人で対処してようやく一匹という感じだった。

あの機動力は侮れない。


何はともあれ魔物は排除し、バリケードもしっかり作ることができた。

その晩には【学校管理】のおかげで一安心する事ができた。

母さん父さんは無事だろうか……そんなことを思いながら眠りについた。


翌日。

不幸はまだまだ続いた。

学校に避難してき近所のおばちゃんから母さんの死が伝えられた。


涙が溢れる程の悲しみだった。

だが、メソメソなんてしてられない。

俺はその日の午後から始まった遠征で魔物を殺しまくった。

恨みを晴らすように。


だが、そんな不幸の連続の後にはちゃんと嬉しい出来事があった。


親友との再開だ。


俺は目を疑った。

ゾンビか?誰かのいたずらか?

だがそこにいたのは紛れもない赤井涼夜本人であった。

本当に嬉しかった。


後で聞いた話しなのだが、どうやら涼夜は神様に生き返られてもらったらしい。

しかも便利なスキル付で。


本当に驚きだ。


涼夜が来てからというもの学校は劇的に変わった。

食料、日用品、家電製品の大量確保、家畜の確保、銃や風呂の提案等々全て涼夜がいなければ実現できなかっただろう。


神様は不幸続きな俺に対して本当に嬉しいプレゼントをしてくれた。

神様ありがとうございます。





────────


そして現在俺は拡大した安全地帯の片付けが終わった後の夕方、俺はある決心をして会議室へ向かっていた。


中学の頃からの心残り……

中学の頃に付き合っていた彼女に謝りにいくことだ。


俺は中学2年の頃、一つ下の彼女と付き合っていた。

名前は黄瀬桃花(きせももか)

ショートヘアがよく似合う陸上部の女子だ。

俺と桃花はとても仲が良かった。周りから囃し立てられるほどに。


だが中学3年の卒業間近の時の事……俺と桃花は些細な事でケンカしてしまった。

お互い意地になってしまいそれからすれ違う事が多くなって、俺の卒業と同時に俺達の仲は自然消滅してしまった。


本当に後悔している。

あの時の事を謝りたいとずっと思っていたのだがきっかけがなかった。


だが、それから約一年後の俺が高校2年になった頃、桃花が俺と同じカキ工に入学した事を知った。


俺は本当に嬉しかった。


桃花……俺に最後にチャンスをくれるのか……


そう思い俺は知ったその日の放課後に桃花のクラスに向かった。

だがそこに桃花の姿はなかった。


もう帰ったのか?それとも部活か?


そう思い次の日の昼休み時間にまた桃花のクラスへ向かった。

だがまた桃花の姿は見当たらない。


次の日もその次の週も桃花は教室にはいなかった。


そして俺は気づいた。


避けられているんだ──と。


俺は仲直りしたいと思っていても桃花は元カレなんかと会いたくないのかもしれない。

なにが"最後にチャンスをくれた"だよ!同じ学校を選んだだけで勘違いして……


俺は自分がとても恥ずかしくなり、それから桃花の教室を訪れることをやめた……




────────────

だが今の俺は違う!

桃花にちゃんと会って謝って想いを伝える!

そう決めた!

こんな簡単に死んでしまうような世界になったんだ。

もう後悔はしたくない!



そう強く決心して会議室のドアを開けた。




会議室───


紅に染まる夕焼けの日差しが差し込む部屋の窓際で書類を整理している女子が一人。

桃花だ!


あの頃とあまり変わらない懐かしい姿の彼女。


俺は桃花の前に立ちそれを驚いた顔で見つめる桃花───


「桃花!あの時は俺が悪かった!記念日を1日間違えてた俺が悪い!許してくれ」


俺は頭を下げ誠心誠意謝った……


「……ふふっ……やっときた。遅すぎ!ずっと待ってたんだからね!許してあげる。私も悪かったわ」


桃花は笑顔で俺を許してくれた


「本当に?!許してくれるのか……」


「もちろんよ。アキくんと仲直りするつもりでカキ工来たのに全然会いに来てくれないんだもん!待ってたのに……」


「へ?俺を避けてたんじゃないのか?去年の5月頃俺が会いに行った時、放課後も昼も教室にいなかったし」


「あー、なるほどね。あの時期は放課後は部活や生徒会勧誘の件があったし昼は友達と食堂で食べてたから……すれ違いだったみたいね」


そうだったのか

別に俺を避けてたわけではなかったのか!

桃花はずっと待っていてくれてたのに俺は……勘違いして諦めてたのかよ……


「桃花!こんな俺だがもう一度俺と付き合ってくれますか」


俺は優しく笑顔で言った。


「えぇ、もちろん。ずっと大事にしてね」


そう桃花も笑顔で答え俺に寄り添った


俺もそれに答え優しく両腕で包みこんだ。



俺は桃花と復縁できた今日という日を一生忘れないだろう。



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