12、武器
魔物発生4日目──
コッケコッコー
「……ふぁ~あぁ、もう、朝か……」
鶏の鳴き声によって目を覚まし時計を見ると朝の5半を示していた。
本館4,5階にある教室は全て布団が敷かれ男子生徒の寝室となっている。
俺のいる教室を見渡すとまだ大半の生徒は寝ていた。
昨日は夜遅くまで火葬の後処理があったからな……
皆かなり疲れているのだろう。
「よう……おはよ~涼夜」
明良が起きてきて眠たそうに目をこすりながら言った。
「おはよ。なぁ、明良。この学校に鶏なんていたっけ?」
俺は朝聞こえてきた鶏の声が気になって明良に尋ねた。
「あー、昨晩の火葬の片付けの時に剣道部の後輩から聞いたんだが、遠征で廃墟になった民家で無事な鶏小屋を見つけたからその中にいた6匹の鶏を捕まえてきたらしいぞ」
「まじか。ってことは、いつか卵や鶏肉が食えるかもしれないな」
「それだけじゃないぞ!避難してきた住民の職業【農家】って人が他の住民に《学校のグランドに菜園を作ろう》って呼びかけて計画立ててるらしいぜ」
「もしそれが実現したら学校内で自給自足……」
「でも、なんか色々物が足りなくて難しいらしい」
そんな事を話しながら俺と明良は布団を畳んで顔を洗いに手洗い場へ向かった。
顔を洗っていると校内放送がかかった。
ピンポンパンポーン
『三年機械科赤井君、緑川君、至急生徒会室へ来て下さい』
生徒会長の声だ。
明良「らしいぞ、多分遠征の事だろ。行こうぜ」
「………あぁ、わかった」
俺と明良は生徒会室へ向かった。
生徒会室──
コンコンガチャッ
「「失礼しまーす」」
生徒会室へ入ると生徒会室には夏子一人がいた。
他の生徒会役員はいないのだろうか?
夏子「二人とも来たわね!昨日はお疲れ様ー。じゃあさっそく今日の───」
と夏子が続けようとしたところで俺は止めた。
「なぁ、その前にちょといいか?」
夏子「何?」
「俺、昨日《これ以上変に目立ちたくないから……》みたいなこと言ったよな。今回みたいに毎回放送で呼び出されたら目立つからやめてくれないか」
俺は別に怒ってはいない。次からはやめてほしいだけだ。
夏子「ごめん!気づかなかった。次から会計の子に呼びに言ってもらう事にするわ!それでいい?」
一応、俺達のチームは他の人たちには秘密である。
だが、夏子のことだ。その会計の子にはしっかり口止めしてくれるだろう。
「あぁ、ありがとう。……というか……他の生徒会の人はどこにいるんだ?」
夏子「……生き残ってる生徒会メンバーは会計の男子と書記の女子だけよ。そしてその子達は魔物が現れてから主に会議室で情報などの整理や対策などの仕事を先生方達としているわ」
「へぇー。……書記の子っていったらあいつだよな?良かったなー明良!」
俺は明良の肩を叩いた。
生徒会の書記は確か、明良の中学の時の元カノだ。そして明良はその子に未だに未練たらたらである。
明良「うるさいな、知ってるよ!それで、夏子はなんで皆と会議室にいないんだ?」
夏子「私はここが気に入ってるの。一応会議の時は会議室にいってるしいいの!今日の遠征について話すわよ」
何かごまかそうとしてる?…何かあるのか?
まぁ、別に気にしないが。
夏子「まずは、午前中は物資集め。そして午後から学校巡りって感じでいくけどいい?」
学校巡り?
明良「学校巡りってなんだ?」
明良も疑問に思い夏子に聞いた。
夏子「それは、ここのように他の学校も【学校管理】によって無事かの確認。もし、ステータスに気づいてなくて校長が立て籠って生き残ってた場合は情報提供って感じかな」
明良「あー、なるほど……」
「いや、ちょっと待て。巡るって行っても俺が通ってた小学校、中学校と文化祭で行ったことがある大学ぐらいしか瞬間移動できないぞ。他の学校行ったことないし」
夏子「そうね。じゃあ、周辺の学校でそこ以外の学校は他の遠征チームに頼んでみるということで」
明良「オッケ。それで物資集めはまずどこに行くんだ?」
夏子「それは──」
と夏子が言いかけたところで俺は口を挟んだ。
「それなんだが、まずはホームセンターにしてもらっていいか?」
夏子「別にいいけど、何かあるの?」
「ああ。学校に避難してきた人達が学校に菜園を作ろうとしてるらしいから、耕運機や野菜の種や苗を早く手に入れてあげたいなってだけだ」
明良「おー!いいねそれ!」
夏子「確かに名案ね。ホームセンターなら農業器具だけじゃなく、日用品や食料品も揃ってるしね!」
「じゃあ、ホームセンターに行くとして、その前に昨日学校に来る途中でコンビニから物資を回収したんだが……どこに出して置けばいい?」
俺は別に物資を独占するつもりはない。ちゃんと学校にいる250人の為に分け与える。
それに少しでも収納容量を空けておきたいしな。
夏子「そうね……実習棟の材料実験室にお願い。食料品は保存の効く物だけ出しておいてね。後で校長先生に上手く伝えとく」
こんな時に実習棟に人なんていないし、こっそり出すにはおあつらえ向きだ。機械科職員室に鍵はあるが先生達はもう亡くなっているようだし勝手にとっても大丈夫だろう。
「わかった。鍵はかけて後で渡す」
明良「まぁ、とりあえず各自朝食を済ませ準備が整い次第ここに集合な」
と、明良が言ったので時計を見てみると6時半になっていた。
体育館前での朝食配膳時間だ。
「オッケー」
夏子「了解」
ということで俺達は各自別れた。
一時間半後、7時30分──
俺は朝食と色々な準備を終え集合場所である生徒会室へ入った。
コンコンガチャッ
「お待たせー」
二人はすでに来ていた。
明良は釘つき角材を
夏子は矢のたくさん入った矢筒を肩にかけ弓を持っており、準備万端といった感じだ。
明良「遅いぞー涼夜!」
夏子「物資出すのそんなに大変だった?」
「悪い、色々作っていて遅れた」
明良「作っていた?」
「ああ、これを作っていた」
そう言って俺はある物を一つ手のひらに収納から出現させた。
明良「なんだこれ?」
夏子「なるほど。矢じりね!」
夏子はすぐに気づいた。
さすが弓道部。
「正解。弓道部の矢って先端に何もついてなかっただろ?この反しのついた鋭い矢じりをこうやって──」
俺は夏子の持っている矢を一本取って矢の先端に矢じりを【溶接】した。
明良「すげぇ……」
夏子「凄い、これなら刺さればかなり致命傷になるわね……」
「一応、機械科棟にあった廃材から50個作ってある」
俺は収納から残りの49個を出して夏子の持っている矢筒に入っている矢に次々と取り付けていった。
夏子「ありがとう!」
夏子が感謝を述べている横で明良がこちらをじっと見てくる。
明良「俺にも何かないのー!」
うん、そう言ってくると思った。
「ああ、あるぞ!これだ!」
俺は収納からある物を取り出した。
「これは……刀……か?」
俺が出したのは自作の歪な刀だ。
「ああ、俺がさっき作った刀だ。収納に入れてた日本包丁6本の柄を外して【溶接】で重ねてくっ付け、繋ぎ目の凹凸を【加工】で滑らかに削り最後に柄代わりにテニスラケットのグリップ部分をぶっ刺して完成!鞘は建築科棟にあった木材を【加工】で削って作った。凄いだろ」
明良「確かに凄いな。本当に涼夜は多才だな。歪ではあるが釘つき角材より断然いい」
夏子「確かにその考え方は本当に素晴らしいわ!ねぇ。その作り方【加工】【溶接】スキルを持ってる生徒に教えていい?」
夏子が聞いてきた。
確かにバットや角材で戦ってるような現状を考えるにこの歪な刀でもリーチのある刃物は十分魅力的だろう。
「もちろんいいぞ。断る理由もないし」
夏子「ありがとう」
「ま、そっちは冗談のつもりだったんだが……一応こっちが本命」
そう言って俺は異世界で2万ウェンで買った刀を取り出して明良に渡した。
明良「まじで!本物の日本刀じゃん!なんでこんなの持ってんだ?」
異世界で買いましたー。
なんて言えるわけもない。
「住民が死んで廃墟となった古民家に一本だけ飾ってあったんだ~………」
それっぽいことを言っておく。
明良「へぇ。じゃあ、ありがたく使わせてもらおう。この2本の刀で二刀流スタイルで戦ってみる!」
あ、俺が作ったやつも使ってくれるんだ……
夏子「ところで、明良君に刀を上げて涼夜君はどうやって戦うつもりなの?」
「おれ?俺は範囲に入った魔物の頭上に【収納】から物を落とす質量攻撃と、【火魔法】による火剣、魔物の背後に【瞬間移動】してこのサバイバルナイフで攻撃するスタイルとか色々」
俺は異世界で買った5000ウェンの短剣を出して説明した。
夏子「…………へぇ」
明良「……スキル多くて羨ましい……」
「そ、そんなことよりさっさっと行くぞ!肩に手をおいてくれ!」
俺との格差を感じてしまってる二人の空気に耐えられなかった。
明良「ああ!」
夏子「いきましょう!」
二人が手を置き、俺達は瞬間移動し生徒会室から消えた。




