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間違いだらけの異世界生活  作者: ニャンだ!
第四章 炎の物語
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第10話 噂のお伽話

「ソフィアさんは、難民を庇ったそうね」

 レティーシアが口を開いた。


 俺は、少し、それにムッとする。

 彼女から話しかけてきたのは、あの演説以来、久しぶりだった。


 でも……、彼女は他人行儀の上……なんか違う。

 まだ、エドワードの方が、彼らしくてマシだ。


「違うわ、私がそうしたっかった、ただそれだけよ」

 言葉が意地悪になってしまう。


 彼女の背後には絵画のような世界地図、俺との間には大きなテーブルとその椅子に腰掛ける人々がいる。


 とても、とても彼女との距離を感じてしまう……。


 すぅーという可愛らしい口が大きく息を吸い込む音、

「ダメよ……一人で王都に行くなんて許さない」

 レティーシアは、いきなりテーブルを叩き、身を乗り出した。


 すかさず、チビを抱き寄せ一人でないとアピール。

 ヘヘーンだ! ……って?


「え?」

 まだ言ってないと思いますけど?


「どうせ、あなたの話って、そうなんでしょっ」

 彼女は、腕を組み、ツンとして腰を下ろした。

 プンプンとオーラを出し、プクーと横を向く。


「それはダメよ! それじゃ帝国の思うツボじゃない!」

 イザベルが興奮しだし、髭のカラムが苦い表情でたしなめる。


 おい、北部、てめえら、南部の尻にもう敷かれてるじゃねぇか!

 やっぱり、その髭をむしろうかと、腕をまくし上げるも、


 伯爵がえっらそうに、

「そうじゃ、身をわきまえろ、小娘」

 と言いやがる。

 泣かすぞ、こらっ!


 ドンと足を床に叩きつけ、抗議したのは、ジークフリードだった。

「伯爵の意見は聞いてない。でも、姫様には賛成だ」

 彼の言う姫様は、レティーシアのこと、最近のジークフリードも会議、会議、会議で、俺をかまってくれない馬鹿野郎だ、死んじゃえ、バカ。


「帝国は、私に喧嘩を売ったのよ、だったら、お礼をするのが筋じゃない」

 みんながバンバン、テーブルや床を叩くので、俺も見習い、一歩、二歩とテーブルに近づき、口を尖らせ身を突き出してドンと叩く。


 そこには、王国の中央部、つまり王都周辺の地図が広げられていた。そこに置かれた駒が、敵味方関係なく、一斉に跳ね倒れた。


「誰にも、文句は言わせない、だって、これは、私が買った喧嘩なんだからねっ!」


「そんな喧嘩は、私が許さない」

 俺の肩に静かに手を置いてきたのはエドワードだった。


「あらあら、ところで、エルフのあなたは、【邪悪な姫君】のお伽話を知ってるの?」

 魔女さまーー、が……って、いい加減、こいつ、誰?


 肩に置かれたエドワードの手に添えて、それを引き離しながら、彼に「あれ、誰?」と視線を送るが、


「あなた、鈍感ね」

 思わず、本音が漏れる程、こいつは察しが悪くて使えない。


 すぐ目をそらす、バーカ、バーカ、バーカ!


 魔女さまーー、が「ふふふ」と笑う。


 だから、誰なんだよ!


「では、私の話を聞いていただけるかしら、ソフィアさん……、神話の世界で詠われるエルフの最後の姫君と同じ名前と容姿を持つあなたには、それを嫌とは言わせない」

 彼女はニッコリと微笑み、どこからか杖を取り出した。


 杖の先が淡く光る。

 部屋の明かりが暗くなった。


 皆は、彼女の杖に注目し、淡い光が心を落ち着かせる。


「お伽話に雰囲気はつきものよ」

 そう言うと、彼女はゆっくりと語りだした。

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