社長=南の国王 ややこしい
社長が通ると皆一旦立ち止まって挨拶をしていく中、オイラ達は二度見の視線にさらされつつ社長室へと案内された。
視線から逃げるように部屋の中に入ると、そこには社長から呼ばれたらしいスーツ姿の女性が一人、立って待っていた。
社長はその女性の隣に立つと、改めてオイラ達に挨拶をしてくれたよ。
社長「改めまして、少し茶色に染まった長い髪と大きい瞳が印象的、柔らかい声質のなかにも凛々しさと才覚を感じさせる私が社長です。」
女性「初めまして、束ねた黒髪に淡々とした口調、眼鏡の奥に見える目付きはどこか陰があり、その陰が逆に色気を醸し出している私が社長の妹でもある副社長です。」
オイラ「本来ならオイラが伝えなきゃいけない描写を交えての自己紹介ありがとー。」
武藤さん「自分で言わせて申し訳ねぇです。」
副社長「なんのこれしき。」
社長「本当の事ですし。」
オイラ「自意識!」
社長「まぁそんな私達の美しさは置いといて、才色兼備な私から早速ですが話があります。」
オイラ「全然置かれてないけどなんでしょう?」
社長「あなた方は今日から私の部下です。」
オイラ「えー!?」
武藤さん「どういう事だ!?」
社長「実は、あなた方の国である真ん中の王国には、数年前から莫大なお金をお貸ししているのですが、王様からはいまだに一円たりとも返してもらっておりません。」
武藤さん「まあ財政無茶苦茶だからな。」
副社長「そして先日、催促の電話を入れたところ『返せるお金はない、その代わりに主人公と武藤を自由に使ってくれて構わない。』という話になったのだ。」
武藤さん「あの王様俺達を売りやがった!」
オイラ「最低だよ!」
社長「そういう訳ですので、給与から借金を差し引いていく形で、あなた方は一時的に我々の元で働いてもらう事になりました。」
オイラ「ひえー。」
社長「そして初仕事として、まずは真ん中の王国へと行ってほしいのです。」
オイラ「え?」
副社長「先ほど入ったばかりの情報によると、あのバカ王様は、借りた金を国の立て直しではなく個人的に使い込んでいるらしいのだ。」
武藤さん「とんでもねー!」
オイラ「どこまでも最低だよ!」
社長「ですので、まあなんと言いますか、才色兼備な私があまり野蛮な事を言うのは躊躇われますが」
オイラ「なんでしょう?」
社長「主人公は税関無視して自由に国を行き来できますよね。」
武藤さん「まあな。」
社長「西の王国では転送装置も使わせてもらえますね。」
オイラ「まあ、オブライ円支払えばね。」
社長「しかも、主人公という大義名分のもとに、悪人を自由に成敗し放題ですわね。」
武藤さん「若干語弊があるが、まあそうだな。」
社長「行ってらっしゃい。」
オイラ「行ってらっしゃい!?」
武藤さん「それはつまり」
副社長「転送使ってとっとと王様成敗してこいということだ。」
オイラ「バイオレンス!」
社長「成敗といっても、多少こらしめて王様としての地位から引きずり下ろしていただければ良いのです。」
副社長「その後は、同行した私が一時的に政務を取り仕切り国を立て直す。」
社長「ある程度借金の回収の目処がついた時点で、真ん中の王国内から後任を選びます。」
オイラ「なんという回収の仕方!」
社長「お金を回収したいというのもありますが、なによりあんな人物が王様だと、国民がかわいそうでしょ。」
武藤さん「たしかに、仕えてる人間も大変だぞ。」
オイラ「そっか、これはある意味世直しだね。」
社長「才色兼備な私は、民を慈しむ美しい心も持っているのです。」
オイラ「相変わらず無理がある展開だけど、やることは了解したよ。」
武藤さん「話もちょっとごちゃごちゃしてたが、まぁいつものことだ。」
社長「ではやってくれますね。」
オイラ「オッケー。」
武藤さん「よーし世直しだ!」
オイラ「下剋上だ!」
武藤さん「男のロマンだ!」
副社長「そうそう、そうこうしている間にあなた方が追っていた元主人公の男がやってきた場合は、部下に捕まえさせますのでご安心を。」
オイラ「そういえばそんな経緯だったね。」
武藤さん「すっかり忘れるところだったな。」
オイラ「思い出したように急に最後付け加えられたけど、とにかくありがとー。」
副社長「なんのこれしき。」
南の王国から真ん中の王国へ直接転送は出来ないらしいので、オイラ達は一旦西の王国まで戻してもらうために、携帯電話を使って博士に居場所を伝えた。




