南の王国のお城はビルだった
武藤さん「着いたぞ、ここがこの国の城だ。」
オイラ「城というか、完全にビルディングだね。」
見上げると首が痛くなるほど高いビルの入り口では、スーツ姿の大人達が忙しなく出入りしていた。
オイラ「ねぇ、ここファンタジー感まったく無いんだけど。」
武藤さん「だな。サラリーマンしかいないな。」
オイラ「頭身もオイラ達とは違うよね。」
武藤さん「みんな8頭身だな。漫画だったら絵のタッチも全然違うだろうぜ。」
オイラ「オイラ達って、完全に場違いじゃない?」
武藤さん「お前3頭身でマント姿だもんな。」
オイラ「武藤さんなんて人外だよ。」
武藤さん「頭身以前の問題な生き物だぜ。」
オイラ「そういえばこの国ですれ違った人達ってみんな8頭身だったような。」
武藤さん「だな。数年前にこの国に来たときはこんな感じじゃなかったんだがな。前話の内容が強引だった弊害かもな。」
オイラ「きっと世界観に歪みが生じたんだよ。」
武藤さん「まあその辺りは深くつっこむな。」
オイラ「それよりさー、ホントにこの中に入るの?」
武藤さん「一応社長に挨拶はしとかねーと。」
オイラ「この空間にオイラ達って絶対浮くよ。恥ずかしいって。」
武藤さん「たしかにな。」
オイラ「それに社長に面会するにも、アポイントメントがないから駄目とか言われそうだよ。」
武藤さん「やめよーか。」
オイラ「やめよーよ。」
武藤さん「この感じだと社長も忙しいだろうからな。挨拶は後日ちゃんとアポを取ってからだな。」
オイラ「だね。正直これ以上ここには居たたまれないよ。」
オイラ達はそそくさとビルが建っている敷地の外に出た。するとすぐに巡回中のお巡りさんに声を掛けられたよ。
お巡りさん「こんにちは。ちょっとお話いいですか。」
オイラ「なんでしょう。」
お巡りさん「いや、あなた達頭身が違うからさ。」
オイラ「やっぱり浮いてるよね。」
お巡りさん「そういう問題じゃなくてさ、ちゃんと税関で頭身合わせてもらわないと。」
オイラ「え?」
お巡りさん「入国するときに頭身を合わせる手続きがあったと思うんだけどねぇ。」
オイラ「そういうシステムなの!?」
お巡りさん「それに連れているのはモンスターでしょ。」
武藤さん「武藤といいます。」
お巡りさん「モンスターを連れ込むのも税関で許可がいるんだけどね、君許可証持ってる?」
オイラ「えー、そんなのないよ。」
武藤さん「俺達転送で来たからな。」
お巡りさん「やっぱりな、不法入国だよ。ちょっと署まで来てもらおうか。」
オイラ「えー!」
武藤さん「いや、こいつ主人公なんだよ。主人公とその一行は何処でも自由に行き来できるはずだ。」
お巡りさん「確かにそうだけどね、それじゃあ証明書見せてもらえるかな。」
武藤さん「おい、証明書を見せてやれ。」
オイラ「そんなのないよー!」
武藤さん「なに!?旅に出る前に城でもらったはずだろ!」
オイラ「もらってないよ…。」
武藤さん「さては王様、発行し忘れたな!」
オイラ「えー!」
武藤さん「俺が債務超過の事務処理してなかったらちゃんと発行しといたのに、王様なんで他の奴に指示しなかったんだよ!」
オイラ「人に命令するのが好きなクセに、肝心な命令を忘れるなんて、ホントダメな王様だよ。」
お巡りさん「証明書ないの?だったら署まで来てもらうしかないね。」
武藤さん「ちょっと待ってくれ、王様に電話させてくれたら証明できるから。」
お巡りさん「駄目だ、そうやって仲間に連絡するつもりだろ!」
オイラ「なんか大きな裏組織の一員と思われてる!」
武藤さん「クソ、俺のサングラスが似合い過ぎてたか!」
オイラ「いや、それは関係ないと思うけど、もしかしたら関係あるかも!いやもう分かんない!」
お巡りさん「とにかく来るんだ!」
武藤さん「いや待ってくれ、サングラス取るから!」
オイラ「武藤さんその行動は無意味だよ!」
お巡りさん「おとなしく言うこと聞かないと公務執行妨害でだな」
「何事ですか?」
突如、女性の凛とした声が響いた。
お巡りさん「これは社長、お疲れ様です。」
声の主はどうやら社長みたい。社長は、いつの間にか近くに止まっていた高級車の後部座席から降りると、オイラ達の方に近づいてきた。
社長「何か問題があったのですか?」
お巡りさん「不法入国した者を発見したので、これから署に連行するところでした。」
社長「この者は正真正銘の主人公ですよ。先ほど西の王国の国王から連絡がありましたから。」
お巡りさん「そうでありましたか、これは失礼致しました。」
オイラ「助かったー。」
武藤さん「西の王様気がまわるぜ。」
オイラ「オイラ達の国の王様とは大違い。」
社長「申し訳ありませんでした、情報が配下に行き届いておりませんで。なにぶん私も忙しい身でして、たった今出張から戻ってきたのです。」
オイラ「よかったー。ちょうどオイラ達挨拶にきたんだよ。」
社長「実は私の方からも話があるのです。これから社長室まで来てもらえますか。」
オイラ「はーい。」
武藤さん「社長に付いて入れば恥ずかしくないぜ。」
なんとか前科がつかずにすんだオイラ達は、社長に連れられてビルの中に入った。




