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主人公物語  作者: でくすぎ こぼく
7/11

世界観ってなんだろーね

オイラ「わお!ホントに一瞬で着いちゃったね。」

武藤さん「テクノロジーに感謝だな。」

オイラ「ここが首都?」

武藤さん「そうだ。海岸沿いに出来たこの街は、リゾート地として栄えてる。」


 武藤さんの言う通り、太陽の光が降り注ぐ街中は、水着を着た観光客で賑わっていた。


オイラ「なんだか常夏の島って感じだね。」

武藤さん「まさにそうだな。南の王国は小さな島国で国土は狭いが、観光で潤った圧倒的な経済力が自慢の国だ。」

オイラ「おー、教育係っぽい解説。」

武藤さん「正月は芸能人が沢山来るぞ。」

オイラ「まさにだね。」

武藤さん「ホントは休日に来たかったんだが、今はやることやらねぇとな。」

オイラ「だね、んじゃシュウジンさんを捕まえに行こー。」

武藤さん「いや、やつが来るまでまだ時間があるだろ。まずは国王に挨拶をしに行くぞ。」

オイラ「律儀だなぁ。ここの国王ってどんな人なの?」

武藤さん「十年前に、18歳の若さで後を継いでから、衣類ブランドの立ち上げ、健康食品のインターネット販売、カジノ運営と、次々と新しい政策で国を潤わせたやり手の女性国王だ。この国じゃ社長って呼ばれてるな。」

オイラ「社長?」

武藤さん「そりゃお前、こんな開放的な国で『女王様』だとちょっと違った意味が乗っかるだろーが。」

オイラ「そっか。この物語は健全な物語だもんね。」

武藤さん「そういうことだ。」

オイラ「でもそれなら首相とか大統領とかでもよかったんじゃない?呼び方。」


武藤さん「主人公、一番最初の王様との会話を思い出せ。」

オイラ「え?」

武藤さん「王様言ってただろ、国の債務超過がどうとか。」

オイラ「うん、面白い事言ってやったみたいな感じで言ってた。」

武藤さん「だが考えてみろ、日本だって数百兆という債務超過額を抱えているんだ。」

オイラ「そっか、王様の発言ってボケになってなかったんだね。オイラも『この国の行く末が心配』ってつっこんじゃったよ、恥ずかしい!」

武藤さん「だからこの世界では、王国というのは民間企業のようなものなんだよという概念を植え付ける為に、南の王国の国王は社長になったんだよ。」

オイラ「強引すぎない!?さっき狭い国土がどうのこうの言っておいて。」

武藤さん「ここはギャグでファンタジーの世界だ。」

オイラ「にしても力技が過ぎない?」

武藤さん「これが世界観だ。」

オイラ「オッケー、受け入れたよ。」

武藤さん「お前の順応力もたいしたもんだぜ。」


オイラ「んじゃ早速その社長さんに会いにお城まで武藤さんサングラス掛けてる!?」

武藤さん「また細かいとこつっこんできたな。そりゃ南国に来たらサングラス掛けるだろ。」

オイラ「いつの間に。」

武藤さん「ここに来てからずっと掛けてただろーがよ。」

オイラ「世界観の話に気をとられて気が付かなかったよ。買ってきたの?」

武藤さん「買いに行く暇なんて無かっただろ。懐に入れてたやつを出したんだよ。」

オイラ「ふ、懐?いやその前にどーやって掛けてるのそれ?」

武藤さん「また野暮な事言ってんなお前。」

オイラ「『想像にお任せだぜ!』?」

武藤さん「違う、こういう時はだな」

オイラ「うん」


武藤さん「委ねるんだよ、想像に。」


オイラ「結局言ってる事同じじゃん。」

武藤さん「分かってねぇな。日本語の僅かなニュアンスの違いを楽しめよ。」

オイラ「スライムに日本語の講釈されちゃった。」

武藤さん「サングラス似合ってる?」

オイラ「う、うーん、うん。」

武藤さん「ちょっとワルな感じが出てカッコいいだろ。ブラック武藤ってやつだな。」

オイラ「甘くないコーヒーみたいだね。」

武藤さん「大人の渋みがたまんないってね。さて、城へむかうぞ。」

オイラ「はーい。」


 オイラは、浜辺で楽しそうにはしゃいでいる観光客と、あからさまに気取って歩いている武藤さんを横目にお城へと向かった。

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